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どうなる「auカブコム証券」 MUFGとの連携強化に注目

山口健太ITジャーナリスト
auカブコム証券のWebサイト(筆者撮影)

10月19日、読売新聞などが三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)とKDDIの証券・銀行分野での資本関係の見直しを報じたことで、利用者の間で話題になりました。

特に証券については、2025年のNISA口座について考える時期でもあることから、今後の動向が気になるところです。

auユーザー向けの特典は変わらず?

MUFGとKDDIは、どちらも「auカブコム証券」と「auじぶん銀行」に出資しています。しかし報道によれば、auカブコム証券はMUFG傘下、auじぶん銀行はKDDI傘下の完全子会社になるといいます。

この報道に対して、MUFGKDDIの両社ともに「当社が公表したものではない」とのコメントを出しています。ただ、報道の内容までは否定していないことから、そういった議論が進んでいること自体は間違いなさそうです。

また、これは唐突に出てきた話というわけではなく、7月にMUFGはauカブコム証券との連携を強化していく方針を投資家向けの説明会で明かしていました。

MUFGが投資家向けに説明したネット証券戦略(MUFG提供資料)
MUFGが投資家向けに説明したネット証券戦略(MUFG提供資料)

具体的な検討内容としては、auカブコム証券の「社名変更」や、三菱UFJカードによる「クレカ投信積立」の開始、銀行口座からの自動入出金「オートスイープ」などが挙げられています。

ここで気になるのは、もしauカブコム証券がMUFGの完全子会社になった場合、KDDIが進める「au・Ponta経済圏」や「マネ活プラン」との関係はどうなるのか、という点でしょう。

この点をauカブコム証券に確認したところ、一連の報道については「当社が発表したものではなく、いまの段階で答える立場にない」(auカブコム証券 取締役執行役員の井谷幸介氏)と前置きした上で、「いまご利用いただいているau関連のサービスに限らず、いずれのサービスも影響を受けるものではない。引き続き安心してご利用いただける」(同)との回答でした。

報道内容とあわせて考えると、少なくとも当面はKDDIとの協業は続き、auユーザーにとってのメリットは変わらない一方で、MUFGとの連携強化により新たなメリットが加わることを期待できそうです。

伸び悩んでいるNISA口座の獲得についても、「MUFGとKDDIが持っているお客様との接点で、NISAを広げる余地はある」(auカブコム証券 事業開発部長の林佳史朗氏)との見方を示しています。

2025年に向けたポイント還元競争が激化する中、auカブコム証券は3000ポイントと、楽天証券の5000ポイントに見劣りするものの、auとUQ mobileの利用者なら6000ポイントという点で差別化を図っています。

MUFGとの連携が強化されることで、KDDIの携帯電話ユーザーに向けた施策に変化はあるのかという点も注目ポイントになりそうです。

追記:

11月14日、KDDIMUFGから正式に発表がありました。2025年1月末を目処にauじぶん銀行はKDDIとauフィナンシャルホールディングスの100%子会社に、auカブコム証券(「三菱UFJ eスマート証券」に改称)は三菱UFJ銀行の100%子会社になります。

「オルカン」との連携はあるか

MUFGとの連携強化について、筆者が個人的に注目しているのは「オルカン」の存在です。

通称オルカンとして知られる投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、保有者が6月末時点で424万人を超えており、日経トレンディは2024年のヒット商品1位に挙げています。

このオルカンを運用するMUFG傘下の三菱UFJアセットマネジメントは、PayPay証券とコラボファンドを設定するなど、証券会社とはオープンな関係を保っているようです。

しかし、auユーザーが楽天証券を愛用していたり、PayPay証券にはNISA口座数で追い抜いたことを名指しされたりと、auカブコム証券が苦しい状況にあることを考えれば、助け船が出されてもよさそうなものです。

たとえばauカブコム証券でオルカンを積み立てると他社より多くポイントがもらえるとか、それが難しいとしても「オルカンやるならauカブコム証券」というイメージを作ることはできないか、筆者としてはそういう伸びしろを感じずにはいられません。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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