PayPay証券がついに「NISA」に対応。出遅れを取り戻せるか
9月21日、PayPay証券が2024年から「NISA」に対応することを発表しました。
各社が獲得に向けた施策を打っている中、出遅れた感は否めないものの、ここから取り戻すことはできるのでしょうか。
ついにNISA口座に対応
PayPay証券は、主要な株式を1000円から買えるスマホ証券(One Tap BUY)が出自となっており、NISA制度には対応していませんでした。
しかし約5800万人のユーザーを誇るPayPayアプリと連携したことで、その資産形成を担う大役を期待されることになり、NISA対応が待ち望まれていました。
今回のNISA対応により、10月1日に始まる申し込みをすることで、PayPay証券に2024年から利用できる「NISA口座」が開設されます。
これにより、PayPayアプリから利用できる「PayPay資産運用」と、PayPay証券アプリの両方から、NISA口座での銘柄の買い付けが可能になるとのことです。
すでに他の証券会社や銀行でNISA口座を開設済みの場合は、移管の手続きをすることで、PayPay証券に切り替えることが可能です。
つみたてNISA枠では投資信託、成長投資枠では日本株と米国株に対応します。ただ、他の証券会社と同様に、NISAの制限により一部の銘柄は対象外になるようです。
新NISA対応は歓迎したいところですが、他社から出遅れた感は否めません。新NISAを解説する書籍や動画などに出てくるのも、主要ネット証券5社の話が中心です。
一方、PayPay証券にとって有利な点があるとすれば、まだ多くの人が「NISAをやっていない」ことでしょう。
つみたてNISAの口座数は2023年3月末時点で約783万口座です。「増税」には批判の声が上がる一方、減税になり得るNISAの利用者は少ないという奇妙な状況が続いています。
そういう意味では、PayPay証券は既存の金融機関が取り込むことができなかった、その他大勢の人々に受け入れられる可能性があるといえます。
また、新NISAでは売却した分の枠が翌年に回復する仕組みです。いったん他社で新NISAを始めた人が、携帯キャリアを乗り換えるようにPayPay証券に移ってくることも考えられます。
将来的にPayPayで給与を受け取るようになれば、日常の決済に加えて、貯蓄や資産形成などがPayPay経済圏で完結する可能性も出てきます。
こうした背景から、PayPay証券は既存のネット証券とは異なる新興勢力になり得ることから、大手金融機関の中にも警戒を強めているところがあるようです。
「積み立て」だけならPayPay証券でOK?
PayPay証券の注意点として、日本株や米国株は市場での取引ではなく、PayPay証券との相対取引となっており、売りと買いの価格差(スプレッド)に手数料相当分が含まれています。
NISA口座の手数料については、松井証券が国内株だけでなく米国株も無料とすることを発表。SBI証券もそれに続いているだけに、PayPay証券のNISA口座で何らかの優遇措置があるかは気になるところです(追記:その後、楽天証券からも発表がありました)。
一方、投資信託については他のネット証券と大きな違いはなさそうです。銘柄としては「eMAXIS Slim」のような人気商品があり、積み立て購入時には0.5%のポイント還元も始まっています。
新NISAではつみたてNISAの枠が月10万円に広がります。多くの人はその範囲内で積み立てをすると思われるため、PayPay証券だけでOKといえそうです。
一方、他社ではカード投信積立による0.5〜1%強のポイント還元が人気を博しています。次はPayPay証券と「PayPayカード」の連携が始まるか、注目が集まりそうです。
追記:
10月2日、PayPay証券は今後のサービス拡充として、PayPay資産運用において「PayPayのクレジット(旧あと払い)での支払いを通じたつみたてサービス」の準備を進めていることを明らかにしました。