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ツイッターは、イーロン・マスクの取締役就任で、新たな成長を目指すことができるか

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(写真:ロイター/アフロ)

イーロン・マスク氏がツイッターの取締役に就任したというニュースが、世界中で大きな話題になっています。

なにしろ、イーロン・マスク氏はテスラやスペースXのCEOでもあり、個人資産が27兆円とも言われる世界一の資産家でもあり、ツイッターのフォロワー数は8000万人を超える真のインフルエンサーでもあります。

当然、ツイッターの今後に大きな影響があることが期待されるわけです。

ただ、今回のイーロン・マスク氏の取締役就任は、完全にポジティブなものではない可能性も指摘されています。

ツイッター批判を繰り返していたマスク氏

なにしろ取締役就任前のイーロン・マスク氏は、ツイッターに対して批判的な投稿を繰り返していたことでも有名でした。

最も有名な投稿は、ツイッターのCEOであるアグラワルCEOをスターリンにみたてて、前CEOのジャックドーシーを暗殺されたニコライ・エジョフの位置にコラージュしたこちらのツイートでしょう。

これは、アグラワルCEOがツイッター上の検閲を強化していることを批判したものだと言われており、イーロン・マスク氏は、ツイッターなどのSNSで言論の自由が守られていないと、ことある毎に批判をしていました。

参考:イーロン・マスクがツイッターの新CEOに批判的な理由

新しいSNSを作るかツイッター買収かという噂

しかも、実はつい先週にも、ツイッターでは言論の自由が守られていないため、新しいSNSの創設を真剣に検討していると発言したばかりでした。

参考:イーロン・マスク氏、新しいSNSの創設を「真剣に検討」

結果的に、蓋を開けてみたら、イーロン・マスク氏は、新しいSNSの創設ではなく、ツイッターの取締役に就任する道を選択したわけです。

ただ、時系列にこれらの報道を並べてみると、イーロン・マスク氏がツイッター社に対して、自分の意見を聴くつもりがないなら新しいSNSを作るぞと警告していたのではないか、と穿って見ることもできます。

なにしろ今回の取締役就任直前に、イーロン・マスク氏がツイッター社の株を9%購入していることが発表され、イーロン・マスク氏によるツイッター社買収の憶測で株が一気に急騰したほど。

参考:イーロン・マスクによる買収に期待?…「Twitter株高騰は過剰反応」アナリストが分析

今回の取締役就任に際し、イーロン・マスク氏の取締役の任期中および任期終了後90日間は、14.9%を超えるツイッターの普通株式を保有しないという合意がわざわざされているのも、イーロン・マスク氏がツイッターを敵対的買収しない宣言と見ることもできます。

今回のイーロン・マスク氏の取締役就任にいたっては、アグラワルCEOも歓迎のツイートをしていますが、実際に両者がこれからのツイッター運営をめぐって本当に二人三脚で上手くいくかどうかは、しばらく様子を見る必要があるといえるかもしれません。

マスク氏はツイッターでの炎上経歴も豊富

また、イーロン・マスク氏には、たびたび不用意なツイートで炎上やトラブルを起こしてきた歴史もあります。

参考:「気まぐれな」ツイートを続けるイーロン・マスク氏とそれを監視できないテスラ取締役会を同社株主が提訴

今後、ツイッター社もこのイーロン・マスク氏のツイートでトラブルに巻き込まれる可能性は否定できません。

関係者の方々からすると、ツイッターにとってビッグニュースでもあると同時に、胃が痛い思いをする人が増えそうなニュースとも言えるでしょう。

ツイッターは世界のトップSNSに返り咲けるか

一方で、イーロン・マスク氏の取締役就任で期待されるのは、伸び悩んでいると言われるツイッターの新たな成長のきっかけになることでしょう。

実は世界的に見ると、ツイッターはSNSのアクティブユーザー数のランキングでトップ10にも入れない状態が続いています。

(出典:Statista:Most popular social networks worldwide as of January 2022)
(出典:Statista:Most popular social networks worldwide as of January 2022)

Statistaの月間アクティブユーザー数の調査結果によると、ツイッターのアクティブユーザー数は、TikTokにも2倍、Instagramは3倍、Facebookに至っては7倍近くの大きな差をつけられてしまっているのです。

日本においてはツイッターの利用者数は2017年の時点で4500万を超えており、FacebookやTikTokなどのライバルよりも人気のSNSの座を確立していますから、意外な印象を受ける人も多いでしょう。

今回イーロン・マスク氏は、様々なツイッターのサービスの改善案を手に取締役に就任するようですから、こうした改善やイーロン・マスク氏によるメディア露出効果が相乗効果をもたらすことで、ツイッターが再度世界的に注目されることが期待されるわけです。

イーロン・マスク氏参画による大きなインパクト

なにしろ、イーロン・マスク氏がツイートの編集機能の賛否を質問しただけで、早速世界中のメディアが取り上げています。

参考:イーロン・マスク、Twitterの取締役に就任…最初の改善はツイートの「編集」機能か

実は編集機能は昨年の7月にも実装が検討されたもので、ツイッターのコアユーザーには新しい話ではないのですが、それがこれだけ新機能のように報道されるわけで、このイーロン・マスク効果は非常に大きいように感じます。

私個人は2007年から、もう15年以上ツイッターを使いつづけている、いわゆる「ツイッター廃人」に分類される人間です。

そうした人間からすると、これまで何度もツイッター社がさまざまな買収の噂に晒されていたことを考えると、「ツイッター廃人」の親玉のようなイーロン・マスク氏が本気でツイッターの改善にコミットすることは、大きなチャンスのように感じます。

現在も続いているロシアのウクライナ侵攻においても、ゼレンスキー大統領や関係者の方々のツイッター外交が大きな成果をもたらしていますし、ツイッターが他のSNSにはないユニークな特徴を持っていることは間違いありません。

参考:ロシアのミサイルにスマホで対抗する、ウクライナ大統領に学ぶ「言葉の力」

イーロン・マスク氏の取締役就任により、ツイッターのコミュニケーションインフラとしての可能性が、ここであらためて注目されることは、ツイッターユーザーにとって良いニュースと言えるでしょう。

イーロン・マスク氏とアグラワルCEOには、是非過去のしがらみをこの機会に全て水に流して頂き、新しいツイッターの未来を紡いで頂きたいなと強く祈ります。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

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