「廃棄1時間前に入ってきたパン、ほとんど捨てた」食料が運ばれても西日本豪雨被災地のコンビニが嘆く理由
大手スーパー・コンビニ7法人は災害対策基本法に基づく指定公共機関に指定されている
2018年7月6日に大雨特別警報が出され、全国的に豪雨となった。特に被害の大きい西日本豪雨の被災地では、災害派遣された自衛隊員27名が、7月17日までに熱中症やその疑いがあると診断されるほどの酷暑が続いている(朝日新聞 2018年7月17日付より)。
大手スーパーやコンビニなど7法人は、2017年6月27日付で災害対策基本法に基づく指定公共機関に指定された。経済産業省の公式サイトによれば、指定した理由として
と説明されている。これを元に、被災地のコンビニやスーパーに自衛隊が食料を運んだ事例もあるし、通常と同様、民間のトラックが運んでいるケースもある。
西日本豪雨被災地のコンビニの実態は・・・
インターネット上では、熊本地震の教訓を受けてのこのような対応を評価する声がある。
では、実際に西日本豪雨の被災地のコンビニは、通常通りに食料品がまわって消費されているのだろうか。
今回、西日本豪雨の被災地で大手コンビニ加盟店を営む関係者に、災害当日から7月17日までの実態を聴く機会を得ることができた。
発災(災害発生)直後は物流が途絶え、入荷がストップする。これは過去の災害時も同じような状況だった。
「廃棄時刻(販売期限)1時間前に入ってきたパン、ほとんど捨てた」
コンビニでは「廃棄時間(時刻)」などと呼ばれる販売期限がある。これは賞味期限や消費期限の手前に設定されており、弁当などだと消費期限の手前2時間ぐらいという企業が多いようだ。
スーパーでもこのような「販売期限」がある。食品業界の商慣習である「3分の1ルール」の一環だ。賞味期限全体を3つに均等に分ける。
最初の3分の1が納品期限。メーカーは小売店(スーパー・コンビニ)に納品する。
次の3分の1が販売期限。小売店は、ここまでに売り切る。過ぎたら、返品か廃棄。
この3分の1ルールで年間1,200億円を超えるロスが生じている。国や業界も、これを緩和してロス削減に動いているが、100%完璧ではない。
コンビニの話を聞いてみる。
普段は問題なく使える高速道路をトラックが使うことができず、下の道を通ると、時間がかかって、配送が遅れてしまうらしい。
「いくら本部が持つといっても被災者のことを考えると捨てるのはせつない・・・」
災害時なので、お弁当とおにぎりの廃棄分については、全部、大手コンビニ本部が負担するとのこと。
弁当は、消費期限が短い。販売期限は、さらにその手前にあり、それを過ぎるとレジを通らないようにしているコンビニもある。だが、消費期限を延ばし、2〜3日持つようにしたタイプの弁当は売れているとのこと。
提言:せめて災害時は消費期限・賞味期限ギリギリまで販売できないか
美味しさの目安である賞味期限と異なり、消費期限表示は、日持ちが5日以内と短い弁当などの食品に表示される。今は夏場だから食中毒も起きやすく、それを過ぎても食べようとは言わない。だが、その手前にはだかる「販売期限」について、せめて非常時には臨機応変に対応し、消費期限ギリギリまで販売できるようにはできないものだろうか。
今回の豪雨は夏に起こったので食中毒のリスクがあるが、過去の災害を見ると、阪神・淡路大震災は1995年1月、東日本大震災は2011年3月と、気温の低い時期に起きている。
トラックが遅れて着いたからといって、トラックの運転手が悪いのではなく、災害のために道路状況が通常時とは違っているのが原因である。誰が悪いのでもない。食品業界の商慣習である「販売期限」を、災害時などに緩和すれば、災害時の食品ロスは少なくなるはずだ。
京都市は、2017年11月から12月まで、販売期限で棚から撤去するのでなく、賞味期限ギリギリまで販売する実証実験を、スーパーの平和堂とイズミヤの5店舗で行なった。その結果、食品ロスが減り、売上が上がったという。
自然災害は避けることができない。日常はもちろん、食品の不足する非常時には柔軟で臨機応変な対応をしていきたい。
参考情報:
熊本地震から2年 3.11の支援の経験から食品ロス削減の観点も含め、食の支援で必要と考える10ヶ条
「災害対策基本法」に基づく指定公共機関に指定されました~被災地への支援物資の迅速な供給が期待されます~(経済産業省 2017年6月27日発表 ニュースリリース)