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動きの遅い台風は熱帯低気圧に変わっても雨に警戒は変わらない、しかも黒潮の真上の台風25号

饒村曜気象予報士
フィリピンのルソン島付近の台風25号とその東の24号、西の23号(11月14日1

台風25号の進路予報

 フィリピンの東で非常に強い勢力まで発達した台風25号は、ルソン島北部に上陸した影響もあり、現在は強い勢力でバシー海峡を北上中です(タイトル画像)。

 台風25号は、台湾に接近するにつれ速度を落とし、沖縄県先島諸島に接近する見込みです(図1)。

図1 台風25号の進路予報と海面水温(11月14日21時)
図1 台風25号の進路予報と海面水温(11月14日21時)

 このため、台風による雨が長時間続くことになりますので、総雨量が大きくなり、大災害発生の懸念があります。

 ただ、台風25号の予報円が非常に大きく、予報が難しい台風であることを示していますので、最新の台風情報の入手に努めてください。

 台風が発達する目安の海面水温は27度と言われていますが、台風25号が今週末に進む海域は27度以下です。また、台湾の山脈の影響もあり、最大風速が次第に弱まり、週明けには熱帯低気圧に変わる見込みです。

 海水温の鉛直分布から分かるように、海は下層の冷たい海水の上に、暖かい海水が載っている構造をしています(図2)。

図2 冬季(b)と夏季(a)の水温鉛直分布の違い
図2 冬季(b)と夏季(a)の水温鉛直分布の違い

 台風の強い風により海面での蒸発が盛んになることで海面から熱が奪われること、強い風により海面下の温かい海水と海面下冷たい海水がかき混ぜる効果によって、海面水温が低下します。加えて、台風のように反時計回りの風が吹くときには、中心付近から外向きに海水が移動します。すると、移動した海水を補うように、深いところから海面よりも冷たい水が湧き上がってきます。

 こうして、台風周辺の海面水温が下がり、台風が衰弱するのですが、黒潮は、ある程度の深さまで海水温が高なっています。このため、台風が黒潮の上にあるときは、他の海域より海面水温の低下は小さく、台風は一気に弱まわらないということが経験的に言われています。

 筆者は、昔、気象庁予報課で台風予報を担当していましたが、その時にも、「黒潮の上は要注意」ということが言われていました。

台風24号の進路予報

 台風25号の進路予報の難しさの要因に、台風25号の後を追うように発達しながら西進している台風24号の影響もあります(図3)。

図3 台風24号と台風25号の進路予報(11月14日21時)
図3 台風24号と台風25号の進路予報(11月14日21時)

 フィリピンの東の台風24号は、海面水温が29度から30度という海域を西進することから、非常に強い台風に発達する見込みです。

 台風24号は、台風25号より速い速度で西進していますので、台風25号との距離はどんどん近くなる見込みです。

 11月17日には、「藤原の効果(中央気象台長となった藤原咲平が研究した2つの渦巻きの相互作用)」によって複雑な動きをするとされる1000キロ以下となりますので、予報が変わる可能性があります。

 今のところ、台風24号がルソン島を横断して南シナ海に入るまでは、台風25号および台風25号から変わった熱帯低気圧は足止めされる(動きが遅くなる)という予報です。

 最新の台風25号や24号の情報入手に努め、警戒してください。

タイトル画像、図3の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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