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2人死亡事故から2年8か月後に下された「不起訴不当」の判断と遺族の思い  #専門家のまとめ

柳原三佳ノンフィクション作家・ジャーナリスト
事故現場交差点に立つ母親の平井沙紀さん(筆者撮影)

 2021年2月、熊本県天草の国道で発生した2人死亡事故について、熊本地方検察庁は2人をはねた男性を不起訴処分としました。

 この判断に納得できなかった遺族は、2023年4月、検察審査会に申し立てをおこない、約半年後の2023年10月12日、検察審査会は「男性を不起訴処分とした検察の判断は不当」と議決しました。

 この事故は、いったいどのようなものだったのか。また、遺族の真の思いとは……。

 これまでの経緯を「まとめ記事」のかたちで振り返ります。

▼検察官の判断は正しかったのか

軽トラックにはねられ2人が死亡、運転手が不起訴になった事故 検察審査会が『不起訴不当』の判断 遺族「やっとスタートラインに」(RKK熊本放送/2023.10.31)

 検察審査会への申し立てから約半年、「不起訴不当」の決議が下されました。検察審査会の審査とは、『検察官の不起訴処分の当否の審査(検察審査会法第2条第1項第1号)』です。今回の審査は、まさにこれを正面から問うものになり、検察はこれから再度、事故内容を精査することとなります。

▼第2事故を起こした加害車は、なぜ気づかなかったのか

救護中、他車にひかれて2人死亡 後続車に危険知らせる大切さと母の無念(Yahoo!エキスパート・柳原三佳/2022.9.22)

 本件には第1事故と第2事故が絡んでいます。今回、検察審査会に申し立てを行っていた平井さんの息子さんは横断歩道を横断中、1台目の車にはねられ、救護中に青信号で交差点に進行してきた2台目の車にはねられたのです。

 なぜ2台目の車は前方の異変に気づかなかったのか……。検察は遺族の疑問に答えていませんでした。

▼加害者の真摯な謝罪を受け、変化した遺族の気持ち

加害者の謝罪と誠意が、交通事故遺族の心を動かすとき(Yahoo!エキスパート・柳原三佳/2023.2.9)

 平井さんは事故の後、2度、加害者と対面しています。加害者の誠意ある謝罪の姿勢と憔悴した様子を見て、逆に相手を気遣う優しさを見せるほどでした。

 私も弁護士と共にその現場に立ち会いましたが、被害者も加害者も、真実が知りたいという思いの中で、苦しみ続けている現実がひしひしと伝わってきました。

▼息子が亡くなった交通事故現場で状況を語る母

『息子は2台の車にはねられて亡くなった』(柳原三佳のYouTubeチャンネル)

 なぜ、2台目の加害者は、進行方向に2人の人物がいることに気づかず進んでしまったのか……。

 今回の不起訴不当の議決を受け、双方にとって納得のいく再捜査が行われることを期待したいと思います。

ノンフィクション作家・ジャーナリスト

交通事故、冤罪、死因究明制度等をテーマに執筆。著書に「真冬の虹 コロナ禍の交通事故被害者たち」「開成をつくった男、佐野鼎」「コレラを防いだ男 関寛斉」「私は虐待していない 検証 揺さぶられっ子症候群」「コレラを防いだ男 関寛斎」「自動車保険の落とし穴」「柴犬マイちゃんへの手紙」「泥だらけのカルテ」「焼かれる前に語れ」「家族のもとへ、あなたを帰す」「交通事故被害者は二度泣かされる」「遺品 あなたを失った代わりに」「死因究明」「裁判官を信じるな」など多数。「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」はNHKで、「示談交渉人裏ファイル」はTBSでドラマ化。書道師範。趣味が高じて自宅に古民家を移築。

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