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デ・ブライネの「WG化」とレアルの嵌められたビルドアップの顛末。

森田泰史スポーツライター
先制点を記録したデ・ブライネ(写真:ロイター/アフロ)

激戦必至のゲームだった。

今季のチャンピオンズリーグ準決勝で、レアル・マドリーとマンチェスター・シティが激突した。シティのホームで行われたファーストレグでは、シティが4−3で勝利を収めている。

だが、結果はまだ分からない。マドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウでのセカンドレグが残されている。2021−22シーズン、パリ・サンジェルマン、チェルシーといったチームが、“ベルナベウの魔法の夜”を体験した。シティにとって、1点のアドバンテージは決して安心できるものではないだろう。

■サプライズ起用とビルドアップ

重要な一戦を前に、両者は万全な状態ではなかった。ジョアン・カンセロ(出場停止)、カイル・ウォーカー(負傷)、カゼミーロ(負傷)が欠場。ジョン・ストーンズ、ダビド・アラバも負傷明けでコンディションが良くなかった。

注目されたのはシティのサイドバックだ。選ばれたのはオレクサンダー・ジンチェンコとストーンズだった。先述の通り、負傷明けのストーンズの起用はある種のリスクであった。だがヴィニシウス・ジュニオールをストップするために、ストーンズ以外の選手を使うのは、それ以上のリスクがあるとペップ・グアルディオラ監督が判断したのだろう。

また、“サプライズ起用”だったのはガブリエウ・ジェズスのCF配置である。

ただ、これは当たった。

マドリーは、チームとしてオーガナイズされたビルドアップの形を有しているチームではない。ビルドアップにおいては、個人の能力に頼る部分が大きい。アラバ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチらがそこに深く関与する。

裏を返せば、対戦相手としては、そこを封じれば勝機が見えてくる。グアルディオラ監督のジェズス起用というのは、まさにその点だった。前線からのプレッシングとハードワークというのは、ジェズスの特徴であるからだ。

ジェズス起用のメリットはそれだけではなかった。シティは攻撃時にインサイドハーフのケヴィン・デ・ブライネとベルナルド・シウバがポジションを入れ替えながらボールを前進させた。周囲との連携力も高いジェズスが、マドリーのCB(アラバ&エデル・ミリトン)を釣り出しながら、巧みに中盤とコンビネーションした。

思惑通りに、シティは2点を先行する。最初の30分でいえば、彼らは完璧だった。

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■マドリーの配置換え

2点のビハインドで、苦しくなったのはマドリーだ。カルロ・アンチェロッティ監督が動き、モドリッチのポジションを変える。前目の位置を取らせるようにした。フェデリコ・バルベルデとクロースがダブルボランチになり、モドリッチがトップ下になる。マドリーの1点目のシーンでは、高い位置でモドリッチがリャド・マフレズにプレスをかけ、ボールを拾ったフェルラン・メンディのクロスからカリム・ベンゼマの得点が生まれている。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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