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「人を責めるな、仕組みを責めろ」トヨタの教えが通じない若者たち 何が欠けているのか? 3つの視点

横山信弘経営コラムニスト
(ChatGPT DALL-E 3 にて筆者作成)

「人を責めるな、仕組みを責めろ」は有名なトヨタの教えである。

作業場のミス(ヒューマンエラー)があったとしても、作業者ではなく「仕組み」に焦点を合わせ、カイゼンしていくべきだ、という考え方だ。

しかしそれが最近の若者には通じない、という。それは、なぜか? 今回は、「人を責めるな、仕組みを責めろ」というトヨタの教えが通じない若者たちについて解説する。

「仕組み」をどれほどカイゼンしてもミスを防げない。期待通りの成果を出せない。何が欠けているのか? 3つの視点で考えてみたい。

■「仕組み」といっても純粋の「仕組み」ではない

そもそも「仕組み」と言っているが、「ルール」のことを指していることが大半だ。

もしも人が介在する必要のない「仕組み」のことを指しているのであれば、その「仕組み」を導入することでヒューマンエラーがなくなるのは当然である。期待通りの成果が手に入るに決まっている。

たとえば表計算ソフトで「利益の多い商品アイテム」の順番に並べ替えるのを、人でやるのか、それともアプリの機能を使って自動的にやるのかで比べてみよう。考えるまでもない。後者のほうが圧倒的に効率的だ。ミスも起こらず、瞬時に期待された通りの成果が手に入る。

もし、手計算で順番を入れ替えている若者がいたら、

「この機能を使えば一発でソートしてくれるよ」

と教えるだけでいい。

だから今回のテーマとして挙げられている「仕組み」というのは、ほぼ「ルール」のことを指している。だから

「人を責めるな、仕組みを責めろ」

ではなく、

「人を責めるな、ルールを責めろ」

と言い換えたほうがわかりやすい。ルールとして捉えれば、そのルールを人が守るか、守らないかという視点で考えられるからだ。

■なぜルールを責めても、うまくいかないのか?

「うまくいかないからといって、人を責めるな、ルールを責めろ」

と言うのは、とても聞こえがいい。期待通りの成果が出なかったのは、本人の責任ではなく、「仕組み」という名のルールに問題があった、と受け止めるほうがマネジャーは都合がいいからだ。

なぜか?

人を責めるのは面倒だし、そもそも負荷がかかることだからだ。ルールを変えよう。仕組みを刷新しよう。「見える化」を推進すべきだ。と言っていたほうが、マネジャーは「やってる感」を味わえる。

もちろん、人を責める前に、ルールを整備することは重要だ。ただ、そんなことは今に始まったことではない。トヨタの教えとして有名で、昔から言われていることだ。そして、ルールなんて決めようと思えば簡単にできる。

難しいのは、そのルールを周知徹底させることなのだ。

■ルールを増やしすぎると「うるさい組織」になっていく

先述した表計算ソフトのソート機能のように、使えば確実に期待した成果が出るような「仕組み」ならルールなど設けなくてもいいだろう。

「こんな便利な機能があるよ」

と伝えるだけでいい。しかし、そうしたからといって、必ずしもうまくいくかどうかわからない事柄には、誰だって面倒だと感じる。

たとえば、以下を読んでもらいたい。

・会議の前にアジェンダを読んでおくこと

・研修を受講したら2日以内に報告すること

・エレベーターに乗るときは「先乗り、後降り」を守ること

・デスクワーカーは1時間に1回5分の休憩をとること

・喫煙するときは喫煙コーナーですること

・オンライン会議のときは必ず顔が見えるようにすること

「あたりまえだ」と思える内容もあれば、「これはどうかな?」「ケースバイケースだ」と受け止める内容もあるだろう。

いちばんわかりやすいのは、

・喫煙するときは喫煙コーナーですること

である。今のご時世、このルールを徹底させることは簡単だ。

「仕事をしながら吸わせてよ。せめてトイレの中での喫煙は許して」

と言われても、「絶対にダメ」と言い切ることができるだろう。しかし、

・デスクワーカーは1時間に1回5分の休憩をとること

と言われたらどうか? 

「何の意味があるのか?」

「それをすることで本当に生産性アップするの?」

と抵抗されることもあるだろう。あまりにルールを増やすと「うるさい組織」になっていく。

■ルールとマナー、モラルの違いとは何か?

だから、ルールとマナー、モラルの3つを区別して、マネジャーは啓蒙していく必要がある。

●ルール → 守らなければならない決まり事で、破った場合は罰則がある
●マナー → 守ったほうがよい態度、礼儀作法で、破ったとしても罰則はない
●モラル → 守ったほうがいい価値観や姿勢で、破ったとしても罰則はない

この中で、最もデリケートなのが「モラル」だ。社会の秩序を保つために必要で、職場では個人的な価値観をベースにしていることも多い。そのため若者にとっては「理解できない」と受け止められる事柄も多いだろう。

「人を責めるな、仕組みを責めろ」

「人を責めるな、ルールを責めろ」

どちらでも構わないが、仕組みを変えても、ルールを作りなおしても、それを徹底させるためには、結局人と向き合わなければならない。もし、それでうまくいかなければ、

「なぜルールを守らないんだ、最近の若い子は」

「オリエンテーションで言ったのだが、今年の新人はまるでわかってない」

等と、結局は人を責めることになるのだ。

新刊『若者に辞められると困るので、強く言えません:マネジャーの心の負担を減らす11のルール』では、ちょうどいいマネジメント11のルールを解説した。

仕組みやルールを作っただけで、若者は定着しない。どのようなときに「叱る」「注意する」「指摘する」のかもセットで考えないと、仕組みやルールは形骸化していくのだ。

<参考記事>

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経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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