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ノルウェー裁判所が野生オオカミ射殺に一時停止命令 WWFが国を提訴

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
ノルウェーの世論を二分するオオカミとヒツジの不都合な相性(写真:アフロ)

ノルウェーで生息する野生オオカミの9割、56頭中50頭が射殺されそうな事態を受けて、世界自然保護基金WWFノルウェーは国を提訴。

2つの裁判が同時進行となっており、一つはオオカミを射殺する国の方針自体に対する訴え(裁判の開始日はまだ決まっていない)。もう一つは、10月からの狩猟シーズンを上記の裁判が終わるまで一時停止させる訴えだ。

狩猟シーズン中にすでに5頭は射殺されている。

WWFが野生オオカミ射殺で国を訴えるのは3度目。2001年と2006年にはWWFと自然保護団体は敗訴している。

国営放送局NRKによると、狩猟団体関係者やオオカミが生息するエリア出身の国会議員らは、裁判所の判断に落胆している。

ノルウェー環境管理局によると、野生動物(クマ、クズリ、オオヤマネコ、イヌワシ、オオカミ)に殺されたとみられるヒツジは今年で1546頭。昨年と比較して100頭ほど増加。オオカミによる被害はその三分の一を占める。

ノルウェーのヒツジの数は2012年に220万頭だったが、2016年には245万頭に増加。

オオカミ駆除を特に希望しているのは、地方に住んでいる農家など。

ノルウェーには、農家などの地方出身者に好まれて購読されている全国紙ナショーネン紙がある。14日、他紙ではみられないような声、ボルスゴール記者の独特な意見が掲載されていた。

WWFが裁判所で口にしないことがある。オオカミは絶滅の危機にはいない。スカンジナヴィア諸島(ノルウェー、デンマーク、スウェーデン)には439頭ほどのオオカミがいる。ノルウェーとスウェーデンだけで77頭ほど駆除しても、問題はない。

出典:Nationen

WWFは、ノルウェー政府は憲法や自然保護法に違反しているとして、野生オオカミの大規模な駆除をやめるように訴えている。

本格的な裁判結果がでるまでに、オスロ地方裁判所が狩猟の一時停止命令を出したことに、WWFの環境政治リーダーであるロメルデ氏はこのようにコメント。「裁判官は重要な決断を下した。政府を相手に裁判をすることは簡単ではないが、他に道はない」。

狩猟停止命令は一時的なもので、本格的な裁判はこれから始まる。

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Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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