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配車アプリ「GO」が記事削除を迫った? 広告代理店の暴走か

山口健太ITジャーナリスト
GOのアプリ(筆者撮影)

11月20日、タクシー配車アプリの「GO」の委託先企業が、一部ウェブメディアに広告を掲載する条件として記事の削除を迫ったと報じられ、話題になりました。

これに対してGOは、アフィリエイト広告を扱う代理店との間で認識に齟齬が生じたことを認め、公式に謝罪しています。

GOの広告を載せるすべてのメディアが疑われる事態に

今回の騒動の発端となった自動運転ラボの記事の通り、GOのアフィリエイト広告を取り扱う代理店が、一部のメディアに対してライドシェア関連記事の削除を求めたこと自体は事実だったのでしょう。

その背景として、GOと広告代理店の間ではライドシェアについて「国内の議論が賛否の分かれる繊細な話題である旨をこれまで継続的に情報交換」してきた中で、代理店がGOの意図を読み違えて暴走した印象を受けます。

ところで、広告主であるGOにとって、広告を掲載するメディアを選ぶのは当然の権利である、との反応もSNS上ではみられました。この点はどう考えればよいのでしょうか。

たしかに、多くのメディアは売上の一部または全部を何らかの広告に頼っています。そのため、メディアはスポンサーに配慮しているとか、広告主の圧力に弱いといった見方をしている人がいるかもしれません。

しかし実際には、そう単純な話ではありません。なぜならメディアは独立した「編集権」を持っており、読者に有益な情報であれば、たとえ広告主や取材先に不利なものであっても記事にできるからです。

一方で、広告を出す側は売上や認知度向上など何らかのプラスの効果を期待しており、わざわざお金を払ってそれらにマイナスになる場所に広告を出す必要はない、と考えるのは当然といえます。

ただ、その場合でも広告主ができるのは広告枠を買うか買わないかの判断であって、記事の中身にまで口を出すことはできないということです。

ちなみに「案件」や「タイアップ」などとも呼ばれる記事広告なら、中身に口を出すことができます。こうした記事は「AD」や「PR」といった表示があり、通常の編集記事とは区別されます。

これを踏まえると、広告掲載の条件に記事の削除を迫るというのは最悪の要求といえます。今後、GOの広告が載っているメディアは記事削除の要求に従ったのではないかという疑いの目を向けられることになるため、すべてのメディアを敵に回しかねません。

本件は11月20日の朝からSNSで話題になっていましたが、その日の夜19時ごろには経緯をまとめた公式の謝罪文が掲載されるに至りました。GOとしても早急に事態の収拾を図った印象を受けます。

わざわざ表明することでもありませんが、筆者は読者にとって有益と思えるものであればGOについてもライドシェアについても取り上げていくつもりです。

GOに期待したいこと

タクシー会社が運行管理する「日本版ライドシェア」にはGOも対応しており、時間帯によってはアプリからライドシェアの車両を手配できるようになっています。

今後期待されるライドシェアの全面解禁はタクシー会社にとって深刻な競合になり得るだけに、さまざまな議論があるのは分かります。

しかし利用者目線で考えれば、タクシーとライドシェアが料金やサービス内容で競争することにより、移動手段の選択肢が充実するのはメリットといえます。将来的には「自動運転車」もそこに加わってほしいところです。

テクノロジーの進化で移動の方法が大きく変わろうとしている中、すでに多くの人のスマホに入っているGOは主役になれる可能性を秘めているだけに、くだらない話題に足を引っ張られて評判を落とすのはもったいないと感じます。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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