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「就活解禁」が昔ほど騒がれなくなったのはなぜか?現在の就活事情

酒井一樹就活SWOT代表
(写真:イメージマート)

3月1日、「正式に」採用広報が解禁され、2024卒学生の就職活動が正式に始まりました。

しかし昔に比べると、採用広報の解禁が大きく騒がれることはなくなって来ています。

一昔前は、0時になると同時に就活生のアクセスが殺到し、「●●ナビがサーバダウンした」「ナビはまだ生きている…」などと話題になるのが風物詩でしたが、最近ではそのような場面もなくなりました。

これにはナビサイトがサーバ増強や負荷対策を行ったという背景もありますが、それだけではありません。

インターンシップの普及による就活時期の二極化や、「採用広報解禁日の形骸化」も無視できない問題です。

【3月1日の解禁初日から会社説明会がある謎】

採用広報の解禁が3月1日であるにもかかわらず、個別企業の会社説明会が3月1日から実施されています。もちろんオンライン説明会も多いですが、オフライン説明会もたくさんあります。

今日まで採用広報していなかったはずなのになぜ…と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、1月下旬から採用情報や一部の会社説明会情報はすでに出ていたのです。

それに加えて会社説明会の「事前予約」も行われているため、学生は「3月1日にはこの企業の説明会に行く」とスケジュールを事前に決めており、企業側もそのつもりで準備をしています。

ですので採用広報の解禁が3月1日になっているというよりも、会社説明会や選考(エントリーシート受付など)の実施が3月1日スタートになっていると考えた方が実態には近いでしょう。

下記のスクリーンショットは、1月下旬から公開されていた主要ナビサイトのページの記録です。

https://job.mynavi.jp/conts/2024/schedule/
https://job.mynavi.jp/conts/2024/schedule/

https://job.rikunabi.com/2024/contents/article/edit~employ~index/n/?original=1
https://job.rikunabi.com/2024/contents/article/edit~employ~index/n/?original=1

では3月1日に解禁されているのは何なのかというと、「エントリー予約した学生の個人情報」の企業側への開示です。

エントリー学生の情報は3月1日まではナビサイト側で保持されており、それが送信されるのが3月1日という事なのです。

実際に調べてみると、マイナビでは解禁初日の3月1日に会社説明会を実施した企業は1993社、リクナビでは1124社でした。(オフライン、オンライン開催どちらも含みます。)

本当に3月1日から採用広報が始まるのであれば、ここまで多くの企業が解禁初日に会社説明会を開催できるはずがありません。

なお、ナビサイトには特定のターゲットを対象に会社説明会の情報と予約フォームを送信する機能も用意されています。

採用広報解禁までは企業側に個人情報が渡ってはいけないため、採用企業が自社サイトで同じように説明会の事前エントリーを受け付けることはできません。そのため、逆にナビサイトのビジネスチャンスとして利用されているという構図です。

このような仕組みもあり、3月から採用広報が解禁されるというルールは形骸化しています。だから3月に就活がスタートするというのはある意味で「今更」な話題なのです。

【選考の解禁も前倒しに】

また選考の解禁は6月1日からという事になっていますが、実質的な選考は3〜5月に実施するという企業が多くなっています。6月には意思確認的な最終面接や、内々定面談が実施されるケースが多いという現状です。

しかしルールが形骸化する中で、興味深い動きも出てきています。

例えば先月、三菱商事が3月に面接を解禁すると報じられ、話題になりました。

三菱商事のような企業が選考の前倒しを正式に表明することで、現実の就活スケジュールとのギャップが埋まるのは筆者個人的には良い傾向であると考えています。

来年度からは一定の条件を満たしたインターンシップであれば、参加者の情報を採用選考にも活かすことが認められるようになり、実態から乖離していた就活ルールがまた一つ是正されます。

建前と実運用に食い違いがあり、就活生を混乱させる要因がようやくここに来て徐々に解消されつつあります。

【インターンでの就活早期化で、本選考は消化試合の場合も】

また、就活解禁がそこまで騒がれなくなったもう1つの理由として、インターンシップへの重心移動が挙げられます。

インターン時期から動いている学生はすでに就活を終えていたり、就活継続中であったとしてもある程度行き先に目処が立っていたりします。

もちろん採用広報解禁後に動き出す学生もいますが、コロナ流行を機にインターン経由の採用を強化した企業も多く、本選考でもインターンで接点を持った学生を個別にクロージングするという動きが増えました。

動きの早い企業であればすでに次の「25卒」に向けて動き出しており、25卒向けのインターンイベントの情報も出始めています。

(現時点で動き出している25卒生はまだ意識が高い一部の層だけですが、新学期に入り4〜5月になると徐々にインターン情報が活発に出回るようになってきます。)

前述したとおり、25卒からはインターンで得られた学生情報が正式に採用選考に活用できるようになります。企業も学生も、今まで以上にインターンには力を入れることになるでしょう。

「3月の就活解禁」で動き出す学生は今後更に減り、就活開始時期の分散化は進んでいきそうです。

就活SWOT代表

慶應義塾大学在学中、世界初の就活SNSの代表に就任。国内最大の就活SNSへと成長させた後に大学を卒業し、エグゼクティブサーチを行う人材ベンチャーに入社。役員・事業責任者などの幹部人材の採用支援に携わる。2009年にエイリストを設立し「自分の頭で考え、行動する人材を増やす事」を命題として就職情報サイト「就活SWOT」を開設。

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