4月25日はイタリア解放記念日、4月27日からイタリア映画祭2019、スローフード発祥の国、イタリア
4月25日はイタリアの祝日、解放記念日。4月27日からは、19回目のイタリア映画祭が東京・有楽町の朝日ホールで開催される。
ヨーロッパの国々の中でも、イタリアの料理は、日本の外食の分野でおなじみになってきた。イタリアは、ファストフードと対局にある考え方の「スローフード(*)」発祥の国だ。
(*スローフードとは、その土地の食事や食材を大事にする考え方、1980年代にイタリアで社会運動として始まった)
日本の和食と並んで、イタリアの地中海式ダイエット(食事法)は、世界の中でも健康によいものとして注目されている。
筆者が専門とする食品ロスの分野では、日本とイタリアの外食のロスは大きく異なるようだ。イタリア・ピエモンテ州の行政職員への取材では、イタリアの外食のロスは全体の7%とのことだった。日本の農林水産省の調査によれば、披露宴や宴会では2桁のロスが発生している。
イタリアへ取材に行った際、イタリア政府(農業政策省)が制作した食品ロス削減の啓発リーフレットを入手した。イタリア人女性のRITA(リタ)さんに、このリーフレットを翻訳してもらった。内容をかいつまんでご紹介したい。
田畑の収穫量の3.2%(150万トン)は食品ロスとして廃棄
イタリアの畑で収穫された農産物のうち、全体の3.2%に相当する150万トンは、そのまま畑で捨てられた(2010年データ)。
製造工場の生産量の2.6%(170万トン)は廃棄
食品製造工場で生産された食品のうち、2.6%に相当する170万トンが、工場内で廃棄された。
製造工場から卸売・小売に運ばれる間に廃棄
製造工場から卸売・小売(スーパーなど)へ運ばれる量のうち、1.2%に相当する10万9617トンが、運ばれる過程で品質が劣化し、輸送過程で廃棄された。
品質劣化の理由は、停電で保冷機能が切れた、直射日光に当たった、など。
フードチェーン全体のうち、7%が食品ロスとして廃棄
前述の、畑からの3.2%と、製造工場からの2.6%、製造工場から卸・小売に運ばれる過程での1.2%を合計すると、そこまでのフードチェーン(*)全体のうち、7%が食品ロスとして廃棄されていることになる。
(*フードチェーンとは、田畑で農産物が生産されてから、輸送、製造・加工、卸、小売を経て消費者に至るまでの、一連の流れを指す)
途上国ではフードチェーンの前半で40%、先進国は後半で40%が廃棄
世界の途上国では、フードチェーンの前半で40%がロスになる。冷蔵・冷凍設備が整っていないことや、輸送コストが高いことが要因。
一方、先進国では、フードチェーンの後半で、40%がロスになる。食品業界の商慣習や厳格な規格、賞味期限などが要因。
イタリアの家庭・食堂やレストラン・学校給食で400億ユーロが廃棄
イタリアの家庭や、食堂・レストラン、学校給食などでは、400億ユーロ分(日本円で4兆9822億円)の食料が廃棄されている。
イタリアでは、1人あたり、年間1600ユーロ分の(日本円で19万9305円)食料を、家庭・学校給食・レストランなどで捨てている。
年間の食費が5724ユーロ(日本円で71万3015円)なので、食費の27%を捨てている計算になる。
食べものだけではない、土壌も水も時間もお金もエネルギーも無駄に捨てられている
捨てられるのは、食べものだけではない。
400平方キロメートルの土地が無駄になった計算になる。
7300万立法メートルの水が無駄になり、食べものを作るのに費やされた時間も無駄になった。
世界の飢餓を解決するには毎年、440億USドル(335億ユーロ、4兆1716万円)が必要だが、イタリアで余って捨てられる食品を処分するのにかかる費用は3250億ユーロ(40兆4712万円)にも及ぶ。
食品ロスを減らすためのtips(ヒント)
買い物リストを作ってから買い物に行く。
できるだけ、こまめに買い物をする。
農家などから直接、野菜を買う。
レトルト食品など、加工食品よりは、食材そのもの(野菜や果物など)を買う。
残りものを無駄にせず、それで料理を作る。
買いたいものがなければ、そこにあるものを買う(それで間に合わせる)。
イタリアでは硬いパンのレシピがたくさんある
RITA(リタ)さんいわく、イタリアには、硬くなったパンを捨てないで活かすレシピがたくさんあるという。冷たい飲み物に浸けて食べたり、あたたかいスープに浸けて食べたり。
Pappa a la Pomodoro(パッパ・ア・ラ・ポモドーロ)は、熱いトマトスープの中にパンを浸けて食べる料理。
「自然にもリズム(時間)がある」「季節ごとに季節の実がある」
食品ロスを出さないヒントの最後に挙げられた「買いたいものがなければ、そこにあるものを買いましょう」「ないものは我慢する」ということについて、RITAさんは、イタリア国内や家庭で使われる、2つの言葉を教えてくれた。
1つが、
「その季節ごとに、季節らしい(季節にあった)実がある」
Ogni stagione ha i sua frutti (オンニ・スタジオーネ・ア・イ・スウォイ・フルッティ)
もう1つは、
「自然にもリズム(時間)がある」
Anche la Natura ha i suoi ritmi (tempi) (アンケ・ラ・ナトゥーラ・リトミ(テンピ))
つまり、旬のものを食べなさい、今ここにあるものを食べなさい、ということ。
コンビニのないイタリアだが、RITAさんいわく「なくても充分暮らしていける」。
来日したRITAさんは、しばらく日本の飲食業界でアルバイトしたものの、毎日毎日食べものを廃棄することに嫌気がさして、すぐにやめたという。
イタリアの外食のロスが少ない理由について、RITAさんは、「外食は贅沢なもの。高いから、コース料理などはめったに頼まない。友達と食べにいっても、パスタやリゾットなど、一品だけを頼んで、時間をかけてそれを食べきる」と話していた。
自然を敬い、食事を楽しむイタリアの姿勢は、日本の、特に外食の分野で見習いたい。