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大谷もびっくり!MLBとNFLでドラフト指名された真の二刀流選手たち

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
二刀流の大谷(右)、NFLとMLBの両方でドラフトされたブレイディ(三尾圭撮影)

 今週はNFLのドラフトが行なわれているが、アメリカでも最も運動能力が高い選手たちが集まるNFLには、投打の二刀流でメジャーリーグで活躍する大谷翔平もびっくりな真の二刀流選手たちがゴロゴロしている。

 過去にはMLBとNFLの二刀流選手として、両リーグでオールスターに選出されたボー・ジャクソンや、ワールドシリーズとスーパーボウルに出場したディオン・サンダースのようにメジャーとNFLの両舞台で活躍した選手もいる。

 そして、現役ではMLBとNFLを掛け持ちしている選手はいないが、シアトル・シーホークスのクオーターバック(QB)、ラッセル・ウィルソンはこの春にマイナーリーグの招待選手としてヤンキースのスプリングキャンプに参加して、メジャーのオープン戦にも出場した。

 ウィルソン以外にもメジャーからドラフト指名を受けたNFLのスター選手は多いので、紹介してみよう。

* ラッセル・ウィルソン(シアトル・シーホークス、QB)

 スーパーボウルに優勝したこともあるリーグを代表するQBのウィルソンは、高校まではアメリカンフットボールと野球の二刀流選手として活躍。高校を卒業した2008年のMLBドラフトでは、ボルティモア・オリオールズが41巡目で指名。指名順位は低かったものの、オリオールズはその年のドラフトで指名した選手の中では3番目に高額となる35万ドルの契約金を提示した。一度は野球を選びかけたウィルソンだが、「大学で学ぶことも大切」とノースカロライナ州立大学に進学。大学でもアメフトと野球の二刀流選手として活躍して、大学では内野手として打率.282、5本塁打の記録を残した。

 2010年にはコロラド・ロッキーズが4巡目で指名されて入団。大学でアメフトを続けながら、夏休みにはロッキーズ傘下のマイナーリーグの試合に出場していた。ノースカロライナ州立大学の監督は、ウィルソンにアメフトだけに専念して欲しいと思っていたために、ウィルソンは3年生終了時にウィスコンシン大学へ転校。大学最後の1年間はウィスコンシン大学でアメフトをプレーした。

 大学卒業時の2012年のNFLドラフトでシーホークスは3巡目でウィルソンを指名。1年目から先発QBとして活躍して、NFL2年目でチームをスーパーボウル優勝に導いた。

 2012年の開幕前の時点でNFLに専念することをロッキーズに伝え、野球を休んでいたが、2013年のルールVドラフトでテキサス・レンジャースが保有権を獲得。2014、15年のスプリングキャンプには少しだけ顔を出した。今年2月には少年の頃からファンだったヤンキースにトレードされ、オープン戦ながらメジャーの試合にも出場した。

大学時代にマイナーリーグの野球の試合に出場していたウィルソン(三尾圭撮影)
大学時代にマイナーリーグの野球の試合に出場していたウィルソン(三尾圭撮影)

* トム・ブレイディ(ニューイングランド・ペイトリオッツ、QB)

 2015年のスーパーボウルで、前年王者だったウィルソン率いるシーホークスを破ったニューイングランド・ペイトリオッツを率いるのがブレイディ。NFL歴代最多タイのスーパーボウルを5度も制し、史上最多となる4度のスーパーボウルMVPに輝くブレイディはNFL史上最高の選手とも呼ばれている。

 ブレイディがNFLドラフトで6巡目(全体199位)指名を受けたのは有名な話だが、高校時代にはアメフト選手よりも野球選手としての才能を高く評価したスカウトもおり、将来はメジャーでオールスター選手になれる才能も持ち主と言われていた。バリー・ボンズの母校でもあるサンフランシスコ郊外のジュニペロ・セラ高校では、当初は控えQBだった。野球では強打の左打ち捕手として活躍し、1995年のMLBドラフトではモントリオール・エクスポズ(現ワシントン・ナショナルズ)が指名したが、野球よりもアメフトが好きだったブレイディはミシガン大学でアメフトを続けることを選んだ。

 少年野球時代には、リトルリーグの選手として日本で試合をしたこともある。

少年野球時代に来日経験があるブレイディ(三尾圭撮影)
少年野球時代に来日経験があるブレイディ(三尾圭撮影)

* ジェイミス・ウィンストン(タンパベイ・バッカニアーズ、QB)

 強豪フロリダ州立大学の1年生だった2013年に史上最年少で大学アメフトの最優秀選手賞に値するハイズマン賞に選ばれたウィンストン。2015年のNFLドラフトでは全体1位指名を受けてバッカニアーズに入団した。

 ウィンストンに奨学金を提示した数多くの学校の中からフロリダ州立大学を選んだのは、野球との二刀流を許可してくれる学校だったから。スウィッチヒッターのウィンストンは大学野球でも投手と外野手として二刀流でプレー。投手として2勝2敗9セーブ、防御率1.95と活躍したが、打者としては打率.209、OPS.660と苦しんだ。

