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「オワハラ」の実態とは?他社の選考や内定辞退を強要する企業と就活生の駆け引き

酒井一樹就活SWOT代表
(写真:アフロ)

就活解禁から2ヶ月半が経ち、内定した会社をキープしながら大手の選考を進もうと考えている学生も増えてきたようだ。

昨年よりも内定承諾辞退者が増える可能性を視野に入れ、採用計画のテコ入れをしようと動いている企業も多い。

企業側もピリピリしているこの時期、やはり問題となってくるのが「オワハラ」問題だ。

【最終面接で、他社辞退を条件に内定を提示される?】

「オワハラ」とは、「就活終われハラスメント」の略だとされている。

「最終面接通過ですが、内定を出すには他社の選考や内定を全て辞退することが条件となります」

選考の最終段階で、このような条件を就活生に提示する企業の話を毎年耳にする。大企業でも中小企業でも、規模に関係なくそのような対応をする企業はある。

このような場面で「すぐに承諾はできないので検討させてください」と返答したところ「それでは今日は内定を出すことができません」と言われた学生もいる。

ここまで露骨に明言されるケースばかりではなく、内定が出たら承諾をすると意思決定するまで内定を出さない企業もある。

あるいは、第一志望ではないと回答することで不合格になるリスクもあるため「第一志望である」「内定が出たら入社する」と言わざるを得なくなる学生も多い。

「オワハラ」という言葉ができて問題視されるようになったのはここ数年だが、そのような対応をする企業自体は10年以上前から存在していた。

もちろん、そのような条件なしに内定を出す企業も多いが「内定を出した後の辞退を少しでも減らしたい」という考えからこのような「オワハラ」をするのだ。

最終面接で、「まだ他に受けている企業がありますか?」など質問されたら要注意だ。

他社の辞退をして就活を終えるまでは「内定」というキーワードを出さず「一緒に働きたい」「来てもらいたいと思っている」という曖昧な言葉を学生に通知する企業もあるようだ。学生からすると、自分が内定を得ているのか得ていないかわからず不安な状況に立たされることになる。

【こっそり就活継続しようとしたら物理的に阻止…?】

「他社はもう受けない」と返答して内定(内々定)を受けた後に、他社を受ける学生も少なからず存在する。

本人が就活を終了するつもりだったが家族に反対されて就活を再開するようなケースもある。

しかし、そういった「こっそり就活継続」を阻止するために知恵を絞っている企業もあるようだ。

例えば内定者バイト/内定者インターンへの参加を求めたり、競合他社が面接を行うとされている時期に内定者研修を実施するようなケースがある。

何らかの理由を付けて参加しないという学生もいるが、研修への欠席を交渉する過程で企業に対するイメージが下がり、結局辞退してしまったという話もある。

企業側も必死になるのは仕方がないことなのだが、結果として誰も得しない話である。

【入社誓約書の提出期限が早いことも】

口頭での内定承諾だけでなく、入社誓約書の提出を早期に求められることもある。

直接的な「オワハラ」とは言えないかもしれないが、「書面で誓約してしまったらその後は他社の選考は進められない」と感じている学生も多いので学生を囲い込む方法としては一定の効果があるとも考えられる。

6月1日以降に内定を出す企業もある中で、5月中に内定承諾を得ようと必死になる企業もある。

【内定承諾後の辞退は違法ではないが、書面にサインをする時は注意】

基本的に、内定承諾に法的拘束力は無い。

ただし、内定辞退そのものに対するペナルティが無かったとしても「それまでに掛かった研修・教材費用」などの自己負担を求められるケースは存在する。

レアケースではあるが卒業間際に内定辞退をした結果、研修費用の自己負担を求められ、知人から借金してそれを支払ったという事例もある。

早期の内定辞退であれば問題ないが、何ヶ月も内定者研修を受けた後に辞退する場合には、そのような取り決めが書面に載っていないかよく確認してもらいたい。

どのような内容であれ、サインを行う時は慎重になろう。

就活SWOT代表

慶應義塾大学在学中、世界初の就活SNSの代表に就任。国内最大の就活SNSへと成長させた後に大学を卒業し、エグゼクティブサーチを行う人材ベンチャーに入社。役員・事業責任者などの幹部人材の採用支援に携わる。2009年にエイリストを設立し「自分の頭で考え、行動する人材を増やす事」を命題として就職情報サイト「就活SWOT」を開設。

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