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ラ・レアルとアトレティック。久保建英不在の中、漂うバスク・ダービーの香り。

森田泰史スポーツライター
バスク・ダービーでプレーする久保(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

ダービー・マッチを前に、どちらが優勢というのは存在しない。

今季のレアル・ソシエダを見ていて思うのは、判断が難しいということだ。これは「良い」のか、「悪い」のか。端的に言えば、悪くはない。だが良くもない。そういうゲームが、多いのである。

先日、このコラムで述べたように、ソシエダは確と構えて守ってくるチームに弱い。【4−4−1−1】のブロック、アンカー潰し、そういった対策を講じられると、打つ手を失ってしまう。

■インサイドハーフの動き

ソシエダは攻撃を改善すべきだ。第一に、注目したいのは攻撃時のインサイドハーフの動きである。

ヒントは、ある。先のコパ・デル・レイのラウンド32のマラガ戦で、それは見て取れた。

【4−4−2】でローブロック・ミドルブロックを組んでくるマラガに対して、ソシエダはインサイドハーフを動かして変化を起こそうとした。

左IHのミケル・メリーノが、内側のレーンを上がる。相手の右CBが引き付けられる。そのタイミングでアンデル・バレネチェアにボールを送れば、フリーでパスを受けられる。

左サイドで「アイソレーション」が成り立つ、好例だ。

■右落ちとビルドアップ

もうひとつ、インサイドハーフのムーブとして特徴的だったのは、ブライス・メンデスのプレーだ。

ソシエダは、アンカーのマルティン・スビメンディが徹底的にマークされると、苦しむ。では、どうするか。インサイドハーフ(右IH)のブライス・メンデスの「右落ち」で、一つの解決方法を示すことができる。

このインサイドハーフ・ロールが、ソシエダのビルドアップを助ける。ボールの出口が作られて、相手のプレッシングの的を外す事につながるのだ。

■ハーフスペースの使い方

ここまで、インサイドハーフの動きについて、語ってきた。その延長線上で、重要なのはハーフスペースの使い方だ。インサイドハーフのムーブに関しては記したので、次はウィングに言及する。

左WGのバレネチェア、右WGのアーセン・ザハリャンが内側に入る。そして、アイエン・ムニョスとアルバロ・オドリオソラの両サイドバックを押し上げる。

バレネチェアとザハリャンがハーフスペースを、ムニョスとオドリオソラが大外のレーンを使う。相手の守備陣が中央を固めれば、サイドが空いてくる。サイドに引っ張られたら、逆にハーフレーンに縦パスが差し込めるのだ。

(全2419文字)

■バスク・ダービーとアトレティックの分析

ソシエダに、少し、光が見えてきた。だがリーガエスパニョーラ第20節、控えるのはアトレティック・クルブとの一戦。バスク・ダービーである。

そのような流れで、ここからはアトレティックの分析に入りたい。

アトレティックは先日のセビージャ戦でエルネスト・バルベルデ監督が500試合指揮を達成。金字塔を打ち立てた。

第三次バルベルデ政権(2003―2005/2013―2017/2022―現在)で、アトレティックは複数の選手とシステムを使い分けてきた。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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