「日本はもはや中国にとって大きな脅威ではない」中国の環球時報が社説で論評
中国共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」は9月14日付の社説で、「中国が歴史的な発展を達成した今、日本はもはや中国にとって大きな脅威ではない」と論評した。
環球時報は、菅義偉首相が自民党総裁選で勝利した同日、「菅氏は日本の中国政策を維持へ」と題する社説を掲載した。その中で「日中関係は多くの要因で形成されている。長期的には、中国が日本に影響を与える大きな手段は、中国の国力の絶え間ない増強である」と述べた。
環球時報は、自民党総裁選を争った3候補が「対中政策では、ほとんど柔軟性を見せなかった」と指摘。「米中関係の全般的な傾向と日本の国益を踏まえれば、日本の今後の中国への姿勢はすでに固定されている。日本は、自国の国益を最大にするために、日米関係を重視しながら、それと同時に中国との関係を発展させるだろう」との見通しを示した。
さらに「日本の一部勢力は、米中の緊張の高まりから、日本の対中交渉力を過大評価するかもしれない。そして、さまざまな問題で攻撃的な姿勢を見せるかもしれない。これは問題の解決や対処を難しくするだろう」と述べた。
●「アメリカは対中国で同盟国を結託」
アメリカの動向について、環球時報は「アメリカは自らの同盟国を対中国にこぞって結託させることに躍起になっている」と指摘。「これは日本にもインパクトを与えるだろう。例えば、日本は中国の市場を高く評価している。しかし、日本はまた、サプライチェーンの脱中国化を推進するために、アメリカ、オーストラリア、インドと協調している」と述べた。
筆者が16日に参加した日中の専門家によるオンライン討論会でも、中国の専門家は、クアッド(QUAD)同盟と呼ばれている「日米豪印同盟」構想の行方に気をもんでいることがうかがえた。
この構想は、アメリカ国務省副長官のスティーブン・ビーガン氏が8月31日に示したものだ。インド太平洋地域で、日米豪印4カ国の関係を将来的に北大西洋条約機構(NATO)に似た軍事同盟に発展させることを目指している。
●菅首相、アジア版NATO「日米豪印同盟」を否定
これに対し、菅首相は12日の日本記者クラブ主催の公開討論会で、アジア版NATO「日米豪印同盟」は「反中包囲網にならざるを得ない」との理由で否定した。その上で日米同盟を基軸とした外交を展開する考えを示した。
ただし、日本とインドの両政府は9日、安全保障分野での協力を強化するため、自衛隊とインド軍との間で、食料や燃料などを相互に提供できるようにする物品役務相互提供協定(ACSA)に署名したばかり。
中国の目にすれば、中国の一帯一路に対抗し、日米豪印4カ国がインド太平洋戦略をNATOのような軍事同盟に発展させる構想と映っているようだ。
●河野前防衛相「ファイブアイズと緊密に意思疎通」
河野太郎氏は防衛相時の8月4日、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのアングロサクソン系の英語圏5カ国の機密情報共有の枠組みである「ファイブアイズ」(5つの目)への日本の参加に前向きな姿勢を見せた。
河野氏は同日の記者会見で「ファイブアイズといわれている5カ国は、日本と基本的な価値観を共有する国でありますし、現在もこうした5カ国と様々な外交、防衛のレベルでの意見交換、情報交換というのを行っているところでございます。何かファイブアイズという国際機関があるわけではありませんので、そうした5カ国とこれからも緊密に意思疎通を図っていきたいと思っております」と述べた。
こうした動きを受け、前述の日中の専門家によるオンライン討論会では、中国の専門家が「日本が『脱亜入欧』のような政策を取り、アジアでの指導権を確保するため、アメリカと手を組んで中国包囲網に加わることが最悪のシナリオ」と指摘した。
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