トヨタの「ものづくりは人づくり」の『人づくり』とは? 教育・学習の違いについて
トヨタには「モノづくりは人づくり」という考えがある。創業当初から人材育成に力を入れてきた。厚生労働省も人生100年時代に向けて「人づくり革命」を掲げ、人材開発に力を入れている。
このように「人づくり」「人材育成」「人材開発」など、いろいろな言葉が乱立している。しかし大事なのは、会社における教育と、従業員個人の学習意欲だ。
そこで今回は教育と学習の違いについて、知識と情報の違いについて解説する。最後には情報収集のポイントについても紹介する。ぜひ最後まで読んでもらいたい。
■教育と学習と勉強の違いとは?
「人づくり」「人材育成」「人材開発」といったスローガン的な言葉よりも、もっと身近な言葉の違いを正しく理解しよう。
教育と学習の違いを正しく理解していない人が、とても多い。学習と勉強の違いも分かるだろうか? 具体的な例を使って解説しよう。
教育は他者から指導を受けること。学習は自ら学んで習うことだ。
「義務教育」とはいっても「義務学習」とは言わない。「親の教育がなっていない」とは言っても、「親の学習がなっていない」とは言わない。
このように、
・教育は受動的
・学習は能動的
と覚えたらいい。とくにビジネスでは、ハッキリと分かれる。
教育制度がしっかりしている会社なのか。社員教育に熱心なのか。若い人が就職先を選ぶときに見極められる。だから優秀な人材を採用したいなら、必ず教育体系を充実させなければならない。
しかし教育に頼っているだけではダメだ。みずから学ぶ姿勢も大事。仕事で成果を出すためにも、会社の教育と自らの学習の両輪が不可欠だ。
ちなみに「学習」と「勉強」は同じような意味だが、強度が違う。
「受験勉強」「資格の勉強」とは言うが、「受験学習」「資格の学習」とは言わない。もちろん勉強のほうが強度が高い。
ここで大事なポイントをお伝えする。学習か勉強の違いはテストがあるかどうかだと私は考えている。効果を高めたいなら、社会人になっても学習ではなく「勉強」を強く意識しよう。
■押さえるべき知識と情報の違い
次に、知識と情報の違いについても正しく押さえておこう。
知識とは、体系的に整理されたノウハウ。情報とは、ある「現象」において収集された素材だ。私は調理における「レシピ」と「食材」と覚えるようにしている。肉じゃがにたとえると、
・知識=肉じゃがのレシピ
・情報=肉、じゃがいも、たまねぎ、醤油……等
こう考えれば、わかりやすいのではないか。
「マネジメントの知識」と言うが「マネジメントの情報」とは言わない。「経営の知識」と言うが「経営の情報」などと言わない。
多くのマネジャーに聞いてみたらいい。マネジメントの教育を受けずにマネジャーになっている人が大半だ。現場経験だけでは知識は身につかない。手に入るのは経験に基づく情報だけである。
だからこそ会社としてはしっかりと教育するべきだ。教育を受けたうえで、みずからも経験を積みながら学習していくことが基本(これが『経験学習』である)。会社が教育しないと、マネジャーはどのように知識を身につけたらいいか、わかりようがない。部下指導も、どうしたらいいかまるでわからないだろう。
■まとめ
知識習得は会社の教育で、みずからは情報収集に力を注ごう。
情報は「客観的」であり「事実」であることがポイントだ。だからビジネスで扱われる情報には「データ」が含まれていることが多い。信頼性、重要度を高めるうえで忘れてはならない要素だ。
このように、言葉の違いを正しく知ることで頭が整理できる。
「人づくり」「人材育成」「人材開発」といったスローガン的な表現ばかり使っていると、正しく伝わらない。最低限、教育と学習の違いぐらいは理解し、職場に浸透させていこう。そうでないと「人づくり」など、いつまで経ってもできないはずだ。
<参考記事>