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イスラエルが2日連続でシリアを爆撃:日常化することで失われるニュース性と関心

青山弘之東京外国語大学 教授
Facebook(@YomyatKzefeh)、2023年3月30日

トルコ・シリア地震が発生して以降、シリアへの爆撃(ミサイル攻撃)をエスカレートさせているイスラエルが3月30日と31日に首都ダマスカス一帯を再び攻撃した。

3月30日

シリア軍筋は30日に声明を出し、同日午前1時20分、イスラエル軍が占領下のゴラン高原上空から首都ダマスカス一帯の複数ヵ所を狙って多数のミサイルを発射、シリア軍防空部隊が敵ミサイルの一部を撃破したが、兵士2人が負傷し、若干の物的損害が生じたと発表した。

英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、狙われたのは「イランの民兵」の拠点複数ヵ所。爆撃により、南部環状道路近くで火災が発生し、カフルスーサ区やマイダーン区で爆発音が複数回にわたって聞こえたという。

一方、反体制系ニュース・サイトのサウト・アースィマは、複数の独自筋の話として、イスラエル軍の爆撃は2回にわたって行われ、1回目は首都ダマスカス近郊のシリア軍防空部隊の基地、2回目は南部環状道路を移動中の車が狙われたと伝えた。

車にはシリア政府の協力関係にある外国人が乗っていたとみられるという。

3月31日

シリア軍筋は31日にも声明を出し、同日午前0時17分、イスラエル軍が占領下ゴラン高原上空から首都ダマスカス郊外の1ヵ所を狙って多数のミサイルを発射、シリア軍防空部隊がこれを撃破したが、若干の物的損害が生じたと発表した。

SANA、2023年3月31日
SANA、2023年3月31日

シリア人権監視団によると、攻撃では、首都ダマスカスの南方、ダマスカス郊外県のカタナー市からジュダイダト・アルトゥーズ町に至る地域のシリア軍と「イランの民兵」の拠点、武器弾薬庫が標的となり、イラン・イスラーム革命防衛隊に所属する民兵の士官5人が死亡した。これに関して、イラン・イスラーム革命防衛隊の広報は声明を出し、同隊の軍事顧問の1人の警備員ラシード・イスラームことミーラード・ハイダリー氏が死亡したと発表した(4月1日に加筆)。

日常化する攻撃

2月6日の地震発生以降、イスラエル軍によるミサイル攻撃はこれで6回、2023年に入ってから8回となった。2日連続でシリアを攻撃したのは、地震発生以降初めて。

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30日の攻撃に関して、シリアの外務在外居住者省はツイッターを通じて声明を出し、「(中東)地域の諸国民、諸国家に対するファシズム的手法」と非難した。

だが、「イランの民兵」の存在を口実として執拗に繰り返される攻撃は、いつもの通り、欧米諸国、そして日本ではほとんど報じられない。

イスラエルの攻撃がきわめて稀で、異例のことであったのなら、大きく報じるメディアもあっただろう。だが、連日のように繰り返される侵犯行為は、ニュース性そのものを低下させ、報じられることも、関心を呼ぶこともなくなっている。

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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