狂いが出はじめた安倍シナリオ
フーテン老人世直し録(123)
極月某日
衆議院選挙を受けた特別国会で、第97代総理大臣に安倍晋三氏が選出され、第三次安倍政権が発足した。メディアは安倍自民党の選挙大勝をしきりに宣伝するが、国民の間には選挙によって生み出される晴れやかさがない。むしろ選挙結果に対するもやもや感が残っているように見える。
昔、フーテンは田中角栄氏から「選挙は煙突だ」と聞いた事がある。「国民の間に不満が溜まりもやもやした気分が社会に蔓延する時が政治にとっての危機だ」と角栄氏は言った。もやもやを吹き飛ばすには「煙突」が必要になる。それが戦前は「大命降下」だった。「大命降下」で総理が変われば国民の気分は一新され、社会に蔓延した不満が煙突から立ち上る煙のように発散されたと言うのである。
そして「戦後の『煙突』は選挙だ」と角栄氏は言った。「選挙をすればどんなに不満が溜まっていても国民の気分はさーっと一新される」と言う。しかし今回の選挙は全く「煙突」にならなかったとフーテンは思う。むしろ国民のもやもや感が残った。なぜなら国民は意味の分からぬ解散を仕掛けられたからである。
そもそも衆議院で3分の2を持つ与党勢力は国会運営上何でもできる。ただ憲法改正だけは参議院の3分の2の議席も必要で、現在の与党はそこまで至っていない。従って憲法を含めて何でもできる状態にするには参議院で3分の2を確保する必要がある。
ところが安倍総理は3分の2の議席を持ちながら衆議院を解散して再び3分の2の議席を得た。それが再来年の参議院選挙で3分の2を確保するために有利に働くかと言えば疑問である。むしろ衆議院で「勝たせ過ぎた」と国民に思わせれば、参議院選挙でバランスを取ろうとなるのが普通である。なぜ参議院選挙のハードルを上げるような選挙をやったのか。
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