気象庁発表 2024年天候のまとめ(速報) 異常気象から気候変動の年へ
気象庁から12月25日に「2024年の天候のまとめ」が速報として発表されました。そこには、日本のみならず、世界各地でこれまでの記録を塗り替える異常気象が起きていることが記載されています。
異常気象と気候変動は何が違うのか
気象庁では30年に一回くらいの頻度で起こるまれな現象を「異常気象」と定義しています。ところがそれが、10年に一回とか数年に一回とかの頻度で起こるようになると、それはもう「異常」ではなく、「常態」ということになります。こうして異常が常態になったことを「気候変動」と呼びます。
今年はその意味で、未来から見ると「異常気象」から「気候変動」が鮮明になった年と言われるのではないでしょうか。
具体的に今年起きたことを振り返ってみましょう。
地球規模で記録更新の高温現象
年間を通じて、世界中で高温や大雨、洪水が頻発しました。中でも注目すべきは、7月21日に世界平均地表気温が17.09度を記録したことです。これは前年の世界記録をさらに上回る新記録で、デスバレーでは53.3度という驚異的な気温も観測されました。タイトル画像にもあるように、このような高温現象は世界各地で発生しており、記録を塗り替え続けています。すでに11月までの今年の世界の年平均気温は、+0.62度と過去最も高くなっており、このまま2年連続で記録を更新するのはほぼ確実とみられています。
”冬” 記録的な暖冬
一方、日本に目を向けると、2023年春からのスーパーエルニーニョにより、2024年の冬(2023年12月~2024年2月)は全国的に記録的な暖冬になりました。冬の平均気温偏差は+1.27度で昨シーズンに次ぐ過去2番目の高さで、日本海側の降雪も東日本や西日本では平年の半分程度しかありませんでした。ただ、除雪費用はその分少なくて良かったようです。
”春” 異例のサクラ開花の遅れとその背景
サクラはおよそ10年ぶりに平年より大幅に遅れての開花でした。暖冬にもかかわらず、東京では3月29日(平年より5日遅い)に開花。満開は4月4日で近年としては珍しく、遅いお花見の印象を受けました。これは開花期の天候不順が直接の原因ですが、サクラは天気を素直に体現し季節の指標として優れていることを印象づけました。
”夏” 猛暑が各地で頻発
夏はとんでもない大猛暑でした。東日本では、7月から8月の平均気温が平年より2度以上高い状態になり、さらに福岡県太宰府市では、7月19日から8月27日までの40日間連続で35度以上の猛暑日を記録したのです。大宰府における年間の合計猛暑日数も62日に達し、この暑さを経験した方は“マジで気候が変わった”と体感したことでしょう。
また那覇でも猛暑日が8日(過去最多タイ)となり、西日本や沖縄地方の暑さもけた外れとなりました。
”秋” 記録的な暑さ 猛暑日延べ1万日以上
9月になっても各地で夏のような高温が続き、東京では1942年以来82年ぶりに最も遅い猛暑日を更新。全国的にみても1946年の統計開始以降、東日本と西日本では9月として1位、沖縄・奄美では1位タイの高温となり、年間の全国の猛暑日延べ日数は昨年の7084日を超えて何と10273日になりました。
一方で、11月には長崎県で線状降水帯が発生、鹿児島県の与論町には大雨特別警報が発表されるなど、「異常気象」は秋も続いたのです。
原因は海水温の異常上昇
これらの猛暑や豪雨を引き起こした最大の原因は、日本近海の海水温の異常な高さです。特に東シナ海では、通常28〜30度の水温が今年は32度にも達しました。この水温の異常さはニュースではあまり伝えられませんでしたが、本来ならば揚子江の影響でそこまで高温になることの無い東シナ海で30度以上というのは、特筆すべき事象と言えるでしょう。
迷走台風10号 夏の勢力を象徴する出来事
また8月22日にマリアナ諸島近海で発生した台風10号は、当初、日本列島を直撃する進路が予測されましたが、最終的に九州に上陸する前に日本付近で迷走しました。この迷走の原因は、偏西風の北上と日本付近の高気圧の影響です。この時期の台風の迷走は、通常日本の南海上で起こることが多いのですが、今年はその位置が500キロ~1000キロほど北にズレていました。これは気候帯そのものが北にシフトしていたことを示唆しています。
温暖化の影響を科学的に捉える「イベントアトリビューション」
近年、異常気象と温暖化の関連性を判断する手法として、「イベントアトリビューション」が注目されています。これは、特定の気象現象が温暖化の影響をどれほど受けているかを定量化する研究です。
例えば今年、ロンドンのインペリアルカレッジの研究では、今回の台風10号による最大風速が温暖化によって7.5%増大したと報告されました。(注1)
また、9月に石川県能登地方で発生した豪雨(輪島市、珠洲市、能登町に大雨特別警報を発表)も、温暖化がなかったと仮定した場合と比べて総雨量(9時間積算雨量)が15%程度増加していたとされています。(注2)
来年の気象を左右する「ラニーニャ現象」と「インド洋の海水温」
では、来年はどうなるのでしょう。鍵を握るのは「ラニーニャ現象(東部太平洋の海水温が低い)」と「インド洋の海水温」です。現在、ラニーニャ現象にはまだなってはいないものの、それに近い海水温分布が続いており、来年1月にかけて冬型の気圧配置が強まりやすいと予想されています。
また近年は偏西風の蛇行にインド洋の海水温が関係していると言われています。今のところ来春にかけて平常な状態が続くとみられていますが、その後の動向により異常気象がさらに進行し常態化すると、「気候変動」が現実のものとなってくるのでしょう。
来年の夏が猛暑になるかどうかがとくに重要なカギをにぎっていると個人的には考えています。
参考
注1 2024年8月30日付 朝日新聞デジタル
注2 令和6年9月の石川県能登の大雨に地球温暖化が寄与 -イベント・アトリビューションによる結果- 12月9日文部科学省・気象庁気象研究所発表
NOAA国立環境情報センター 2024年11月の月次地球気候レポート
2024年(令和6年)の天候のまとめ(速報) 12月25日気象庁発表