【自転車事故】若者による加害事故増加 3人に1人は「無保険」の恐ろしい現実
今日のこのニュースを見て、驚いた人は多いのではないでしょうか?
●『ながらスマホ自転車死亡事故、書類送検』(2018.02.16 産経新聞)
川崎市麻生区の市道交差点で昨年12月、歩行中の女性=当時(77)=を電動アシスト自転車ではねて死亡させたとして、神奈川県警麻生署は15日、重過失致死容疑で大学2年の女子学生(20)=同区=を書類送検した。同署によると、女子学生は事故当時、両手をハンドルに添えた状態で右手に飲み物を持ち、左手でスマートフォンを操作。左耳にはイヤホンをしていた。調べに対し、容疑を認めている。
自転車も道路交通法上はれっきとした「車両」です。にもかかわらず、飲み物、スマホを両手に持ち、その上、イヤホンで耳までふさぐとは……、これはかなり悪質な行為と言わざるを得ません。
その結果、ひとりの女性の命が奪われてしまいました。
しかし、この事故を起こした女子大生も、まさか自分が自転車の運転中に死亡事故の加害者になるとは思ってもみなかったことでしょう。
自転車で重大事故、加害者の半数は若年層
昨日、警察庁交通局は『平成29年における交通死亡事故の特徴等について』と題した統計の分析結果を発表しました(2018年2月15日)。その中に、自転車事故に関する興味深い最新のデータがありましたのでご紹介します。
まず、平成29年の交通事故死者数は3,694人。警察庁が保有する昭和23年以降の統計で最少の数字となりました。
ところが、自転車による歩行者との事故は減少幅が小さく、特に、24歳以下の若い自転車運転者と65歳以上の高齢歩行者が当事者となる事故が前年より増加したそうです。
また、自転車対歩行者の事故のうち、歩行者が死亡もしくは重傷を負うケースだけを調べたところ、加害者の年齢層は、9歳以下が6%、10~19歳が38%、20~24歳が12%、合わせると、24歳以下の若い運転者が全体の約52%を占めていることもわかりました。
まさに、冒頭のニュースと同様のパターンの事故が多数発生しているのです。
この機会に、若者によく見られるスマホ片手の「ながら運転」などが、いかに危険であるかをしっかり認識しておきたいものです。
3人に1人は無保険 高額賠償を請求されたらどうする?
今回公開された警察庁の分析には、もうひとつ、自転車事故のその後の賠償に関する興味深いデータがありました。
死亡・重傷事故を起こした自転車運転者のうち、損害賠償責任保険などに加入していた人は約60%にとどまっていたというのです。つまり、3人に1人は無保険で重大事故を起こしていたことになります。
自転車だからと言って甘く考えてはいけません。実際に、過去の判例を見てみると、以下のような高額賠償が認められています。
日本損害保険協会の調査結果をもとに、いくつかピックアップしてみると……。
●9,521万円 (神戸地方裁判所、平成25年7月4日判決)
男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。
●9,266万円 (東京地方裁判所、平成20年6月5日判決)
男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。
●6,779万円 (東京地方裁判所、平成15年9月30日判決)
男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。
●4,746万円 (東京地方裁判所、平成26年1月28日判決)
男性が昼間、赤信号を無視して交差点を直進し、青信号で横断歩道を歩行中の女性(75歳)に衝突。女性は脳 挫傷等で5日後に死亡した。
いかがでしょうか。小学生でも、高校生でも、そして女子大生でも、自転車を運転する以上は大事故の加害者になる可能性があるのです。
万一、他人を死亡させたり、重傷を負わせたとき、これだけの大きな金額を保険なしで支払うことができるでしょうか?
「できない」となると、それは被害者にとっても大変な問題です。
被害者は加害者を選べないのです。
自転車には自動車のように「自賠責保険」がありません。ですから、自転車事故による損害賠償責任は「個人賠償責任保険」で、また、自分自身のケガは「傷害保険」でカバーする必要があります。
最近は自転車に賠償保険の加入を義務付ける自治体も出てきましたが、自転車に乗っている人、自転車で学校や塾に通っているお子さんのいるご家庭は、今すぐに自転車の保険が万全かどうかを確認してみてください。