射殺対象の野生オオカミが人気クリスマス牛乳パックで吠える!ノルウェーで賛否両論
ノルウェー大手乳製品会社TINE(ティーネ)に一部の消費者から苦情が殺到している。
なぜか?
ヒントは、パッケージに描かれた「野生オオカミ」のイラストだ。
ノルウェーでは、「野生オオカミ」は世論を二分させる影響力をもつ。
60頭もいない野生オオカミをどれほど射殺するかで、国会・ヒツジ農家ら・動物愛護団体などが対立中。WWFはノルウェー政府らを相手に訴訟を起こした。
詳細
牛乳を売っているのは農家。農家といえば野生オオカミの増加を望んでいない人々の代表だ。オオカミが生息するエリアに住む人々の心境も複雑。
人気の牛乳パックデザインに、よりにもよって世論を二分するオオカミ
牛乳は、ノルウェーの家庭の冷蔵庫には必ずといっていいほど入っているものだ。パックのデザインは、幅広い層の人々の心をほんわかとさせるようなデザインが好まれる。
TINEの人気の牛乳パックのクリスマスパッケージは4種類。
それぞれのパッケージには、ノルウェー版サンタクロース「ニッセ」、妖怪トロル、そり、クリスマスツリーなど、「これぞノルウェー!」、「これぞクリスマス!」というシンボルが数多く描かれている。
高脂肪乳の赤色のパッケージにはノルウェーの野生動物であるオオカミ、オオヤマネコ、ワシ、シカ、ネズミが描かれている。
このオオカミの絵が、オオカミ嫌いの人々をカチンと苛立たせたようだ。
「なんて素敵なデザイン!」、「がっかりだ」
「企業のSNSは炎上し、がっかりだという声が殺到」と現地メディアは報道。
筆者が確認してみたところ、TINEのFacebookの牛乳の投稿には5000人以上が「いいね!」、1700以上のコメントがついていた。
「なんて素敵なデザイン!」と褒めているコメントのほうが圧倒的に多く、怒っている人のコメントを探し出すのが大変だった。
否定的な意見が多めなのは、報道各社のSNSで投稿された記事へのコメントだった。
「オオカミ。吐き気がする。農家のことを何も考えていない」、「ボイコットだ!他ブランドの牛乳を買おう」。
一方で、「オオカミはずっと昔からいたんだから、そこまで怒らなくてもいいんじゃない?」、「ばかばかしい。これは本物のオオカミじゃなくて、絵じゃん」。
地元紙VGによるとノルウェー農家団体のリーダーであるフルベルグ氏は「なぜこんなことをするのだ。オオカミや野生動物がいる地域に住んでいる者に、こんな仕打ちをすることはない」と憤慨。
農家に最も支持されている中道左派「中央党」のボルク国会議員は、「オオカミはクリスマスに関係ない。むしろ、オオカミはおいしいクリスマス料理になったであろう動物を殺す」。
他にも国営放送局NRKやアフテンポステン紙などでも話題となる。
ノルウェーには農家に好まれて読まれている全国紙ナショーネンがある。ここまで騒ぎになっているのなら、明日の朝刊で記事になっていそうだなと筆者は予想した。案の定、今朝のポストに入っていた新聞では、牛乳パックについて1ページも割いていた。
TINE社は現地メディアに対して、「政治的な意図はなく、製品を回収することはない」としている。
野生オオカミは、これほどまでにノルウェー人を感情的にさせる動物なのだ。
Text: Asaki Abumi