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内閣の記念写真 「レタッチ」は是か非か

山口健太ITジャーナリスト
Photoshopで写真を編集している様子(筆者作成)

首相官邸に掲載された石破内閣の記念写真において、服装などをレタッチ(加工)によって修正したことが話題になっています。

公式発表の写真を修正することの是非について、論点を整理してみました。

写真の加工はどこまで許容されるか

写真の加工について語る前に、前提として知っておきたいのは、現代のカメラやスマホで普通に写真を撮るだけでも、一定の画像処理は入っているという点です。

たとえば暗所での撮影時には、内部的に複数枚の写真を合成することで、安価な機種でもノイズの少ない写真が撮れるようになりつつあります。

同様に、撮影にまつわる課題をソフトウェアで解決する動きは進んでいます。今回は服装の乱れが話題になりましたが、ほかにも集合写真では「目をつぶってしまう人」が出てくるなど、見た目が整わない問題が起きがちです。

グーグルのPixelシリーズには、複数枚の写真の中からうまく撮れた表情を選ぶことで、みんなが良い表情で写っているグループ写真を合成する機能があります。

AIに頼らずとも、時間をかければ「奇跡の1枚」を撮れる可能性はあるものの、首相や閣僚が集まった状態で撮影に使える時間が限られていることを考えれば、撮影後の修正で対応したほうが合理的という印象を受けます。

写真の加工がどこまで許されるのかという線引きには議論の余地があるものの、それ以前の問題として、政府の公式サイトに掲載される写真にはさまざまな意図が入り込んでいると考えられます。

写真の見栄えだけをとっても、撮影機材や衣装、メイクにお金や時間をかけることで写りは大きく変わってきます。だからといって、あらゆる写真に詳細な開示を求めるわけにもいかないでしょう。

現実的なラインとしては、政府による写真とメディアが撮影した写真を誰もが比較、検証できる状態が維持されていれば、問題はないと筆者は考えています。

もちろんメディアの写真だから信用できるというわけではなく、恣意的な切り取りや望遠レンズの圧縮効果を用いた表現が読者を混乱させることもあります。

その写真は誰が撮ったのか、なぜその場所でカメラのシャッターボタンを押すに至ったのか、読み解く想像力やリテラシーが読み手には求められているといえそうです。

透明性を確保する動きにつながるか

最近では、従来の画像編集ソフトに加えて、AIによる画像処理が増えていること、また実写のような画像を生成できるAIが普及したことで、それにまつわる「炎上」が増えている印象があります。

AIが勝手に気を利かせてくれる事例として、スマホのカメラで「月」を撮影するとAIが被写体を認識し、月面のディテールを補完してくれる機能(設定でオフにすることは可能)が炎上したことがあります。

こうした事例が積み重なることで世の中は敏感になっており、より透明性を求める声が高まるかもしれません。少なくとも首相官邸のサイトを見るだけでは写真を修正したことが分からないので、注釈があったほうがよいでしょう。

また、修正前の写真を公開してダウンロードできるようにするとか、撮影や修正の履歴を示す「来歴情報」を写真に埋め込むなど、技術的に工夫する余地はありそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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