国民がアホで終わるか意地を見せるかの総選挙
フーテン老人世直し録(119)
極月朔日
いよいよ明日総選挙が公示される。この選挙の最大の注目点は何か。それは投票率である。解散に打って出た安倍総理はそこに最大の関心を払っている筈だ。
投票率が高くなることを願っているのではない。投票率が前回より低くなることを願っているのである。なぜなら安倍政権は前回の総選挙が戦後最低の投票率になった中から生まれた。そしてそれが大量議席をもたらしたことから今回も投票率を下げる事で権力基盤を強化しようとしている。
前回の総選挙の得票率は59.32%と戦後最低だった。その結果、自民党は民主党に政権交代を許した09年の選挙より小選挙区で166万票、比例区で219万票も得票数を減らしたが、小選挙区で38議席増の237議席、比例区で2議席増の57議席を獲得して衆議院で5分の3を占める巨大勢力となった。
これが今も続く安倍政権のパワーの源泉である。しかし全有権者に占める自民党の絶対得票率は小選挙区で24%、比例区で16%に過ぎない。つまり自民党を支持した国民は4人に1人以下であったにもかかわらず、安倍政権は何でもやれる力を獲得した。だから今回も同じ状況を創りだし、権力を盤石にしようとするのである。
前回よりさらに低い投票率にするため、安倍総理はまず何のための解散かを分からなくした。メディアが解散の大義がないと批判すれば国民は投票に行く気がしなくなる。またあっという間の解散で野党がバラバラのままだから政権交代が起きる可能性はないと御用評論家に喧伝させれば、国民の選挙に対する熱は冷めていく。
安倍政権がそう考えるのは、国民をアホだと思っている意識が根底にある。アホな国民に政治をかき回されてはたまらない。アホの熱狂から政権交代が起きたと苦々しく思っているのである。昔、森嘉朗元総理が「有権者は寝ていてくれれば良い」と発言した事があるが、同じ事を安倍総理も考えている。投票率が下がれば固い組織票を持つ自公に有利になるから、アホな国民は投票などせずに寝ていてもらいたいのである。
だから年末の忙しい時期に訳の分からぬ選挙を仕掛けた。それを国民はどう受け止めれば良いのか。何が何だか分からないから投票には行かないのか。それとも何が何だか分からない選挙を仕掛けられたのを国民に対する挑戦と受け止めるのか。そのどちらかである。
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