田中恒成が田口良一を圧倒!目指すは前人未到の5階級制覇!
WBO世界フライ級タイトルマッチが行われ、3階級王者の田中恒成(24)が、元IBF・WBA統一王者の田口良一(32)を挑戦者に迎えて、岐阜メモリアルホールで対決した。
両者は2017年大みそかに、ライトフライ級での王座統一戦を行う方向で対戦が内定していた。しかし、田中が2度目の防衛戦で両目眼窩底骨折を負いキャンセルした経緯がある。
2年の時を経て対戦が実現し、幻の一戦と言われ大きな注目を集めていた。筆者は試合前に取材をしたが、両者共にモチベーションが高く、試合前から好ファイトを期待させた。
田中がパワーの違いでペースを握る
序盤から両者が得意の距離に持ち込もうとハイペースで試合が進んでいった。前に出て接近戦に持ち込もうとする田口に対して、田中は距離をとってパワーのあるパンチを打ち込む。
しかし、徐々にパワーがまさる田中がペースを握っていった。同じ階級ではあるが、20代の田中と、30代の田口では、計量後の体のリカバリーが違う。階級を上げたばかりの田口に比べ、田中の方が体に厚みがあった。
検診では、身長、リーチ共に田口の方が上回ったが、実際の試合では、田中の体格差が際立った。そのため今回の試合では、よりフライ級にフィットしている田中が、パワーを活かし主導権を握った。
進化した田中恒成
田中はこの一戦で、逞しく成長していた。前回の試合で、木村翔に勝利した経験が自信に繋がったのだろう。ボクサーは一戦で見違えるように変わる。強い相手に勝つ事で、それが自信になり、パフォーマンスに影響する。
以前はスピードがある、上手い選手という印象だったが、階級を上げることでパワーが増した。それに加えて上下への打ち分けや、多彩なコンビネーションを披露して、技術力の高さも光った。
中でも目立ったのは、パワフルなボディ打ちだ。圧力が強い田口の前身を、ボディ打ちで止めた。途中から、田口の得意とする接近戦の距離になったが、近い距離でも田中のパワーがまさった。
王者の意地で立ち続けた
田口も最後までよく戦った。普段よりパンチをもらう場面が多かったが、最後まで手を出し続け、見せ場も作った。
王者として7度の防衛を果たし、統一王者にもなったプライドが、気持ちを奮い立たせ、執念を見せた。試合直後、フラフラになる田口の姿が、田中との激闘を物語っていた。
昨年に続き田中は、早くも今年の年間最高試合として候補に上がる試合となるだろう。
階級が変わるだけで戦い方も大きく変わる。田口も体を作って再チャレンジすれば、フライ級でも十分に戦えるのではないだろうか。
前人未到の5階級制覇へ
田中は最軽量級のミニマム級(47.6kg以下)から階級を上げて3階級を制覇している。しかし、フライ級(50.8kg以下)にいるのも時間の問題だ。約60キロの体重から、フライ級まで10キロほど減量をしている。
「減量がキツイので、試合をするなら強い相手としかしたくない」と話していた。本人も「スーパーフライ級(52.1kg以下)は来年チャレンジして、バンタム級までは行きます」といっていたので、階級を上げる日も近い。
ひとつ上のスーパーフライ級は、海外の強豪が集まる注目の階級だ。少し前まで、井上尚弥が主戦場としていた階級で、スーパーフライという興行がアメリカで組まれていた。
現在はWBC王者のタイのシーサケットを中心に、フィリピンのドニーニエテス、メキシコのエストラーダなど、猛者が多い。また、現在フリーで活躍する、3階級王者の井岡一翔もいる。
田中も井岡を意識していて、対戦候補に上げていた。実績の割に知名度が低いことに悩んでいたが、強い相手に勝ち続けることで、それも変わっていくだろう。まだ、24歳と若い、田中の挑戦はまだまだ続いていく。
【過去の記事一覧】
チャンピオンになっても満たされない 田中恒成インタビュー【前編】
王者の願望!素朴な魅力と意外な一面【田中恒成インタビュー 後編】