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北朝鮮の新型小型短距離弾道ミサイル「火星11ラ」型が射程110km→240kmに増大

JSF軍事/生き物ライター
北朝鮮・労働新聞より「戦術弾道ミサイルの試射」。火星11ラの発射車両と標的の島

 5月18日、北朝鮮は「ミサイル総局が5月17日に朝鮮東海上(日本海上)で新たな誘導技術を導入した戦術弾道ミサイルの試射を行った」と発表しました。ミサイルの具体的な名称は未発表ですが、同時に発表された写真には新型小型短距離弾道ミサイル「火星砲-11ラ」型が写っていました。

※通称で砲を省略し「火星11ラ」と呼んでも構いませんが、しかし「火星11」とまで省略し過ぎてしまうと全く別のミサイル(火星11は旧式のトーチカUの模倣型)を指してしまうので注意してください。

北朝鮮・労働新聞より「戦術弾道ミサイルの試射」。火星11ラと推定される
北朝鮮・労働新聞より「戦術弾道ミサイルの試射」。火星11ラと推定される

※火星11ラと推定される短距離弾道ミサイル

北朝鮮・労働新聞より「戦術弾道ミサイルの試射」。火星11ラと推定される(拡大)
北朝鮮・労働新聞より「戦術弾道ミサイルの試射」。火星11ラと推定される(拡大)

火星11ラの射程が110km→240kmに増大

 火星11ラは2022年4月17日に初公開された小型の弾道ミサイルで、従来発表されてきた飛距離は110kmでした。ところが2024年5月17日の北朝鮮ミサイル発射を観測した韓国軍は300kmを飛行したと報告しており、射程が大幅に伸びています。北朝鮮は新型誘導技術の試験と称していますが、実際には射程延伸型の試験だった可能性が高いでしょう。

※追記:5日18日の北朝鮮公式発表写真からの発射位置と着弾位置の推定から、実際の飛行距離は約240kmと推定。

・発射位置推定:江原道の元山市の南の海岸(@ColinZwirko
・着弾位置推定:咸鏡北道の沿岸の無人島(@rockfish31

※発射位置推定はNKニュースの上級分析特派員コリン・ツヴィルコ氏

Google地図より火星11ラの日本海側の発射記録。説明書きは筆者
Google地図より火星11ラの日本海側の発射記録。説明書きは筆者

※着弾位置推定は筆者。無人島の名称は卵島(알섬、Al-som)

上:北朝鮮・労働新聞より「戦術弾道ミサイルの試射」の着弾位置、下:Google地図と一致
上:北朝鮮・労働新聞より「戦術弾道ミサイルの試射」の着弾位置、下:Google地図と一致

 この射程差の関係はアメリカのATACMSの初期型(弾頭590kg、射程165km)と後期型(弾頭210kg、射程300km)の関係によく似ています。火星11ラも弾頭重量を減らした代わりに射程を伸ばしていると考えられます。

 北朝鮮の火星11ラは大きさや飛行性能が、アメリカのATACMSや韓国のKTSSM(韓国名称ウレ、우레。雷の意味)と非常によく似ています。ただし技術的には火星11ラはATACMSのコピーではなく、ロシア製イスカンデルMを模倣して作った火星11カ(アメリカ軍コードネームKN-23)を小型化したミサイル形状の設計です。誘導操舵システムについても火星11ラには火星11カと同様にジェットベーンが装着されているのが確認されていますが、ATACMSやKTSSMにジェットベーンはありません。

 なお実は北朝鮮は新型小型短距離弾道ミサイルについて「火星砲-11ラ」型という正式名称を文書では公表していません。金正恩が視察した軍需工場の説明ボードに「화성포-11라」と書かれていたのがたまたま写っていた映像で確認されているのみです。判明したのは2023年3月28日の北朝鮮公式メディア発表になります。関連記事:北朝鮮のファサン31戦術核弾頭の量産とその影響

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火星11シリーズ

  • 화성-11・・・火星-11(KN-02)  ※ソ連製トーチカU模倣
  • 화성-11가・・・火星-11カ(KN-23) ※ロシア製イスカンデルM模倣
  • 화성포-11나・・・火星砲-11ナ(KN-24) ※火星11カの派生型
  • 화성포-11다・・・火星砲-11ダ ※火星11カの拡大型
  • 화성포-11라・・・火星砲-11ラ ※火星11カの縮小型
  • 화성포-11ㅅ・・・火星砲-11ㅅ ※火星11カの水中発射型

※KNナンバーはアメリカ軍コードネーム。

※火星11と火星11カ以降は技術的な繋がりが無い全く別のミサイルなのに火星11シリーズとなっているので注意。火星11カ以降を火星11と省略し過ぎると間違いになってしまう。

※朝鮮語の「カナダラ」は英語で「ABCD」や中国語で「甲乙丙丁」に相当する意味。ラ型はD型という意味になる。

北朝鮮ミサイル名称:火星と火星砲 

※北朝鮮はミサイルの命名基準を変更しており、火星と火星砲の呼称が混在した状態となっている。日米韓の報道では火星砲は火星と省略する場合が多い。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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