インドが極超音速ミサイルの試射に成功、しかし発射筒の蓋が付いたまま上昇している?
11月16日にインドDRDO(国防研究開発機構)が開発中の長距離極超音速ミサイル「Long-Range Hypersonic Missile」の試射に成功したと、11月17日にラージナート・シン国防大臣が発表しました。オリッサ州沖のアブドゥル・カラム島から発射しており、LRHMの射程は最大1500km以上とされています。
※シン国防大臣は役職アカウント(RMO India)と個人アカウント(Rajnath Singh)の二つをXで使用。
※オリッサ州は2009年に英語表記がOrissaからOdishaに変更されているが、現地の公用語であるオリヤー語での発音に従うと、日本語のカタカナ表記はオリッサのままでもよい。
インド国防大臣のXでの役職アカウント「RMO India」で長距離極超音速ミサイルの試験発射動画が公開されています。しかし奇妙な様子が見えてしまい・・・
なぜか蓋が付いたまま上昇しています。事故でしょうか?
このような発射は見たことがありません。蓋ではなく、何らかの試験機材なのでしょうか? いやしかし、試験機材でこういった形状のものは聞いたことがありません。やはり蓋でしょう。蓋がミサイルの先端に刺さって引っ掛かったまま上昇しています。それでも試射自体は成功ということは、蓋は上手い具合に外れてくれたのでしょうか?
やはりキャニスター(発射筒)の蓋に見えます。
発射はコールドランチ、1段目のブースターは固体燃料推進剤、サステナーである2段目もおそらく固体燃料推進剤のロケットが付いています。2段目のミサイル本体にはエアインテイク(空気吸入孔)に該当する機構などは見えません。するとこれは極超音速巡航ミサイル(HCM)ではなく極超音速滑空体(HGV)です。通常のHGVは滑空弾頭には主推進システムは付きませんが、このミサイルの場合はサステナーの2段目ロケットと弾頭は一体化して分離しない仕様でしょう。
1段目ブースター+2段目ロケット(弾頭は2段目と分離しない一体型)
これは極超音速滑空ミサイルというよりは、滑空飛行を行える機動式の弾道ミサイルに近い兵器のように見えます。アメリカで開発中のSM-6艦対空ミサイルを改造した対地対艦攻撃型と構成はよく似ています。
やはり蓋のように見えます。
なおこのミサイルはもともと「LRAShM」という対艦兵器としてDRDOで計画されていた兵器を指すようです。LRAShM(Long Range Anti-Ship Missile、長距離対艦ミサイル)、形状が11月16日に試射した今回のミサイルと酷似しています。
11月16日の試射について17日のインド国防省のプレスリリースでは「この極超音速ミサイルは、軍のために1500キロを超える射程で様々なペイロードを運ぶように設計されている」とあり、対艦型だけでなく対地型も計画していると思われます。ただしこの発表文ではLRAShMという名称の記載はありません。なお試射は「高い精度で着弾した」としており、大きな問題は発生していなかったということになります。