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学生売り手市場に企業苦戦。「高卒」採用に乗り出す企業も続出

酒井一樹就活SWOT代表
(ペイレスイメージズ/アフロ)

「今は学生の売り手市場」だと言われるようになって久しい。

大学生の新卒採用に企業が苦戦する中、「高卒採用」に望みを託す企業が増えているようだ。

【なぜ今、高卒者採用なのか】

「新卒採用に苦戦しているので、第二新卒採用も行う」という話は今までもよくある話だった。

実際に今でも第二新卒の採用市場は活況だ。

それに対して高卒の採用については、「その発想はなかった」という企業も多いのではないだろうか。

「大卒者が採用できないなら高卒で」という話が出てくる企業は一部の業種や職種に限られており、選択肢としても考えていなかった企業も多かった。

大卒者に比べて離職率が高いというのも二の足を踏む要因となっていた。

しかし第二新卒市場で動く人材は新卒採用と比較すると非常に少なく、逆に企業側で第二新卒採用に参入する企業は続々と増えている。

今となっては第二新卒の採用も非常に困難になってきており、いよいよ代替手段が強く求められる状況になってきた。

そんな中で台頭してきているのが「高卒採用」や「外国人採用」なのだが、外国人採用については活用の仕方がわからないと二の足を踏む企業も多い。

【高卒採用のメリットとは】

高卒者の採用は大卒者に比べて競争は圧倒的に少なく、しっかりアプローチすれば採用確度は高いという事だ。

大卒者は実質の内定決定から入社まで半年〜一年弱の期間があり、内定を出しても入社までに辞退される確率も高い。これは人事担当者にとっては本当に頭を抱えたくなる問題点である。

それに対して高卒採用は、後述する「1人1社制度」により内定者を他社に取られるリスクは低く、内定を出した学生は原則入社となる。

また、採用コストについても大卒者市場は高騰しており、ただナビサイトに求人を載せてあぐらを書いているだけでは候補者は集められない。

説明会に学生を動員するための費用も高くなっており、「スカウト型サイト」で能動的に学生を捕まえようとする企業も増えている。能動的に動かなければ、学生の選択肢にすら入れてもらえないのだ。

広告費用も、対応する人事担当者のマンパワーも、いずれも「割に合わない」レベルになってきており、「高卒採用であれば相対的に費用やマンパワーを抑えて活動する事ができるのでは?」と考える経営者もいる。

しかし高卒採用には独自の特殊な決まりもあり、一筋縄ではいかない。

【高卒採用のために超えるべきハードルとは】

高卒採用を行うためには超えるべきハードルがいくつかある。

特にこれまで高卒採用が大卒者採用ほど浸透していなかった理由として「高校による過干渉」があるのだという。

大卒者の新卒採用と同じ感覚でやってみようとした結果、違いに戸惑う企業も多い。

大卒者採用と比べてもルールの縛りが厳しく、経験のない人事担当者が高卒採用をしようとするとあまりの違いに面食らってしまうほどだ。

まず高卒採用においては応募解禁日の9月から一定の期日までは1人1社のみ受験するという、通称「一人一社制」ルールが存在する。

地域によって差はあるが、例を挙げると「9月は1社だけ受験する。それに落ちたら10月は2社同時に受験して良い」というような取り決めになっていたりする。

学業を優先するためという目的もあり、受けられる企業の数も、その企業の選考に参加する回数も大学生と比べて大幅に少なく制限されているのだ。

また内定した企業には原則として必ず入社することになっている。

大卒者の新卒採用では「オワハラ」などの問題が存在するが、逆に高卒採用では「内定をもらったら就活を終えること」が前提になっているという事だ。

「オワハラ」の実態とは?他社の選考や内定辞退を強要する企業と就活生の駆け引き

内定を出した後で他社に取られるリスクは低いため、その点では企業にとって安心だ。

しかし知識がない中で1社だけ選び、内定が出た後に熟考するという事もできないので大卒者と比べても離職率は高い。

最終的な内定は企業側が判断するが、「推薦」は高校側で「学校の成績」などを元に決められる。

企業側が成績を基準とした選考を望んでいる場合はそれでも構わないが、必ずしも学校の成績が企業で求められる資質と一致しているとは限らない。

この点もミスマッチを生みやすい原因だと言えるだろう。

選考に関しても、地域によって差はあるが面接で聞いて良い内容について

大卒者採用よりも多くの制限があったり、選考についても「1日で全て終わらせる」事を求められる事が多い。

大卒者採用ではインターンの実施なども当たり前になりつつあるが、「もっと学生と深く接してから内定を出したい」という企業にとって高卒採用特有のルールは悩ましい問題となっている。

【ガチガチの慣習に批判も】

高卒採用特有のルールについては、「職業選択の自由を奪っているのでは」「ミスマッチが起きている」と批判も多い。

これまでこの領域に深く関わっているのが学校とハローワークくらいであり、注目される事も大卒者の新卒採用に比べると少なかった。

しかし最近になって民間の採用支援業者も参入し始め、企業側も「採用の選択肢」として検討し始めている。

「学校」という枠の中で閉ざされていた高卒採用市場も、これから変化が起きていくのかもしれない。これからの変化に注目したい。

就活SWOT代表

慶應義塾大学在学中、世界初の就活SNSの代表に就任。国内最大の就活SNSへと成長させた後に大学を卒業し、エグゼクティブサーチを行う人材ベンチャーに入社。役員・事業責任者などの幹部人材の採用支援に携わる。2009年にエイリストを設立し「自分の頭で考え、行動する人材を増やす事」を命題として就職情報サイト「就活SWOT」を開設。

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