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東京でさくら開花も今週末は東日本太平洋側から西日本では雨で花冷え 花見の季節は来週から

饒村曜気象予報士
お花見のイメージ(写真:アフロ)

東京でさくらの開花

 東京でさくらが3月14日に開花しました。

 東京のさくらの標本木がある靖国神社で、11輪の花が開き、開花の基準である「5~6輪以上」という条件を満たしたからです(前日は4輪の花)。

 気象庁の「生物季節観測指針(令和3年(2021年)1月改正)」では、さくらの開花観測の定義が「標本木に5~6輪の花が咲いた日を開花日とする。なお、胴咲き(枝ではなく幹や根から咲く)による開花は、通常の開花とは異なるプロセスによると考えられることから、5~6輪に含めない。」となっています。

 なお、靖国神社でさくらの観測が行われているのは、さくらの開花予報を始めた当時の調査で、東京の各地のさくらの名所の開花の平均に近いのが靖国神社であったということを聞いたことがあります。

 統計のある昭和28年(1953年)以降で、令和2年(2020年)、令和3年(2021年)と並んで、最早タイ記録です。

 東京でのさくらの開花は早まる傾向にあり、昭和28年(1953年)~平成2年(1990年)の38年間では、一番早い開花は3月20日、一番遅い開花は4月11日で、4月の開花が13回(約34パーセント)もありました。

 それが、平成3年(1991年)から今年までの33年間では、4月の開花はなく、3月中旬の開花が9回(約27パーセント)もあります(図1)。

図1 東京のさくらの開花日(昭和28年(1953年)~平成2年(1990年)と、平成3年(1991年)~令和5年(2023年))
図1 東京のさくらの開花日(昭和28年(1953年)~平成2年(1990年)と、平成3年(1991年)~令和5年(2023年))

 4月初めの入学式の頃には、さくらが咲いていた時代から、さくらが散っている時代へ変わっています。

 むしろ、さくらは3月の卒業式のものになりそうです。

 令和5年(2023年)の東京でのさくらの開花は、南西諸島を除くと、全国トップをきっての開花でした。

 さくらの開花競争は、気象庁が定めている標本木と呼ばれる特定の「さくら」での競争です。

 現在も観測が行われている地点について、昭和28年(1953年)から令和4年(2022年)の70年間にトップとなった回数を調べると、高知がダントツとなっています(表1)。

表1 さくら開花のトップ回数(沖縄・奄美を除く、複数の地点数があるので合計は70回より多い)
表1 さくら開花のトップ回数(沖縄・奄美を除く、複数の地点数があるので合計は70回より多い)

 平成に入ると、鹿児島や高知など温暖な地方が減り、都市化の影響も考えられる東京が増えており、令和5年(2023年)は東京がトップとなりました。

 これは、鹿児島のように温暖な地方では、強い寒気にさらされることがないので、休眠打破と呼ばれる寒さのあとに起きる開花の加速がおきないためと考えられます。

 地球温暖化が進むと、現在のさくらの開花が早い地方では強い寒気にさらされることがなくなり、開花の加速がなくなって、東京がトップ争いの常連になるかもしれません。

さくらの開花予想

 気象庁による「さくらの開花予想」の発表は、昭和26年(1951年)に関東地方を、昭和30年(1955年)からは全国(沖縄・奄美地方を除く)を対象に始まり、平成21年(2009年)まで半世紀以上続きました。

 国全体の行政事務の見直しのなかで、さくらの開花や満開などについての気候に関連する観測は、地球温暖化対策など国の業務と関連することから気象庁が継続して行うこととなっていますが、さくらの開花予想は防災業務を分担している気象庁の業務にはなじまないなどの理由からの廃止となっています。

 しかし、国民からの需要がなくなったわけではありません。国民からの需要に対しては、日本気象協会、ウェザーニューズ社、ウェザーマップ社などの民間気象会社等がさくらの開花予報を行っています。

 民間気象会社等によって、対象とするさくらの木が違ったり、予報を発表する時期が違ったりするので、簡単には比較できないのですが、ウェザーマップの予報で図2のようになっています。

図2 さくらの開花前線(ウェザーマップによる)
図2 さくらの開花前線(ウェザーマップによる)

 これによると、東京で3月14日に開花した後、今週は各地で平年より早くさくらが開花しそうです(表2)。

【追記(3月15日16時)】

 横浜地方気象台は、3月15日14時過ぎに、横浜でさくらが開花したと発表しました。横浜も、東京と同じく、統計開始以来、最早タイの記録でした。

表2 全国のさくら(ソメイヨシノ)の開花予想
表2 全国のさくら(ソメイヨシノ)の開花予想

 平年との差でいうと、西日本より東日本の方が特に早く咲くという予報です。

寒い、寒いと言っているうちに花見の季節がすぐそこまでやってきました。

今週末の雨と花冷え

 各地の週間天気予報をみると、週半ばは西日本から東日本は概ね晴れて気温が高い日が続き、さくら開花となるところもある見込みです(図3)。

図3 各地の週間天気予報(数字は最高気温)
図3 各地の週間天気予報(数字は最高気温)

 しかし、週末は低気圧の通過でほぼ全国的に雨となり、寒気が南下して花冷えとなる見込みです(図4)。

図4 専門家向け予想天気図(左が3月17日21時、右が18日21時で、ともに陰影はまとまった雨の領域)
図4 専門家向け予想天気図(左が3月17日21時、右が18日21時で、ともに陰影はまとまった雨の領域)

 ただ、花冷えといっても、平年並みの気温で、しかも一時的です。

 さくらの開花から花芽の5割が花開いた状態が「五分咲き」ですが、8割が花開いた状態を「八分咲き」とはいわずに「満開」としています。

 「八分咲き」を満開としているのは、最初に開花した花びらが散り始めることや、さくらが一番きれいに見える状態が「八分咲き」であることによるとされています。

 平年値でみると、開花から満開までの期間は、九州では10日前後、近畿・中国・四国では8日前後、東海・関東は7日前後、北陸・東北は5日前後、北海道では4日前後と北に行くほど期間が短くなります。

 一般的に、気温が低いと桜の開花から満開までの期間が長くなります。

 平年より気温が高く推移する年は、早く満開となり散ってしまいますので、さくらを楽しむ期間が短くなり、逆に平年より気温が低い年はさくらを楽しむ期間が長くなります。

 今年は、気温が高めに経過しそうですので、お花見は計画的に。

 ウェザーマップのさくら満開予想日によると、東京では3月21日となっています(図5)。

図5 東京のさくら見頃予報
図5 東京のさくら見頃予報

 そして、見頃は3月20日から3月27日となっています。

 来週は、花見の季節です。

図1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図2、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁ホームページ。

表1、表2の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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