元統一チャンピオン田口良一が持つ執念と殺気【インタビュー前編】
今週の土曜日にWBO世界フライ級王者の田中恒成(23)と元WBA&IBF世界ライトフライ級統一王者の田口良一(32)が激突する。
幻とまで言われたファン待望の一戦を前に、田口に試合に向けてのインタビューを行なった。
階級を上げて精神的に楽になった
ーーー調子はどう?
田口:ちょっと疲労はありますが、まあまあいい感じです。1週間前ぐらいまでは追い込もうと思ってます。
ーーー階級をフライ級(50.8kg以下)に上げて、楽になった事とかある?
田口:精神的に楽ですね。体重をこれだけ落とさなくてはいけないというのが、2キロ増えたのでだいぶ違います。
ーーー田口くんは身長が167センチぐらい?それでライトフライ級(48.9kg以下)というのは、結構きついよね。
田口:きついですね。今は、年も重ねているので。
ーーーチャンピオンになったときは、そんなにきつくなかった?
田口:ちょっとだけきつかったですが、当時はライトフライでずっといけるなと思ってました。
ーーー当時、体重は何キロぐらい?
田口:55キロくらいですね。
ーーー若い頃より、体重が増えてる?
田口:はい。昔なんて、逆に太れと言われたんですよ。もっとパワーを付けないと、と言われたんで。まさか、今逆になって大変になるとは思わなかったです。
田中チャンピオンは知的な印象
ーーー今回、幻の1戦といわれているけど、田中選手への印象とかある?
田口:頭がいいな、知的だなという印象です。ボクシングを観ていても、考えながらやっているなと感じます。
ーーー本来なら2017年の大みそかに戦うはずだったね。田中選手のケガで駄目になってしまったけど、あの時、やりたかった?
田口:はい。お互いに勝ち進んでいて、じゃあ次は、という所でそうなったので、残念でしたね。
ーーー試合の話は、あちらから?こちらから?
田口:あちらからですね。木村翔選手との試合が終わった後に言ってくれました。自分は、ブドラーと再戦という話が出ていたので、そこまで意識はしていなかったんです。
でも、それを言われたことによって、気持ちが変化しました。
新たな環境で心技体が成長
ーーー作戦とかは、自分で立てるタイプ?
田口:いや。どちらかというと、トレーナーさんがこうだから、じゃあ合わせてやろうという感じです。
ーーー今回、対策とかそういうのも、自分の中で立てる?
田口:そうですね。
ーーー試合の前に特別意識することはある?
田口:重心ですね。バランスが崩れた時に、戻るまでに時間がかかったりするので、そこを意識しています。
それで前に比べたら、打たれて起き上がったところから、すぐ重心が低くなっていけるようになりました。
ーーーシャドーとかミットとか、そういう練習はよくやれてる?
田口:そうですね、バランス重視で、そこは、明らかに改善できたと思います。
ーーートレーナーも変わって、また新たな気持ちとか、そういうのもあるよね。
田口:はい。梅津さんに変わったことによって、気持ちも新たにリフレッシュというか、新鮮さがありますね。
ーーーいい感じ?
田口:そうですね。明らかにブドラー戦よりは、ここまでの過ごし方は、心技体が違います。
執念から湧き出た田口の殺気
ーーーもうプロになって何年?
田口:13年ぐらいですね。
ーーー田口君は試合中の事は覚えてる?試合中に、こういう事を考えていたな、とか。
田口:結構冷静です。相手の胸毛がすごく生えているとか、あと、わきがの人がいて臭いなーとか、そういう感じです(笑)
ーーー僕は田口君と試合した時に、闘争心というか、殺気を持っていたなと感じた。僕のこと、殺そうとして向かってきてたよね?
田口:いやいや(笑)自分も勝ちたい思いがあったので、結果、殺気立っていたんだと思います。
でもそれは、勝てば日本チャンピオンになれるチャンスがあるので、優勝したい気持ちからの執念はありましたね。
ーーー執念感じたよ。僕はプロで20戦ぐらいしてるけど、田口君との試合が一番恐怖を味わった。
田口:本当ですか?
ーーーいや、本当に。もちろん世界王者だったゲバラも強かったけど、試合中に、この選手は怖いなと思ったのは、田口君だけ。
田口:試合前と試合中で、結構違うと言われますね。
ーーー試合向きというか。
田口:間違いなく試合向きだと思います。
ーーー確かに。
自分が変わったキッカケ
自分のボクシングが変わったり、自信になったきっかけとかある?
田口:最強後楽園(日本タイトル挑戦権獲得トーナメント)の前ぐらいですかね。まだ、自分は日本で8位ぐらいだった時に、上位ランカーの大内選手に競り勝って、それが自信になりました。
ーーーそこから伸びていった。
田口:そうですね。あと最強後楽園で優勝できた事も自信につながりました。
ーーーボクシングの練習は好き?
田口:好きか嫌いかといったら、そんなに好きではないです。
ーーー色々な選手に聞くと、練習が嫌いな選手が多いんだよね。
田口:好きな人いますか?苦しいじゃないですか。
ーーー僕は大好き。苦しいのが好きだね。ちょっとおかしいのかもしれない。
田口:おかしいですね(笑)。うそです。
ーーー全然大丈夫(笑)。
ボクシングを始めた動機はいじめから
今までのキャリアの中で、一番うれしかったのはいつ?
田口:日本チャンピオンになった時です。世界チャンピオンになった時は、取れてうれしかったんですけど、もっとうまくできたのにという反省がありました。
ーーー今までで一番の挫折はありましたか。
田口:挫折といったら、日本タイトルに初めて挑戦して、引き分けになった時ですかね。もう何をやっても楽しくなかったです。
後で旅行に行くという話になっていて、行っても楽しめなかった。結構、気持ちが落ちてましたね。
ーーーボクシングを始めたきっかけが、いじめられてボクシング教室に通ったからだっけ?
田口:そうですね。
ーーー僕も似たような感じで、喧嘩でボコボコにされて、それでスポーツジムに通ったのがボクシングを始めたきっかけです。田口選手の場合はどんな感じだったんですか。
田口:『はじめの一歩』が好きだったのと、畑山さんの試合を観たのが大きいです。
お父さんがいつも観ていたので、一緒に観るようになりました。ボクシング自体に興味はあって、いじめられた時に、自信を持ちたいと思い始めました。
友達と、色々なスポーツが体験できるみたいなスポーツ祭りみたいなのがあって、2週間に1回やっているから来なよと言ってくれました。
そこで大田体育館に行くようになりましたね!
田口に話を聞いたが、階級を上げた事やトレーナーが変わった事など大きな変化があった。その変化をプラスに変えられたように感じた。
後編では、運命の出会い、今までで一番強かった相手、ボクシングに対する想いについて語ってもらった。