これを言ったら要注意!「私だけは大丈夫!」肝に銘じたい山岳遭難防止の5つのポイント
2022年、コロナ感染が始まって3シーズン目の夏山ですが、各地で発生している山岳遭難事例をみると体力不足をきっかけとする事例が多くなっています。
登山活動は不整地登山道でのアップダウンを寒暖の差が大きい気象条件のなか、普段背負い慣れていないバックパックを背負って5時間から10時間に及ぶ野外活動です。
登山に出掛ける前、家族や友人に「十分注意して無理しないよ。行けるところまでだから。私は大丈夫!」といった記憶はあるでしょうか。
私は正直、あります!!自戒を込めて皆様にお伝えしたい登山を笑顔にする5つのポイントをご紹介します。
1:何に注意するのか。
2:無理するのは体力?行動時間?天候?ルート難易度?
3:何が大丈夫なのか?
4:行けるところまでとは?下山はどうしますか?
5:目的でなく途中経過の楽しさに注目!
登山行為には様々なジャンルがあります。この記事を読んでいる皆さんの多くは自分自身の楽しみや健康を主としていて、他人の記録と競う登山をする方は少ないと思います。登山を計画する段階でSNSや各種登山アプリ記録を参考にしていると思います。
登山地図アプリが登山のすそ野を広げ、安全登山に役立っていることは現在誰も否定できない事実です。一方、登山初心者にとって想像を超える登山コンディションルートに入り込んでしまったり、身の丈に合わないコースタイムを参考にしてしまうトラブルも散見します。
1:何に注意するのか。
最も大切なのは自分の登山力(歩行能力・脚力・持続力、登山知識と経験値)と健康状態です。疲労過多による行動不能や事故を起こすのはヒトです。山などの自然環境はいかに過酷であっても登山者がいなければ、事件事故は起きないのです。
経験値や知識は登山歴(登山回数)とおおむね相関関係はありますが、ハイキングとアルプス登山とではそこから得られる経験値には大きな差があります。晴れた日にしか登山しない傾向が強いのはハイキングです。複数日程で行うアルプス登山などでは天候要因やそれに伴うルートコンディション対応など多くの能力をこなさなければなりません。基本は荷物を背負って不整地の登山道を登って下るという歩行力とそれを継続する体力です。
自分を含めたメンバー全員の体調管理への注意を怠ってはいけません。
2:無理するのは体力?行動時間?天候?ルート難易度?
自分自身のことを客観的に評価するのは難しいことです。可能な限り、近場の日帰り山歩きなどトレーニングをして歩く力を培っておかなければ、登山を楽しむのは難しいかもしれません。計画する登山のルートと日程・季節・天候・年齢・人数・性別と登山力に影響を及ぼす点に注目しましょう。
登山グループの行動能力に影響を与える要素は次が考えられます。
- 行動距離:km
- 登る高さ:m
- 下る高さ:m
- ルート難易度:岩場・クサリ・梯子・ガレ場・急傾斜・雪渓・渡渉など
- 背負う荷物:kg
- 登山形態や目的:縦走テント泊や小屋泊、日帰り、トレイルランニング、写真撮影など
- 天候や気象条件:酷暑・寒冷・風雨・濃霧・降雪・高度など
- メンバー能力と人数・年齢・性別:体力経験の少ない者に合わせる。人数が多いこと
登山情報誌やWEBサイト・SNSからは上記1・2・3はGPSログなどから客観的な数値を得ることはできますが、4・5・6・7・8に関しては、個人の主観が多く含まれることや、記載されないことがほとんどです。
それぞれのポイントを自分が体験しているでしょうか。登山歴における40年などといった年数でなく、少なくともこの一年間の登山活動状況を振り返ってみると良いでしょう。ホップ・ステップは良いですが、背伸びしすぎは要注意です。
3:何が大丈夫なのか?
A:登山中におなかが減って疲れたかなぁと感じた時どうしますか。
リーダー:「ねぇ! おなか減ってない? 喉渇いてない?」
メンバー:「今は大丈夫!」
当の本人は良かれと思って「大丈夫!」と言っているのですが、リーダーは今ではなく、先を読まなくてはいけないのです。
木陰で風通しの良い小広いスペースがあったのなら、「さあ、みんな!行動食と水分を少し食べるよ!」とリーダーシップを発揮しましょう。
B:注意した方がよさそうな足場の悪い箇所がでてきました。
リーダー:「滑るから気を付けてね!」
メンバー:「ハーイ! 大丈夫です!」
言っていることは間違ってはいませんが、
リーダー:「足元濡れて滑るので、この木を握って! 足さばきを丁寧にバランスを崩さないように!」
声掛けは具体的に指示を出すのがベターです。
4:行けるところまでとは?下山はどうしますか?
登山は登って下山するまでのことを言います。
登山は前もって計画はしますが、実際に歩きだせば様々な要因で変更を迫られる場面が出てきます。
- 体力的に限界に近かったり、
- ルート難易度が想定より厳しかったり、
- コースタイムを大幅に超過していたり、
- 天気が崩れかかっていたり、
そんな状況であった時、「行けるところまで行くだけなので大丈夫です」などと考えてはいけません。下山という一番大切なプロセスを安全に行うための要素を確認しておきましょう。
下りは心肺機能への負荷は小さいですが、脚への負荷は登りより大きいため、つまずきや転倒からの捻挫・骨折や滑落事故も多く発生します。脳が疲労してくると下山ルートの判断ミスも起こし易くなります。
- 休憩と栄養・ミネラル・水分摂取は十分できているか、下山分は残っているか。
- 下山にかかる時間は十分か。予め引き返し時刻を決めること。
- 下山ルートに岩場・急斜面など要注意箇所はあるか。下山ルートは易しい方を選ぶこと。
- 日暮れになっても慌てないヘッドランプは持っているか。
5:目的でなく途中経過の楽しさに注目!
登山は非日常体験でもあります。頑張った自分を褒めることもあるでしょう。筋肉痛の身体を自宅で愛おしく感じることも良い経験です。
登山の良いところは他人と競争するものでもなく、他人の記録と比べる必要が無いところです。
四季のある日本列島、急峻な山岳から伸びやかな高原まで多様な地形と自然環境が足元に広がっています。ゆっくり景色を見まわし、足元の草木をみて、自分の息遣いを感じてみてはいかがでしょうか。
過去記事:健康習慣には感動と喜びが必要です!
過去記事:withコロナ時代の登山ハイキングは?
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登山に限らずすべての行いにはリスクはつきものです。
この夏は
自分と仲間、家族を幸せにする自然と楽しむ健康登山をしてみませんか。