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イスラエルは震災で苦しむシリアに追い打ちをかけるかのように3度目のミサイル攻撃を実施

青山弘之東京外国語大学 教授
Yedioth Ahronoth、2023年3月12日

「有史以来最大規模」などと称されるトルコ・シリア地震が発生してから34日目となる3月12日、イスラエルがまたもや震災に喘ぐシリアを攻撃した。

シリア軍は報道声明を出し、3月12日午前7時15分頃、イスラエル軍がレバノン北部方面からタルトゥース県とハマー県の農村地帯の複数ヵ所に対してミサイルを連射、シリア軍防空部隊が迎撃、多数のミサイルを撃破した、と発表した。

声明によると、この攻撃によって、シリア軍兵士3人が負傷、若干の物的損害が出た。

フマイミーム航空基地(ラタキア県)に設置されているロシア当事者和解調整センターのオレグ・エゴロフ副センター長も、12日の午前7時14分から23分にかけて、イスラエル軍のF-16戦術戦闘機2機がレバノン北部からミサイル攻撃を行い、研究センターの建物に損害を与え、3人が死亡したと発表した。

イスラエルがシリアに対してミサイル攻撃を行うのは、2月6日に地震が発生してからこれで3回目となる。1度目は2月19日、UNESCO世界文化遺産に指定されているダマスカス旧市街内のダマスカス城などを攻撃した。また、2度目は3月7日、アレッポ国際空港を攻撃し、各国や国連からの支援物資搬入の窓口となっていた同空港を3日にわたって利用不能とした。

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SANA、2023年3月12日
SANA、2023年3月12日

SANA、2023年3月12日
SANA、2023年3月12日

英国で活動する反体制系組織のシリア人権監視団が複数筋(詳細は不明)から得た情報によると、ミサイル攻撃を受けたのはヒムス県ミスヤーフ市西のワーディー・ウユーン村に至る街道一帯(ハイル・アッバース地区)。同地には「イランの民兵」の拠点や科学研究センター(防衛工場)などがあり、「イランの民兵」の武器弾薬庫1棟と防空部隊の陣地1ヵ所が破壊され、シリア軍の士官(少佐)を含む3人が死亡、2人が負傷したという。

また、イスラエルの『イェディオト・アハロノト』も、シリア人権監視団の情報を引用したうえで、ミサイル攻撃がミスヤーフ市近郊にある防空工場の精密ミサイル開発センターを狙ったものだと伝え、写真や映像を公開した。

Yedioth Ahronoth、2023年3月12日
Yedioth Ahronoth、2023年3月12日

イスラエルがシリアに対して執拗に繰り返す爆撃やミサイル攻撃は、レバノンのヒズブッラーなど、イラン、そしてイラン・イスラーム革命防衛隊から物心面での支援を受けるいわゆる「イランの民兵」の存在によってもたらされる安全保障上の脅威に対抗することを目指している。

こうした事情ゆえに、イスラエルとの同盟国である米国や西欧諸国は、攻撃がたとえ民生施設を標的としたものだとしても非難することもなく、これらの国のメディアにおいて批判的な記事や論調を目にすることはほとんどない。

国際法に違反するこうした行為を黙認し続けるその二重基準は、トルコ・シリア地震によってシリアの人々が未曾有の苦しみを味わおうとも決して変わることはない。そればかりか、シリアの被災者を積極的に支援しようとしない姿勢は、震災で苦しむシリアに追い打ちをかけるようにして攻撃を繰り返すイスラエルと同じく非道さすら帯びている。

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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