大坂なおみ「世界トップアスリート」に。米紙に語った「私にとって、もっとも大きなことは・・・」
ESPNがその年にもっとも活躍した世界のスポーツ選手を特集する、毎年恒例の『ESPN World Fame 100』。2019年号(3月15日発行)で、大坂なおみが堂々と表紙を飾って話題になっている。
これを記念し、ESPNが発行するスポーツやポップカルチャー系のウェブマガジン『The Undefeated』3月8日号でも、撮り下ろしの写真を交え、大坂なおみの特集が組まれている。
参照記事:
「The One and Only Naomi Osaka」(唯一無二の大坂なおみ)
インタビューは、全豪オープンテニスで優勝した数日後、大坂選手が拠点を置くフロリダ南部のエヴァート・テニス・アカデミーで、大坂選手との1対1で行われたもの。インタビュアーは、『The Undefeated』のソハヤ・ナディア・マクドナルド(Soraya Nadia McDonald)記者。
同記者が「ヴェールに包まれてきた」とする大坂選手自身とこれまでの軌跡を、コメントとともに振り返る内容で、特に昨年9月の全米オープンと今年1月の全豪オープンでのグランドスラム2冠達成についてフォーカス。波乱に満ちた展開となった全米オープンだったが、セリーナ・ウィリアムズ選手については、改めて賞賛のコメントを送っている大坂選手が印象的だ。
「正直に言って、セリーナのことを嫌いな人がいるのも知っているし、全米オープンの後に特にそう感じるようになりました」と大きなため息をついた後、「私はセリーナが大好きです。彼女の試合を見ながら育ちましたから。彼女がいなかったら、今の私はいなかったでしょう。彼女はテニス界に、そして特に人種(問題)に、たくさんのドアを開いてくれました。私にとってセリーナは、人間の強さを見せてくれた人物です」
「大坂選手は、黒人差別(主義)の心ないテニスファンがセリーナ・ウィリアムズ選手をスポーツ界から追放しようとする動きに、戸惑っている気持ちを語った」と、マクドナルド記者のツイート。
「日本との関係は複雑なもの」と米紙
続けて記事では、彼女のスポンサーである日清食品の「ホワイトウォッシング」広告などを事例に上げ、ハーフである大坂選手にとって「人口の98.5%の民族が日本人である日本との関係は複雑なもの」だとしている。
大坂選手の引用コメントとして、以下のように紹介。
「私のような日本人テニスプレーヤーはこれまでいませんでした。私にとって、もっとも大きなことの一つは、日本人は日本人に見えなくてはならないとか日本語を話す、とかそういうことではないのを、人々が理解できるようになってほしいということです。もし私に日本人の血が流れているのであれば ー わからないけど、皆さんはどのように国籍をカテゴライズするのでしょうか。皆さんに考えてほしいことです」
「面白いのは、私が勝ったり何か良いことをしたら、人々が私の国籍や民族について話し始めることです。それがまるで私にとって重要なことであるかのように。でもしょうがないことだとは思います。なぜなら(私を見た時に)最初にまず気づくことですから。私がアメリカに住んでいるからアメリカ人だと言ったり、父がハイチ人だからハイチ人だと言ったり、母が日本人だから日本人だと言ったり。私はわからないわ。それより皆さんには、ただ(私の)テニスプレーに注目してほしいです」
昨年全米オープン後に日本で行った優勝会見で、大坂なおみ選手は自身のアイデンティティについて、日本人記者からの質問に対して「私にとって、私は私」とコメントしている。
このときは、アイデンティティに関して公の場で初めて向けられた、もっとも予期せぬ質問だっただろう。「私にとって、私は私」というのはその場でとっさに出た言葉だったが、これこそが彼女の潜在的な思いなのだろう。それから約半年後に、この前述のコメントだ。あの日本での記者会見の後、アイデンティティについて改めて考えることもあったのかもしれない。
また、大坂選手が2度目のグランドスラムを勝ち取った夜、数々のインタビューや撮影を終えて、疲れ切った大坂選手が母親の環さんに電話をしたら、「電話はいいから、早く寝なさい」というような言葉が返ってきたというのは有名な話。
環さんはこのときのエピソードに関連して、「私はただ彼女が幸せを感じてほしい... よい人生を。心配せず。出会う人々から、毎日の行いから何かを学んでほしい。日々より良い人になるように」と語っている。
記事を読んだ読者からは、
「特にセリーナに対する思いが伝わってきてよかった」
「(人種に対していろいろ言われているけど)それらの文化が、彼女のすべてを祝福したいのではないかな」
「ナオミのこのすばらしい写真から目を離せない。もしテニスプレーヤーじゃなかったから、サイレント映画のスターになるべき」
など、2019年のトップアスリートにふさわしい賞賛の声が寄せられている。
(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止