「大丈夫、じゃなくてもいい」東京五輪直前、大坂なおみ選手が伝えたかったこと
テニスの大坂なおみ選手が米タイム誌の東京オリンピック直前特集号(19日)に手記を寄せ、8日電子版でも公開された。
大坂選手は全仏オープン(ローラン・ギャロス)直前の今年5月、ソーシャルメディアを通じて「記者会見でアスリートの心の健康状態が無視されている」と問題提起し、全仏中は試合後に会見を行わない意向を表明した。それが発端で思わぬ騒動に発展し、全仏オープンの棄権を発表。
その発表の際、実は2018年全米オープン以来、記者会見での記憶がトラウマとなり、気分の落ち込みや憂鬱な気分に長い間、悩まされていることを告白した。日本のメディアでも「うつ状態」などと大きく報じられた。
大坂選手はその後充電期間に入り、アメリカのスーパーに姉のまり氏と食品の買い物に行く姿などがキャッチされていた。また先月28日から今月11日まで開催の全英オープン(ウィンブルドン選手権)にも欠場している。一方、23日から始まる東京オリンピックには初出場する意向を示している。
タイムに寄せた手記で、大坂選手は5月以降の騒動をこのように振り返った。
大坂選手の言う重要な教訓とは何だろうか。
学びその1:
すべての人を喜ばせることはできない(全員の同意や理解、満足を得ることは難しい)。
学びその2:
誰もが心の健康に関わる問題を抱えている。あるいは周りにそのような人がいる。
また、自分の行動が誤解を招き人々を混乱させたのかもしれないが、プレス(記者やメディア)と記者会見が混同されていると分析している。
「自分は(これまで素晴らしい関係を築いてきた)プレスのことは大好きだが、すべての記者会見を好きなわけではない」と再度、明確に表明。その上で、大多数のテニスライターは同意をしていないが、彼女自身の個人的な意見としては「記者会見の形式自体が時代遅れで、刷新が必要」と再び問題提起をした。
家族や友人、励ましてくれた世間の人々、ミシェル・オバマ氏など彼女を支援してくれた各界の著名人、パートナーであるスポンサー企業らに感謝を表明しながら、自分の性格について再び、内向的で注目されるのは苦手と改めて告白した上で、「自分がこれは正しい(&間違っている)と思うことは自分を奮い立たせて発言するようにしている」と言う。しかしその結果、代償として大きな不安に襲われることがよくあるとした。
「大丈夫、じゃなくていい」
彼女がもっとも強調したかったであろうアスリートのメンタルヘルスについて、個人的な症状や病歴はプライバシーの観点から二度と開示したくないし、メディアにもその辺は聞かないでほしいと釘を刺した。さらに、「自分にとっては新たな分野で、いつもはっきりした答えが自分にあるわけではない」としながら、
このように人々に共感してもらい、メンタルヘルスに対する人々の理解がより深まることに期待を寄せた。
競泳の金メダル保持者、マイケル・フェルプス選手に「あなたが話すことで命を救ったかもしれない」と言葉を送られたエピソードも紹介し、このようにも語っている。
東京オリンピックに寄せて
手記の中には、迫り来る東京オリンピックについても言及している。
気分の落ち込み、反省、そして充電を経て再び心身ともに強くなった大坂なおみ選手が誕生したようだ。日の丸を着けた大坂選手の、東京オリンピックでの活躍が楽しみでならない。
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今月16日より、ネットフリックスで大坂なおみ選手のドキュメンタリーがスタートするとして、アメリカでも大注目されている。
予告編で大坂選手は、幼少時の家族の写真なども交え「母はいつも残業し、時には車内泊をするなどし、子どもたちのために自分を犠牲にしてきた。そんな母を自分がテニスをすることで救い、母には幸せになってほしかった」と振り返っている。大坂なおみ選手の知られざる生い立ち、強さの秘訣、テニス選手だけではない1人の女性としての一面も垣間見られそうだ。
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(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止