北朝鮮が初登場の新型ミサイルを公開。小型の短距離弾道ミサイル(核弾頭型)
4月17日、北朝鮮が突如として新型ミサイルを発表しました。金正恩が視察し「新型戦術誘導兵器の試験発射」を行ったとあります。発表された写真から発射機に4連装で搭載されていることが確認され、小型の短距離弾道ミサイルでした。説明文では核弾頭搭載用とされています。
既存の北朝鮮の短距離弾道ミサイルKN-23(北朝鮮版イスカンデル)やKN-24(北朝鮮版ATACMS)は2連装だったので、4連装の今回の「新型戦術誘導兵器」はかなり小型の短距離弾道ミサイルです。
発射時の噴煙ではっきりとは分かりませんが、「新型戦術誘導兵器」の4連装発射車両は6輪トラックのように見えます。(比較:KN-23は2連装で8輪トラック)
韓国軍の発表では北朝鮮が4月16日午後6時に東部の咸鏡南道・咸興から日本海の東に向けて2発の飛翔体を発射したとしています。着弾地点は北朝鮮の発表写真では無人島でした。韓国軍が観測した飛行性能は以下の通りです。
- 最大高度25km
- 水平距離110km
- 最高速度マッハ4以下
これは通常軌道の弾道飛行に近いものでした。つまり大きく滑空はしていません。
発射当時に韓国軍から発表されていなかったのは既存のロケット弾か何かと判定されて、弾道ミサイル扱いされていなかったからだと思われます。今回の「新型戦術誘導兵器」の飛行性能は300mmロケット弾KN-09の最大射程の半分程度の飛距離しか出ていません。
- 300mmロケット弾KN-09・・・射程200km、8連装6輪トラック
- 2022年「新型戦術誘導兵器」・・・射程110km、4連装6輪トラック
「新型戦術誘導兵器」の直径は300mmよりもっと太く600mmはありそうです。それでいて射程が300mmロケット弾KN-09の半分程度ということは、弾頭がかなり重いということです。
ただし重いといってもKN-09の弾頭に比べての話です。例えば本家アメリカ版ATACMS短距離弾道ミサイルの初期型である「MGM-140A Block I」は射程80マイル(128km)でクラスター弾頭の重量は1240ポンド(560kg)です。
北朝鮮の「新型戦術誘導兵器」が射程110kmならこれに近く、核弾頭は500kg前後まで軽量化の見込みが立っているということになります。
写真から確認できる仕様は以下の通りです。
- 4枚の操舵翼
- 4個のジェットベーン
- 形状はKN-24(北朝鮮版ATACMS)に近い
- 大きさは直径600mm前後で本家アメリカ版ATACMSに近い
おそらくこの形状と仕様なら滑空飛行が可能な機動式弾道ミサイルです。KN-24小型版と言えるでしょう。ただし4月16日に韓国軍が観測したデータでは通常の弾道飛行での試験でした。初めて発射した新型ミサイルの試験なので、先ずは簡単な飛行設定で試験を行ったのかもしれません。
【関連記事】北朝鮮のATACMS擬きはATACMSではない ※本家アメリカ版ATACMSにはジェットベーンが付いていない。
追記:発射場所と着弾位置(2022年4月18日22時32分修正)
- 発射場所:咸鏡南道・咸興市の麻田温泉リゾートの付近の海岸
- 着弾位置:咸鏡南道・利原郡の沖合いの無人島(난도、ナンド)
北朝鮮軍が何時も標的に使っている咸鏡北道の沖合いにある無人島(알섬、アルソム)とは、別の無人島になります。
- 朝鮮語で「卵」は난(ナン)または알(アル)
- 朝鮮語で「島」は도(ド)または섬(ソム)
つまり난도(ナンド)も알섬(アルソム)も同じ卵島という意味ですが、読み方が違います。卵島とは海鳥の産卵場から命名されているので、他にも朝鮮半島には卵島と呼ばれる島が複数あるようです。
【朝鮮語の卵いろいろ】
- 닭알(タルガル)・・・鶏卵。北朝鮮での正式な単語。
- 달걀(タルギャル)・・・鶏卵。韓国での正式な単語。
- 계란(ケラン)・・・鶏卵。日本経由の漢字由来で韓国で普及。
- 알(アル)・・・卵。全ての生き物の卵を含む。
- 난(ナン)・・・卵の漢字由来の란(ラン)の変化。