「被災者思うと食べ物廃棄は切ない。みな言ってる」西日本豪雨被災地コンビニオーナーが捨てた食べ物の写真
西日本豪雨の被災地では、家を失ったため、酷暑の中、避難所で暮らしている人がいる。自衛隊や民間の尽力により、被災地には食料が運ばれ、営業を再開したスーパーもある。だが、非常時の今も、販売期限など、食品業界の商慣習「3分の1ルール」が足枷になり、食品の廃棄(食品ロス)が起きている。
西日本豪雨の被災地で大手コンビニエンスストア加盟店を営むオーナーが、災害発災(2018年7月6日)から10日以上経った、7月16日と7月17日に捨てた食べ物の写真を見せてくれた。個人名や店舗などの個人情報が特定されないよう、カラー写真は白黒加工してご紹介する。
上の写真では、写真右手、3つのカゴに、おにぎりが40〜50個ほどだろうか、山のように積み上がっている様子が見える。一番上のカゴにはカレーライスなどの弁当類が3つ、左手のカゴには菓子パン類などが詰まっている。
また、下の写真では、食パン1斤(きん)、菓子パンなどが見える。
大手小売幹部「保険に入ってるから捨てても痛くもかゆくもない」
大手小売の幹部に話を聞くことができた。
幹部が話している通り、保険会社各社は、次のような、小売業に特化した保険商品を準備している。
日本商工会議所のサイトにも、小売業向け保険制度の説明があった。
提言:災害時などの非常時には消費期限・賞味期限のずっと手前にある「販売期限」で食品を捨てずに活用することはできないか
西日本豪雨被災地でコンビニを営むオーナーに話を聞き、消費期限や賞味期限のずっと手前にある「販売期限」を、せめて非常時には緩和できないのか、提言する記事を書いたところ、多くの方に関心を持って読んで頂いた。
「廃棄1時間前に入ってきたパン、ほとんど捨てた」食料が運ばれても西日本豪雨被災地のコンビニが嘆く理由
コンビニオーナーは
と話していた。
記事の提言「販売期限を緩和する」に対して、「酷暑で夏だから難しい」というご意見も頂いた。確かにその通り。だが、筆者は、今回のことだけ言っているのではない。この先、来年も再来年も3年先も、自然災害は起きるだろう。東日本大震災は3月だったし、阪神・淡路大震災は1月だった。災害はいつ起こるかわからない。冬かもしれないし、秋かもしれない。今回だけ、目先のことだけではなく、将来的に考えて、食べ物を最大限に消費できる仕組みを考える必要があるのではないか。その一つが「販売期限を緩和(食料が不足する非常時は撤廃)し、消費期限・賞味期限ギリギリまで販売できるようにする」である。
単なる商慣習「3分の1ルール」で年間1,200億円以上のロス発生
日本には、法律ではない、食品業界の商慣習である「3分の1ルール」がある。賞味期限の手前に「販売期限」があるので、販売期限がきたら、商品棚から撤去される。そのもっと手前には「納品期限」があり、納品期限を過ぎてしまうと、スーパーやコンビニなどの小売は、メーカーからの納品を受け付けない。販売期間が短くなるし、フレッシュなものが売れなくなるからだ。
この3分の1ルールにより、年間1,200億円以上のロスが出ており、これを緩和する動きが大手企業をはじめとして続いているが、日本全体にはまだまだ普及していない。
「非常時だから仕方がない」で済む問題か
このような記事を書くと「非常時だから仕方ない」「通常の時が大事」という意見を頂くことがある。だが、通常の時にコンビニオーナー20名ほどを取材させて頂いたが、この写真と同じか、これ以上、廃棄は出ている。なにしろ売価(売値)で1ヶ月あたり60万円出ているという店舗も多いのだ。「非常時だから仕方ない」で済む問題だろうか。常時も非常時も、信じられないほど捨てているのだ。
「値下げしたくてもできない・・・」コンビニオーナーが弁当を見切り販売できない理由
いつまで捨て続けるのか
筆者は2011年の東日本大震災の時、食品企業の社員として被災地に食料支援に行き、食の分配の不均衡や、過剰な平等主義による食の無駄を見たのがきっかけで、会社を辞め、食品ロスを削減する取り組みを始めた。1995年の阪神淡路大震災の教訓が、2011年の東日本大震災には生かされた。
東日本大震災から7年経った。熊本地震の時にもその教訓は生かされ、今回の豪雨では、熊本地震の教訓が生かされて、被災地に食料が運ばれた。それは評価できる。だが、こんな時に、杓子定規に「販売期限」にこだわり、コンビニのレジを通さないで廃棄する意味はあるのだろうか。企業は、捨てても保険が適用されるから腹は痛まない。
「金を払ってるんだから残そうがこっちの勝手」というのは、飲食店で食べ物を残す人の言い分だ。でも金を払ってさえいれば、何をしてもいいのだろうか。いつまで食べ物を捨て続けるのだろう。
参考記事: