Yahoo!ニュース

「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」のヒットが予感させる、Netflixと日本アニメの黄金期

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:YouTubeガンダムチャンネル)

人気アニメ「機動戦士ガンダム」のフル3DCG作品となる「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」が、Netflixで公開され、ファンを中心に話題を集めています。


Netflixの日本のテレビドラマのランキングでも2位に入っていますが、特に注目すべきは、フランスやドイツなど22カ国のトップ10にランクインしている点でしょう。

今回の「復讐のレクイエム」が、30分×6本のミニシリーズにもかかわらず、ここまで世界の多くの国で注目を集めることに成功しているのは非常に良いニュースだと言えると思います。

海外を最初から意識した作品

もちろん「機動戦士ガンダム」といえば、アニメに思い入れのあるファンが大勢いる作品ですから、今回のフル3DCG版に対しては、様々な意見が出ているのも事実です。

しかし、一年戦争中のヨーロッパ戦線を舞台に、あえて従来のアニメとは逆のジオン軍の視点から、「白い悪魔」としてのガンダムの怖さを描くというアプローチは、コアなガンダムファンの多くからも高い評価を得ているようです。

また、「復讐のレクイエム」のもう一つの大きな特徴と言えるのは、音声に日本語版と英語版が最初から用意されている点です。

最初から海外展開を意識することができるNetflixならではのアプローチと言えますし、結果として、アニメ版ガンダムを見たことが無い、シリーズ初見の人も多くこの「復讐のレクイエム」を楽しんでいるのが注目点と言えるでしょう。

ガンダムとNetflixの様々なコラボ

実はNetflixとガンダムは、様々な複数のコラボを展開している関係にあります。

例えば、映画「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」は2021年から日本以外の国においてはNetflix独占で配信がされています。

また、今回のフル3DCG版である「復讐のレクイエム」はサンライズとSAFE HOUSEが中心になってNetflix独占作品として共同制作がされていますが、実はNetflixではもう一つ実写版映画がサンライズとLEGENDARYの共同制作で企画されているのです。

こちらは、「キングコング:髑髏島の巨神」などの作品で有名なジョーダン・ヴォート=ロバーツ氏が監督兼プロデューサーを務めることが発表されており、「復讐のレクイエム」以上に規模の大きい作品になることが予想されるわけです。

今や「機動戦士ガンダム」シリーズにとって、Netflixが世界展開をする上での重要なパートナーになっていることが良く分かります。

Netflixが日本アニメの世界への入り口に

Netflixのアニメの実写化と言えば、昨年公開された実写版「ONE PIECE」のシーズン1が総視聴時間5億4190万時間で2023年下半期のNetflixのテレビ部門でトップになったことが記憶に新しい方も多いはずです。

参考:Netflix が2023年下半期の視聴時間1位を発表 テレビ部門は「ONE PIECE」がトップ

さらに、Netflixは「ONE PIECE」のアニメを一から作り直す「THE ONE PIECE」というプロジェクトにもコミットしていますし、「シティーハンター」や「幽☆遊☆白書」など様々な日本のマンガの実写化にも成功しているのです。

参考:鈴木亮平「シティーハンター」の世界ヒットに学ぶ、韓国に20年遅れた日本の勝ち筋

さらに最近では、アニメ「ダンダダン」がNetflix経由で世界に配信された結果、Netflixのテレビドラマの非英語作品のランキングで世界2位になるなど、日本のアニメが世界に拡がる入り口になってる側面も強くなっています。

(出典:Netflix Right Now)
(出典:Netflix Right Now)

参考:アニメ「ダンダダン」Netflixランキングで日本1位&世界2位の快進撃!10月新作アニメが躍進中

日本のマンガやアニメ作品にとって、Netflixとどのようにコラボをしていくかというのが非常に重要なタイミングに入っているのは間違いありません。

Netflixにとっても重要な日本のコンテンツ

さらに日本にとって良いニュースと言えるのが、日本のアニメ作品にとってNetflixが重要なだけでなく、Netflixにとっても日本のマンガやアニメ作品は重要なパートナーになっている点です。

Netflixは動画配信サービスとしてライバルのDisney+やAmazonとの激しいユーザー獲得競争を行っています。

その中でも重要なのが独占コンテンツの存在です。

特にDisneyには傘下にディズニーアニメーションやピクサー、マーベルなど、人気アニメやマンガ発のヒット映画を制作するスタジオがあります。

(出典:筆者撮影)
(出典:筆者撮影)

参考:アニメ映画歴代最高の世界8位「インサイド・ヘッド2」の大ヒットの秘訣とは。

Netflixとしては、こうしたライバルの独占コンテンツに対抗するために日本のアニメが重要なパートナーになっているという面もあるわけです。

Netflixは丁度2024年7月〜9月期決算が、売上、利益、有料会員数のすべてが過去最高を更新するという発表をしたばかり。

参考:ネットフリックスが売上高・有料会員数など過去最高…低価格プラン寄与、「地面師たち」など人気

「機動戦士ガンダム」や「ONE PIECE」のような日本アニメとNetflixのコラボの成功を踏まえると、日本アニメとNetflixのコラボはこれから黄金期を迎える可能性が高いと言っても言いすぎではないように感じます。

まずは、今回の「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」の反響が、どれぐらい広がるかに注目したいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

徳力基彦の最近の記事