マイナビ新卒紹介の「大東亜以下」メールが炎上。学歴フィルターなどの疑惑を解説
「マイナビ新卒紹介」の送信したメールの不手際が炎上している。
マイナビ新卒紹介に登録する学生が受け取ったメールにて、タイトルが「<第1>大東亜以下➈」となっていたという話だ。
「大東亜(大東亜帝国)」とは、就活においては「大東文化大学、東海大学、亜細亜大学、帝京大学、国士舘大学」などの私立大学群を意味する言葉となっており、このようなメールが届いたことで「選考に学歴フィルターが使われているのではないか?」と疑惑の目を向けられているのだ。
受け取ったメールの内容はTwitter上で複数の学生から報告が上がっており、すでにマイナビから謝罪も出ている。
今回はこの問題について、世間で誤解されている点や認識されていない点について解説していきたいと思う。
(学歴による選考の是非を議論するものではなく、あくまで問題の整理を行う立ち位置で解説していきたい。)
●そもそも学歴フィルターとは?
学歴フィルターとは、広義では「特定大学の出身者以外の者を採用選考から外す」行為を指す。
狭義には、ナビサイトの企業エントリーシステムにおいて特定の大学の学生にのみ「予約可能な画面」が表示される仕組みを意味する。
この問題については過去にも記事を書いているためこちらを紹介したい。
今回の問題は、特定の大学群の学生に対してターゲティングDMを送信したというものであり、これは「ナビサイトにおける狭義の学歴フィルター」には該当しないと言って良いだろう。
このためマイナビ広報が「学歴フィルター疑惑」を否定するのは当然であり、それは嘘ではないと言って良い。
(「では広義の学歴フィルターには該当するのか?」というとそこは議論の余地がある。その議論をする上で認識しておくべき事実については、後述する。)
なお、取材に対してはあくまで新卒紹介部門の話として回答されているため、マイナビ本体に学歴フィルター的な機能があるかどうかについては今回言及されていない。これについては別の問題として考えるべきだと言えるだろう。
●そもそも新卒紹介とは?
「新卒紹介」を知らない方のために説明すると、新卒学生のみを対象とした人材紹介(エージェントサービス)のことだ。
学生が新卒紹介サービスに申し込みした場合、直接採用企業にエントリーされるわけではなく、一般的にはまず紹介会社に所属するコンサルタントと面談をすることになる。
面談の後、そのまま希望の企業に紹介されることもあれば、別企業を紹介されることもある。
採用を行う企業は基本的に初期費用を支払う必要がなく、1人も採用しなければ費用は0円だ。紹介された学生が内定承諾をして初めて採用成功報酬が発生する。
(また、内定承諾をした後に入社までに内定辞退されてしまった場合は、返金されることが多い。)
この成功報酬は、エージェントによって異なる。
目安としては一般的な文系学生で50〜100万円程度、理系学生や体育会系学生なら100万円以上という事例が多いだろう。
数年前は文系学生で30〜60万円程度というエージェントも多かったので、かなり高騰している。
高学歴特化のエージェントや、優秀なエンジニア学生を抱えるエージェントでは、1人採用で300万円以上のフィーになったという話もある。
「高い!」と感じる方も多いかもしれないが、将来エース級になる人材を青田買いできるならそれでも使いたい企業はあるということだ。
●エージェントによってターゲット学生は異なる
新卒紹介を行う会社(エージェント)も、顧客企業のボリュームゾーンによって集客したい学生の層は異なる。
難関企業に特化しているエージェントであればMARCH(明治大学、青山学院大学などの大学群のこと)以上の学生を重点的に集客していたり、あるいは旧帝大・早慶上智クラスの学生に注力していることもある。
一方、学生を集めにくい不人気業種や中小企業を顧客としているエージェントにおいては、大学ランクが高い学生を敬遠する場合もある。あまり高学歴な学生ばかり集めても、自社の顧客とマッチしづらいためだ。
そのため、「日東駒専や大東亜帝国クラスの大学の学生と会いたい」という新卒紹介会社もあるのだ。
ではマイナビの新卒紹介はどうなのかというと、このエージェントは特に上位大学に特化しているというわけではない。大企業から中小企業まで様々な企業が利用している新卒エージェントだと言って良いだろう。
顧客企業もバラエティに富んでいるため、上位大学から採用したいという企業もあれば、学歴にこだわらないという企業も多い。つまり学生に応じて紹介される企業に違いはあるものの、「大東亜帝国以下」の大学層が歓迎されないといったことはないだろう。
「大東亜以下」の学生に対してメールを送信しているということは、マイナビ新卒紹介はそれらの学生に対しても紹介可能な企業があるという見方もできる。
(それらの大学の学生を相手にしていない新卒紹介会社であれば、そもそもそのような区分でターゲットDMなど作成しない。)
もちろん、顧客の中には特定の大学の出身者のみ採用したいという企業もあるだろう。
しかし新卒紹介エージェントとしては別の企業を紹介すれば良いだけだ。
つまり、マイナビ新卒紹介としては「特定大学の出身者以外の者を採用選考から外す」ことは考えにくい。紹介できる企業がある限り、「大東亜以下」も大事なユーザーなのだ。
(なお、優秀な学生であれば、所属大学に関係なく上位大学のみ採用している顧客にプッシュするというケースはある。マイナビ新卒紹介のコンサルタントにそれができているかどうかは別問題だが)
●マルキュー=バカの隠語疑惑は?
メールタイトルにあった「⑨」という数字に関して、「マルキュー=バカという意味を持つ隠語」と邪推するネットユーザーもいたようだが、率直に言ってこれは考えすぎだ。新卒紹介の担当者や人事担当者で、そのような隠語を使っている担当者を筆者は見たことがない。少なくとも業界内で一般的に使われている言葉ではないという事は断言できる。
今回の記事は解説を中心にしたため「学歴による選考が是か非か」という議論は敢えて省略しているが、学歴の問題は非常にデリケートであり、気にしている方も多いため邪推されて炎上しやすい傾向にある。
今回は誤解や邪推で炎上している部分が大きいが、もちろんマイナビも含めた大手ナビサイトは、学歴フィルター要素のあるオプションサービスの是非について今一度検討するべきだろう。
問題の本質を見極め、正しい議論がされることを望みたい。