大雨の「警戒レベル」って、いったいなに?
最近になって急に、大雨の「警戒レベル」について報道がなされるようになりました。
これは雨の多くなる時期を迎え、いつ避難をしたらよいか、防災情報を5段階にレベル化して伝えようということになったからです。
簡単に言えば、
(対象地域での警戒)
レベル1 ほぼ平常
レベル2 避難行動の確認
レベル3 高齢者等避難
レベル4 全員避難
レベル5 極めて危険・手遅れかも
という感じでしょうか。
今回、この警戒情報に関する各局のニュースをいくつか見て思ったのは、「これ、どういう意味なの?」という率直な感想でした。
つまり、これまでより情報の種類が増えただけで、ますます情報が分かりにくくなっている気がしたのです。
「警戒レベル」が作られた理由
そもそも、警報をレベル化するのは、これまでの注意報や警報、さらに特別警報を出しても、住民の避難行動に直接結びつかず、被害を未然に防ぐことができなかった残念な事例が多々あることに起因します。
各種の情報を出しても、必ずしもそれが住民に届かない。それを無くしたいという行政側の強い意志が「警戒レベル」という新しい防災の枠組みが作られた理由だと、私は考えています。
結局、新たに危険性の強い情報を加えることによって、これまでよりもより強い警告を発し、「あとは避難するもしないも自己責任ですよ」と言う行政側の心くばり(本音)も垣間見られます。
誤解なきように言うと、私は自己責任論を否定する者ではありません。ただ、今回の警戒のレベル化は、ひょっとしたら「屋上屋を架す」になっていないかと危惧するのです。
気象知識のある人ほど「迷う」状況に
「屋上屋を架す」ということわざは、屋根があるのにその上にさらに屋根を架けるという無駄な事のたとえですが、気象情報も複雑になるだけで、住民はますます混乱して、何をどう判断材料にしてよいのか、気象知識のある人ほど「迷う」という状況になってきています。
たとえば、大雨関連の情報だけでも、注意報に始まり、警報、特別警報、それに記録的短時間大雨情報や土砂災害警戒情報、事前に発表される大雨に関する情報......などなど、災害時には関連情報があふれるように発表されます。
もちろん、気象庁のホームページを始め、内閣府の防災情報のページなどを読みこめば、どういう経過で今回の警戒レベルが作られたのかは理解できますし、新たな防災情報としての意味もあるのでしょう。
しかしそれでも、情報が複雑になることは選択肢が増えることでもあり、それが混乱を生むというのが、私の意見です。
今回の警戒レベルは、主として大雨を対象としていますが、やがて大雪や暴風にも適用されていくようになると思われます。
そして結局情報の種類が複雑になるだけで、防災関係者の仕事量が増え、その分、重要な判断思考の時間が削られたり、直接の避難誘導などの人的不足に陥ったりするのではないかと、心配しています。
情報は使うことによって価値を持つ
平成29年7月九州北部豪雨のあと、被災地で災害にあった方々にお話を伺う機会がありました。
福岡県朝倉市や大分県日田市などで、複数の方々に色々教えていただきました。
その中でとくに驚いたのが、気象情報の取り方でした。
私は、てっきりテレビでの情報収集が一番多いのかなぁと漠然と思っていましたが、なんと多くの方はインターネットから直接自分で情報を集め、それを自分の知り合いの人々で教え合うという形態をとっていたのです。
そしてその方々が欲していたのは、自分の住んでいるところの、正確な危険度であるとおっしゃっていました。
その意味で言うと、現在の気象情報は、対象範囲が広すぎると言えなくもありません。
言い換えれば、情報発信側は情報の受け手の事をあまり理解せずに、垂れ流しというと言いすぎかもしれませんが、とにかく情報や注意喚起をすれば事足れりという感覚になりやすいのではと、思います。
また、情報の受け手も、自分に関係のない地域にはあまり関心を持たない傾向がありますが、普段から災害の想像力を持つことが大切だろうと思います。
今回、警戒レベルという、新たな情報が付け加えられて、本来誰にでも理解できるようにシンプルを目指すべきはずの気象情報が、ますます複雑化するように私には見受けられます。
といってもすぐに対案が見つかるわけでもありません。
とりあえず、自分の住んでいる地域に警戒レベル3が発表され、しかも裏山や崖に近いなど自分の家に不安がある場合は、できるだけ早い避難が大切です。避難に勝る防災はありませんから。
参考リンク: