バルセロナの「孤立化」させる攻撃スタイルとシャビの危うさ。
強いのか、弱いのか、分からない。
それが現在のバルセロナに対する私の率直な評価だ。巷では、シャビ・エルナンデス監督が就任したバルセロナを称賛する声が多いように思う。ただ、シャビ・バルサの危うさみたいなものを、ひしひしと感じるのも確かだ。
現在のバルセロナの矛盾――。まず、このチームは補強に頼り過ぎだ。それはつまり、個の能力に依存していることを意味する。補強で良い選手を獲得できれば、成績を挙げられる。しかし、そうでなければ、チャンピオンズリーグあるいはヨーロッパリーグでも、リーガエスパニョーラでも、タイトルから見離される。そういったチームビルディングなのだ。
今冬の移籍市場では、フェラン・トーレス、ピエール・エメリク・オーバメヤン、ダニ・アウベス、アダマ・トラオレを獲得した。確かに、彼らは活躍している。「オーバは天からの贈り物だった」とシャビ監督が語るように、とりわけオーバメヤンに関しては15試合10得点と爆発している。
一方、加入当初こそインパクトを残したが、パフォーマンスが下降線を辿っているのがアダマである。
だが、これを選手個人の責任にして終わらせてはいけない。そこを分析することで、シャビ・バルサの欠陥が明らかになる。
■孤立化の攻撃スタイル
バルセロナの指揮官ポストに就いたシャビ監督は、ウィングに突破力のある選手を欲していた。エズ・アブデ、イリアス・アコマック、フェラン・ジュグラといったカンテラーノを試したが、納得できずにアダマを半年レンタル(+3000万ユーロの買取オプション)で確保した。
アダマ、そしてウスマン・デンベレがシャビ監督の右WGのファーストオプションになった。
シャビ監督が戦術として落とし込んだのは彼らの孤立化(アイソレーション)である。
アダマやデンベレを右サイドにワイドに張らせ、シンプルに突破を促す。この場所で意図的に1対1を作り出して、そこで剥がして攻撃時のオーバーナンバーを手にする。それがシャビ監督の狙いだった。
シャビ監督の狙いは当たった。例えば、アトレティコ・マドリー戦(4−2)では、アダマが対峙したマリオ・エルモソを幾度となく抜き去りチャンスを演出した。鮮烈な印象を与え、右サイドの攻撃を活性化した。
だが対戦相手は徐々に「アダマ対策」をするようになる。「1対2」をつくり、突破を許さないようにした。デンベレに対しても同様で、先の敗戦したフランクフルト戦ではデンベレに2枚から3枚のマークがつけられていた。
この時、シャビ監督は何らかのアクションを起こさなければいけない。
具体的に論じよう。アダマやデンベレの突破は止められている。しかし一方で、彼らは相手を2人から3人引き付けているとも言える。
■孤立と密集と
右WGを「孤立化」させ、次の段階で「密集」が生まれる。それを含蓄した上で、空いたスペースを使う。そのような駆け引きが、攻撃でなされるべきだ。
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