フランス、学生に1ユーロ(127円)の食事を1日2回提供。雨の夜に長い行列。心のケアのシステムも。
コロナ禍のせいで、アルバイトが出来なくなった、親の家計が苦しくなったーーなどの理由で、困窮する学生が増えている。
そんななか、フランスのマクロン大統領は、学生に1日2回まで、昼食と夕食を1ユーロ(127円)で、学食「Rest-U」で提供する政策を実行した。
留学生も入れて約270万人の学生が対象になる。
コロナ対策のため、お持ち帰りの食事を袋に入れて渡してくれる。
今までは、財政難のために奨学金を利用している学生のみが、1日1回1ユーロ食が提供されていたのを、拡充した形だ。
フランスの学食ではたいてい、前菜、メイン、付け合わせ2種類、デザートを選ぶようになっている。値段は通常だと3ユーロ代である(昨年度は3.3ユーロ)。
1ユーロ食は、上記写真のように、通常の形に近くて自由に選べるところもあれば、かなり選択が限定されているところもある。
また、集まる人数も場所によって異なる。パリの学食では、雨が降る寒い夜なのに、長い長い列ができていた。こういう事態となると首都は辛い。学生の現状がわかった今、さらなる対策が打たれることだろう。
大学生の訴え
1月20日午後には、何百人かの学生がデモをして「大学を開けてほしい」「私たちは忘れられている」と訴えた。
最大の学生組合UNEFが、このデモを企画した。パリだけではなく、フランスの地方都市でも同時にデモが行われた。
通常の学生デモに比べれば控えめだが、思いつめて自殺してしまうより、こうして外に出て自分の主張をするほうがずっと良いと思う。若者は本当にかわいそうだ。
フランスは現在、18時以降の外出禁止令が出ているが、大学は、ほぼ全面的にリモート授業になっている。
「劇場、美術館、本屋の現状の話は多い。でも、未来を代表する私たちは話題なっていないという印象を持っている」
「私のクラスは18人しかいないのに、なぜリモートなの」
「40人いるけど、半々ずつ出席させればいいのに」
「心も体もくたくたです」
「留学生は特に孤立して、壊れていく」
「先生方はできることをやってくれるけど・・・連絡すれば返事が来るだけ」
「若者が集まってウイルスを伝播させているという報道ばかりで、怒ってます」
「大学との接点がほとんどない。いつも15平米のアパートに閉じこもっている」
彼らの声は、切実だ。
以下のツイートは、リヨンでのデモの模様だ。
翌日の1月21日、マクロン大統領は、パリ郊外のパリ・サクレー大学の学生たちと対話をした。そこで、学食や心理相談の新たな措置を発表して説明した(ツイート下部の4枚の写真)。
政府は、学生が週1回だけでも大学に通えるような措置を望んでいたが、イギリスからの変異株問題で、後期もすべてリモート授業にならざるをえないと結論付けている。
心のケアも
また、意気消沈する学生が、心理学者に相談し、フォローアップのケアを受けられるようにするために、「心理学チェック(Le chèque psy)」を作成するとも発表した。
2月1日から、希望するすべての学生が無料で利用できるようにする。
「助けが必要なすべての若者が、ずっと簡単に、ケア、つまり専門家、心理学者、精神科医にアクセスできるようにする必要があります」と、大統領は学生との対話中で説明した。
学生の連帯
フランスは、平等思想が大変強い国だが、その精神がもっとも発揮されているのが、学校(と医療)だと思う。
フランスでは8割が国立大学だが、年間の学費は170ユーロ(約2万2000円)である。それでも、困窮している学生(特に留学生が多い)には奨学金があるし、住宅補助も可能だ。
また、食料を配布する、様々な支援団体の活動も活発だ。学生はボランティアで働いてる。そうやって学生がお互いに連帯しているのだ。