なぜバルサはダニ・オルモを選手登録できないのか?補強の失敗…問われるラポルタのマネジメント。
ある意味、話題を独占している。
2025年が、スタートした。スペインでは、コパ・デル・レイのベスト32の試合が各地で行われ、『格上』と『格下』が最も混在する大会でそれぞれのチームが鎬を削った。
だが話題をさらったのはポンテベドラ(実質4部)のマジョルカ(1部)撃破ではなかった。バルセロナの選手登録問題である。
■ダニ・オルモの選手登録問題
バルセロナは、バルバストロ(4部)に快勝した。しかしながら、この試合でダニ・オルモとパウ・ビクトールがプレーできなかった。選手登録が完了していなかったためだ。
特に、ダニ・オルモの選手登録ができていないというのは、ハンジ・フリック監督にとって打撃だった。今夏、実質的な唯一の補強選手だったからである。
バルセロナは、この夏にライプツィヒから移籍金固定額5500万ユーロ(約89億円)でダニ・オルモを獲得した。EURO2024でスペイン代表の主力として活躍したアタッカーを、バルセロナのカンテラ出身の選手を、引き入れた格好だった。
ただ、夏の段階で、一悶着あった。ダニ・オルモ獲得後、バルセロナは彼の選手登録をスムーズに行えなかったのだ。
そのタイミングで、幸か不幸か、バルセロナはアンドレアス・クリステンセンが負傷した。負傷で長期離脱した選手の代わりにダニ・オルモを登録する運びとなった。クリステンセンのサラリーの80パーセントを使いラ・リーガの規則に違反せず登録可能になった。かくして、ダニ・オルモはリーガ第3節のラージョ・バジェカーノ戦でデビューを飾った。
しかし、バルセロナのこの夏のダニ・オルモの選手登録は「一時的」なものだった。当然、クリステンセンが負傷から復帰すれば、その枠は埋まってしまう。ラ・リーガ側からは2024年12月31日までに、正式な書類を揃え、手続きを終えて、きちんとダニ・オルモの選手登録を済ませるようにバルセロナに勧告がなされていた。
■資金調達とルール
バルセロナは資金調達に動いた。新本拠地カンプ・ノウのVIP席を売却して、1億ユーロ(約160億円)の資金をつくった(第一段階で受け取るのは2800万ユーロ程度だと言われている)。これで、ラ・リーガの「1:1」ルールに戻り、選手登録ができるーー、はずだった。
しかしながら、中東の企業との交渉、またその後の入金には時間を要した。そして、タイムリミットだった2024年12月31日には間に合わず、ダニ・オルモ(+P・ビクトール)は登録未完了の選手になった。
もうひとつ、ポイントがある。
スペインでは、「1シーズンのうちに同じクラブで二度選手登録できない」というルールがある。つまり、今季、すでに一度バルセロナで選手登録を行なっているダニ・オルモが、もう一度、選手登録を行うというのはできないのだ。
今後、方法としては、ダニ・オルモが、選手登録をしないまま、バルセロナに残るというものがある。だが半年間、プレーしない、試合に出場しない、トレーニングだけという状況はダニ・オルモとしては受け入れ難いだろう。
あるいは、一旦、バルセロナとダニ・オルモが契約解除を行う、というのもある。すると、ダニ・オルモは無所属の選手になる。そして、半年後に再びバルセロナと契約するという流れだ。
しかしながら、都合良く、ダニ・オルモと半年間だけ契約を交わすというクラブが現れるとも思えない。ある種のジレンマが、ダニ・オルモに、バルセロナに、襲いかかっている。
「私は、この状況に満足していない。選手たちも、同じだ。(ジョアン・)ラポルタ会長とは話をした。しかし、そこでの会話は、プライベートなものなので明かさない」
「それぞれが、自分の仕事をしっかりやるべきだ。私はクラブを信頼している。この件に関係のある人たちが、自身の仕事をしてくれるはずだ。これ以上、私は何も言いたくない」
これはハンジ・フリック監督の言葉だ。
バルセロナは、スペインのスポーツ評議会(CSD)への上訴を決めている。そちらの判断次第で、再び事態が動く可能性はある。
前述の通り、ダニ・オルモは今シーズンのバルセロナの実質的な唯一の補強選手だ。その選手が、シーズン半ばに選手登録未完了→契約解除となれば、補強の失敗が叫ばれ、ラポルタ会長のマネジメントが問われるだろう。
本稿執筆時点、ダニ・オルモの再登録は完了していない。バルセロナが”ウルトラC“級のワザを使わない限り、状況は非常に厳しく見える。