4月1日から東京でも「自転車保険の義務化」スタート! 万一に備えて加入状況のチェックを
世の中は新型コロナウイルス感染拡大の話題が大半を占め、不安な状況が続いています。
昨夜(3月25日)は東京都の小池知事が、「今週末、不要不急の外出を控えるように」との緊急会見を行いました。
しかし、コロナ以外にも、新年度を目前にチェックしておかなければならない重要事項はいろいろあります。
その中のひとつとして、2020年4月1日から東京都内で自転車に乗る人に、「自転車保険」の加入が義務付けられることをご存知でしょうか。
この取り組みは、すでに一部の都道府県でも導入されていますが、東京都でもようやく「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が改正され、これまでの努力義務を、正式に義務化することが決定したのです。
その日まで、あと1週間を切りました。
改めてその内容をチェックしておきたいと思います。
■東京都内を自転車で走行するすべての人が対象
まず、4月から義務付けられる「保険」ですが、これは「自転車利用中に起こった事故で、他人を死傷させてしまった場合の損害を賠償できる保険や共済」のことをさします。
この保険は東京都民に限って義務付けられているのではなく、東京都内を自転車で走行するすべての人に義務付けられます。
最近は新型コロナウイルスの影響で、電車に乗るのを避け、自転車で通勤する人も増えているようですが、他県在住者でも都内を自転車で走行する人はこの条例の対象となります。
自転車を運転する人の年齢は関係ありません。
未成年のお子さんの場合は、保護者がきちんと保険に加入しておかなければなりません。
また、レンタサイクルや営業回り、配達などの業務利用ならば、その「事業者」に加入義務があります。
では、なぜこの保険が必要なのか?
その理由については東京都による以下の動画がわかりやすいので、ぜひご覧ください。
『自転車利用中の対人賠償事故に備える保険等に加入しましょう!(30秒)』
自転車もれっきとした「車両」です。『自転車だから、大きな事故は起こさないだろう……』と思っていたら大間違い。決して甘く考えてはいけないのです。
■自転車でも高額賠償のリスクが!
実際に、過去の判例を見てみると、自転車による加害事故でも以下のような高額賠償が認められています。
日本損害保険協会の調査結果をもとに挙げてみます。
●9,521万円 (神戸地裁、平成25年7月4日判決)
男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。
●9,266万円 (東京地裁、平成20年6月5日判決)
男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。
●6,779万円 (東京地裁、平成15年9月30日判決)
男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。
●4,746万円 (東京地裁、平成26年1月28日判決)
男性が昼間、赤信号を無視して交差点を直進し、青信号で横断歩道を歩行中の女性(75歳)に衝突。女性は脳挫傷等で5日後に死亡した。
自転車には車のように「自賠責保険」の制度がありません。万一、被害者が死亡、もしくは重傷を負ったとき、あなたは保険なしでこれだけの賠償金を支払うことができるでしょうか?
今回義務付けられる自転車保険は、こうした事故が起こったとき、被害者が泣き寝入りせず賠償を受けられること、そして、加害者になった側の経済的な破綻を防ぐことを目的にしています。
■自転車保険は何を選び、どのように加入すればよいのか
では、自転車保険はどのように加入すればよいのでしょう。また、保険料はどのくらいなのでしょうか。
これについては、昨年、以下の記事をアップしていますので、参考にしてください。
■1か月わずか103円で1億円までの賠償金支払いが可能 「自転車保険」で事故に備える(2019/10/2)
この保険の場合、対人1億円の保険がついていても、保険料は1か月103円ですので、それほど大きな負担ではありません。
自転車事故に有効な賠償保険は、もちろん、これだけではありません。
インターネットの検索で「自転車保険」というキーワードを打ち込んでみてください。
賠償金額の上限を取り除き「対人無制限」で設定している保険、コンビニやネットですぐに申し込み手続きができる保険など、さまざまな商品が出てきます。
また、既に加入している自動車保険や傷害保険、火災保険、各種団体保険、クレジットカード等に付帯されている賠償責任保険などが自転車事故として使える場合がありますので、まずはご自身が加入している保険の状況をチェックしてみることをおすすめします。
下記は、東京都都民安全推進本部のサイトから引用したものです。
この表とチャートに従って確認するとわかりやすいですね。
「義務化」と言っても、今のところ未加入者に対する罰則はありません。
しかし、万一事故が起こって、他者を死傷させてしまった場合、被害者やその家族はもちろん、加害者も大変なことになってしまいます。
都内で自転車に乗っている人、また、学校や塾に自転車で通っているお子さんのいるご家庭は、該当する保険に入っているかどうかを3月中に必ずチェックし、もし、保険に加入していない場合は、すぐに契約手続きを行ってください。
すでに自転車保険の義務化を導入している地域では、事故が減ってきているという報告もあります。
今回の義務化をきっかけに、自転車を運転する人たちのモラルや安全運転に対する意識が高まっていくことも期待したいと思います。
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