インターンと選考を連携する企業はすでに7割超。ルールの形骸化に経団連・大学はどう対応するか?
経団連や大学によって構成される「産学協議会」から、「就活選考前のインターンシップ評価を合否に利用する」事の合意について発表された。
これまで「インターンでの評価や学生情報は就活の選考に影響させない」というルールが作られていたが完全に形骸化しており、今回の動きは経団連と大学がインターンシップの現状を追認する形となっている。
今回は、この問題についてこれまでの経緯と現状についてお話したい。
インターン評価、実態は「すでに利用されている」
文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省は、1997年に「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」を発表しており、「3省合意」と呼ばれているのはこれのことだ。
3省合意の中で、インターンシップについては下記のように取り決めされている。
しかし周知の事実であるが、インターンシップでの評価はすでに本選考の合否判断や内々定出しの意思決定に活用されている。
前述のルールがあるためナビサイトなどでは「インターンは選考に影響しない」と案内される事が基本となっているが、これが建前であることは学生にも知られている。
ただ情報感度の低い学生は、こうした建前を鵜呑みにして就活のスタートに出遅れることもある。
先月、就活ナビ運営会社の1つである「学情」によって実施されたアンケートによれば、インターン実施企業の中で「インターンシップと選考を連携する企業が7割超」になっていると分析されている。
こちらのアンケートでの企業の回答として多かったのが、次のような項目だ。
「通常選考で優遇まではしないが、インターンシップ参加者限定の情報提供やセミナー等を実施している」33.5%
「インターンシップ参加者は通常選考で優遇する」31.9%
「インターンシップ内で選考・内定出しを行っている」8.8%
現場の肌感覚としても、概ね上記のような割合で違和感はない。
中には本当に選考に影響しないケースもあるが、それは会社説明会とほぼ変わらないような、希望者が全員参加できるようなインターンシップである事が多い。
学生の選別ではなく、自社の認知度アップなどを目的としている場合はそのような企画が実施されることもある。
(ただし、このパターンはせいぜい半日〜1日で完結する1dayインターンになっている事が多く、経団連が定義するインターンシップには該当しない事も多い。産学協議会においては「オープンカンパニー」と呼ばれているものが実質的な1dayインターンに近いと考えられる。)
今回報道された話は今更感のある話であるが、ルールと実態が近づけられる点は良いニュースだと言える。
【インターンの就活活用における産学協議会の動き】
そもそも産学協議会というのは、2019年に設置された「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」の略称だ。
2018年に経団連は「採用選考に関する指針」の策定をやめると表明しており、その後に大学と経団連の代表との間で率直な意見交換を行うための場所として同協議会が新たに設けられた。
就活やインターンだけでなく、産学協働による教育などについても議論が行われている。
実は産学協議会は2021年の報告書の中で、「キャリア教育としての低学年向けインターンシップ」と「就職・採用選考を意識した高学年向けのインターンシップ」を区別すると明言し、採用につながるインターンが存在している事を認めていた。
参考:ポスト・コロナを見据えた新たな大学教育と産学連携の推進
この話に関しては、2021年に寄稿した記事「経団連は就活を変えられるか?インターンシップの現状とは」も当時を知る記事として併せてご参照いただきたい。
その報告書の公開から1年が経ち、採用直結のインターンを建設的に活用し、コントロールすべく一歩踏み出したという事になる。
注目するべきは、現状すでに行われているインターンの選考利用を追認するだけの動きなのか、それとも従来よりもインターンと就活が密接に結びつくよう積極的な動きをするのかという点である。
採用につながるインターンについて、産学協議会では「実施期間の半分を超える日数の就業体験」「学生へのフィードバックの実施」など、遵守すべき基準を設けて周知しようとしている。
今後「3省合意」の改正が実現すれば、それらの基準を満たしたインターンシップで得た学生情報は堂々と採用活動に活用できるということだ。
多少の制約はあるにせよ実状にかなり歩み寄った内容となっており、これならば賛同できるという企業も多いのではないだろうか。
あとは、基準を遵守することのインセンティブがどう設計されるかが鍵となるだろう。この点は、就職情報サイトの運営会社などをどう巻き込んでいくかが注目となる。