トルコ開発のバイラクタルTB3無人攻撃機が強襲揚陸艦アナドルに着艦成功、フラップとスポイラーを装備
トルコのバイカル社で開発中の艦上型無人攻撃機「バイラクタルTB3」の試作2号機(PT-2)がトルコ海軍の新型強襲揚陸艦「アナドル」から発艦し着艦にも成功しました。バイカル社の最高技術責任者(CTO)であるセルチュク・バイラクタル(Selçuk Bayraktar)氏がSNSで動画を公開しています。
バイラクタルTB3の着艦の動画
- バイラクタルTB3の発艦と着艦(着艦は上動画とは別視点)
- バイラクタルTB3の発艦と着艦(PV宣伝風にまとめた動画)
- バイラクタルTB3の発艦と着艦(自機視点での発着艦動画)
※バイラクタルTB3の発艦と着艦(PV宣伝風まとめYouTube版)
発艦は強襲揚陸艦のスキージャンプ台を用いた自走発進で、着艦はアレスティングワイヤーのような制動装置を使っておらず、そのまま滑り込んでいます。全通甲板からの艦上運用では発艦はそれほど困難ではありませんが着艦は難しく、これを見事に無人機で成功させています。
なおこれは試作機であり大型の光学センサーを装着していません。着艦は遠隔操作ではなく自動操縦で実施されています。
バイラクタルTB3のTB2からの変更点
- 衛星通信システムを搭載 (機首が大型化、作戦行動半径の飛躍的増大)
- 主脚を折り畳み式に変更(TB2は首脚のみ折り畳み式で主脚は固定式)
- 主翼を折り畳み式に変更(狭い艦上で駐機スペースを確保するため)
- 主翼にフラップを追加(高揚力装置:発着艦距離の短縮のため)
- 主翼にスポイラーを追加(スピードブレーキ:TB3試作2号機から)
基本型であるバイラクタルTB2は長い地上滑走路から運用するので、有人機と比べて機体が小さく軽く速度が遅く主翼が長い無人機ではフラップは必要ありませんでした。しかしTB3は強襲揚陸艦の短い飛行甲板から発着艦させるためにフラップを追加し、それだけではなくスポイラーまで追加しています。
※フラップ:高揚力装置。TB3に装着された物は一般的な構造の後縁フラップ。これを下げることで主翼のキャンバー(湾曲)を増やして揚力を増やす。
※スポイラー:スピードブレーキ。主翼の上面に板を起立させて空気の流れを乱す(スポイル)ことで抗力が増して、機首上げを行わずに速度と高度の両方を落とすことが可能になる。
着艦時に主翼上面のスポイラーを立てている
なおバイラクタルTB3へのスポイラー追加は2024年5月に初確認されたばかりです。試作1号機(PT-1)には装着されておらず、試作2号機(PT-2)から装着していたようです。
参考:バイラクタルTB3のスポイラー(2024年5月9日試験時)
- 主翼のフラップを下げている
- 主翼のスポイラーを立てている
バイカル社の2024年5月22日公開動画で5月9日に地上滑走路から試験飛行を行っているバイラクタルTB3の主翼にスポイラーがあることがよく分かります。ただし動画開始から20秒ごろの一瞬しか映っていません。
参考:20秒ごろにTB3のスポイラー(2024年5月9日試験時)
動画タイトル:BayraktarTB3 PT-1 36. ve 37. Test Uçuşu | BayraktarTB3 PT-2 7. ve 8. Test Uçuşu (バイラクタルTB3 PT-1 36回目と37回目の試験飛行|バイラクタルTB3 PT-2 7回目と8回目の試験飛行)
バイラクタルTB3の試作2号機(PT-2)の7回目の飛行試験でスポイラーを確認できます。
主翼(直線翼)
- エルロン(補助翼):機体を傾けて旋回させる
- フラップ(高揚力装置):離発着距離の短縮
- スポイラー(スピードブレーキ):機首上げせずに高度と速度を落とす
尾翼(逆V字型)
- エレベーター(昇降舵):機首の上げ下げ
- ラダー(方向舵):左右の首振り
※バイラクタルTB3の動翼は以上の種類がある。TB2はフラップやスポイラーは装備せず。
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※アメリカ海軍のX-47B計画は2013年に空母からの発着艦を成功させるも2016年に計画中止。その代替となるMQ-25スティングレイ計画は遅延しており未だ空母からの発着艦試験を行っていない。