 高校を卒業した2012年のMLBドラフトで、レンジャースから15巡目で指名を受けている。

* マット・キャセル(デトロイト・ライオンズ、QB)

 ジャーニーマンQBとしてNFL7チームを渡り歩いているキャセル。南カリフォルニア大学を卒業した2005年のNFLドラフトでペイトリオッツが7巡目で指名。大学時代は4年間ずっと控えQBで、4年間合わせてのパス成功数が僅か20回とほとんどプレー機会が与えられなかった。それでも、ドラフトで指名されただけでなく、NFLで14年間も生き延びているのだから大したものだ。

 12歳のときには、一塁手としてリトルリーグ・ワールドシリーズに出場。自宅がロサンゼルス・ノースリッジ地震の被災に遭った直後だったにも関わらず、決勝まで進んだ。大学では4年生のときの1シーズンしか野球をプレーしなかったにも関わらず、2004年のMLBドラフトでオークランド・アスレチックスから36巡目で指名されている。

* コリン・キャパニック(フリーエージェント、QB)

 人種差別への抗議から国歌斉唱時の起立を拒否したことが原因で、昨季は全てのNFLチームが契約を躊躇して見送ったキャパニック。2011年のドラフト2巡目指名を受けて入団したサンフランシスコ・49ナーズを2013年のスーパーボウルに導いた実力の持ち主だ。

 高校生で94マイル(151キロ)の速球を投げ、2度のノーヒットノーランも達成。数多くの強豪大学から野球選手として奨学金を提示されたが、本人はアメフトのプレーを希望して、唯一アメフト選手として奨学金を提示したネバダ大学へ進学した。

 大学ではアメフトに専念して、野球をプレーしなかったにも関わらず、2009年のMLBドラフト43巡目でシカゴ・カブスが指名している。

高校時代に2度のノーヒットノーランを達成しているキャパニック(三尾圭撮影)
高校時代に2度のノーヒットノーランを達成しているキャパニック(三尾圭撮影)

* ジョニー・マンジール(フリーエージェント、QB)

 ハイズマン賞を手土産に、2014年のNFLドラフトでクリーブランド・ブラウンズから1巡目指名を受けたマンジール。NFLではフィールドの中でも外でもトラブル続きで、僅か2年で職を失った。

 高校時代からQBとして神童扱いされてきたマンジールは、高校では内野手として野球もプレー。大学では野球部のコーチからのラブコールにも首を縦に振らずに野球をプレーすることはなかったが、それでも2014年のMLBドラフトでサンディエゴ・パドレスが28巡目で指名をしている。

 現在はNFL復帰に向けて猛アピールしているマンジールだが、復帰の夢が叶わなかったときには野球に挑戦してはどうだろうか?

* カイル・ロング(シカゴ・ベアーズ、OL)

 ここまで紹介してきた選手は全員がQBで、QBが持つ身体能力の高さが証明された形だが、身長193センチ、体重143キロのロングはオフェンシブ・ラインマンながらも野球でも活躍してきた。

 2013年のNFLドラフトでベアーズから1巡目全体20位で指名されたロングは1年目から中心選手として活躍して、プロボウル(NFLのオールスター戦)にも新人の年から3年連続で選ばれた。

 NFLの殿堂入りを果たしているハウイー・ロングの息子であるカイルは父親譲りのアメフト・センスに恵まれ、野球よりもフットボールを選んだのは正解だったが、高校時代に自慢のパワーを野球のフィールドでも発揮。投げては50イニングで95三振を奪い、打者としても打率が5割を超えていた。そんなロングは高校を卒業した2008年のMLBドラフトでシカゴ・ホワイトソックスから23巡目で指名を受けている。

* エリック・デッカー(フリーエージェント、WR)

 昨季はテネシー・タイタンズでプレーして、現在はフリーエージェントのデッカーは大学時代に2年続けてMLBドラフトで指名を受けている。2008年にはミルウォーキー・ブリュワーズが39巡目で、翌09年にもミネソタ・ツインズが27巡目で指名。ミネソタ大学では左打ちの外野手として打率.324を記録して、メジャーリーグのスカウトは理想的なリードオフマンと評価していた。

 2010年にはNFLドラフトでデンバー・ブロンコスが3巡目で指名。メジャーのスカウトも高評価を与えたスピードを活かして、NFLでは1000レシービング・ヤード超えを3度記録している。

スピードが売り物のデッカーは外野手としての守備評価も高かった(三尾圭撮影)
スピードが売り物のデッカーは外野手としての守備評価も高かった(三尾圭撮影)

 ここに名前を挙げたのは一部のNFL選手で、この他にもMLBチームから2度もドラフト指名を受けたゴールデン・テイト(ライオンズ、WR)や、マイナーリーグで野球をプレーしたブランドン・ウィーデン(ヒューストン・テキサンズ、QB)シャック・トンプソン(カロライナ・パンサーズ、LB)などがいる。

 

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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