ノルウェー政府が野生オオカミ56頭中42頭を射殺へ 新たな狩猟許可を出す
ノルウェーでは野生オオカミをどれほど射殺するかで世論は二分している。
ノルウェー政府はノルウェーで生息するオオカミ56頭中50頭を射殺することを決定していた。狩猟期間は10月1日に始まっており、すでに5頭が射殺されている。
世界自然保護基金WWFノルウェーは、オスロ地方裁判所に政府を訴える。11月21日、最終的な判決がでるまで、狩猟を一時中断するように裁判所は言い渡した。
オオカミ減少を望む政党、ヒツジ農家などは大きく反発。
1日、ヴィーダル・ヘルゲセン気候・環境大臣(保守党)は、裁判所に指摘されていた「狩猟許可が必要だとする理由」の文章を一部変えた。射殺頭数をわずかに減らし、新たな狩猟許可を出したことを発表。
ノルウェーでは狩猟対象は「オオカミゾーン」の「内」にいるか、「外」にいるかが重要なポイントとなる。ゾーンの中にいれば、オオカミが優先され、ゾーンの外では、オオカミよりも人間や家畜活動が優先される。
環境大臣はオオカミゾーンの外で26頭、ゾーンの内で16頭を射殺する許可を出した。
裁判所側がなにかしら反応してくるかもしれないという考慮から、政府は狩猟再開は12月21日からとしている。
農家に支持されている野党・中道左派「中央党」は、当初の予定通り政府は「もっと」射殺するべきとする立場。環境大臣の判断は、甘いと批判している。
中央党のボルク国会議員は、「オオカミを怖がっている人がいるだけで、射殺の理由としては十分。スウェーデンにもオオカミがいるのだから、ノルウェーのオオカミが減っても問題はない。オオカミは絶滅の危機に瀕してはいない。ノルウェーには多すぎる」と国営放送局NRKの討論番組で話す。
WWFノルウェーや環境団体らは、政府の対応に落胆。WWFは弁護士と相談して、今後の対応を決めるとしている。
データ
ノルウェー環境管理局によると、野生動物(クマ、クズリ、オオヤマネコ、イヌワシ、オオカミ)に殺されたとみられるヒツジは今年で1546頭。昨年と比較して100頭ほど増加。オオカミによる被害はその三分の一を占める。
ノルウェーのヒツジの数は2012年に220万頭だったが、2016年には245万頭に増加。
ノルウェー国内で生息している野生オオカミは54~56頭、加えてノルウェーと隣国スウェーデンを行き来しているのは51~56頭とされている。
Text: Asaki Abumi