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熊本地方に激震が走った4月は安倍総理の政権運営にとって分岐点

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(216)

卯月某日

TPP法案で与野党が対立し中断した国会審議は、自民党が西川公也委員長に公正な議事運営を約束させることで14日からの審議再開にこぎつけた。しかしその14日夜に直下型地震が熊本地方を襲い、余震が収まらないことから政府は対応に全力を挙げなければならなくなった。

そのため15日に予定されていたTPP特別委員会は延期され、安倍総理の北海道補選応援もとりやめになった。一方、この間にワシントンで開かれたG20で為替介入を巡る日米の対立が明らかとなり、それは円高懸念を増大させる。4月は安倍政権にとって政権運営の分岐点になる可能性を帯びてきた。

4月8日の衆議院TPP特別委員会審議はお粗末なものだった。西川委員長が執筆し出版を予定していた『TPPの真実』について、民進党の緒方林太郎衆議院議員が原稿のゲラを手に質問したのに対し、森山農水大臣はゲラを認めた前提で答弁を行い、一方の石原TPP担当大臣はゲラの存在を認めない態度に終始した。質疑は全くかみ合わない。

そこで野党が西川委員長に議事を中断して速記を止めるよう要求すると、西川委員長はそれを認めず議事を続行した。審議時間を稼ぐために議事を続行させたのだろうが、速記を止めればスイッチが切られる委員長席のマイクは切られないままになった。

ゲラの存在を認めない石原大臣と緒方議員の議論はかみ合わず、民進党議員は退席することになるが、そのあとで西川委員長は自民党の理事に「あのゲラは古いもので後で書き直した」と釈明した。それが速記を止めていないためそのまま委員長席のマイクに記録された。

一方の石原大臣も自民党の理事に「ここは認めずに頑張るしかない」と発言した声がやはりマイクに拾われた。委員長がゲラの存在を認め、一方の大臣は認めずに頑張ると言う。それが両方とも記録されてしまったのである。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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