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北朝鮮が弾道ミサイルらしきものを発射、しかし日韓は最大高度を発表できず。極超音速滑空ミサイルの可能性

JSF軍事/生き物ライター
日本防衛省2022年1月5日発表より、北朝鮮ミサイル推定飛翔イメージ図

 1月5日早朝、北朝鮮が日本海に向けて1発のミサイルを発射しました。海上保安庁の緊急警報システムは8時13分に船舶に対し警報を伝え、ミサイルは日本のEEZ(排他的経済水域)の外に着水しています。

北朝鮮は、本日8時7分頃、北朝鮮の内陸部から、弾道ミサイルの可能性があるものを東方向に発射しました。詳細については現在分析中ですが、通常の弾道軌道だとすれば約500km飛翔し、落下したのは我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます。

出典:北朝鮮のミサイル等関連情報(続報)|防衛省(令和4年1月5日)

 日本防衛省の公式発表では「通常の弾道軌道だとすれば約500km飛翔」とあるだけで、最大到達高度の記載がありません。韓国軍合同参謀本部は水平距離も最大到達高度もどちらも発表していません。弾道ミサイルであるならば弾道頂点の最大到達高度を発表していないのは少し不可解です。

 もしかすると発射されたのは極超音速兵器の極超音速滑空ミサイル「火星8」である可能性があります。

 例えばイスカンデルのような滑空が可能な機動式弾道ミサイルであっても弾道ミサイルの範疇なので、弾道飛行で飛翔する部分は多いため最大到達高度の観測は容易です。しかし極超音速滑空ミサイルは機動式弾道ミサイルと比べてかなり早期に滑空飛行に入るので、最大到達高度を観測し難い面があります。

 またイスカンデル系の弾道ミサイルは1発射機に2発のミサイルを搭載するので発射する場合は2発であることが多いのですが、今回は1発だったことを考えると、1発射機に1発のみ搭載する火星8であったと推定する根拠にもなります。ただし2発を発射したが1発は直ぐに墜落して観測できていないだけという可能性も考えられます。

 もしも火星8だった場合、2021年9月28日の初試験発射(飛距離は200kmに届かず最大高度は30km)に続いてわざと性能を抑えた短い距離で極超音速滑空弾頭の初期試験を実施したのかもしれません。火星8は中距離弾道ミサイル「火星12」とほぼ同じ大きさなので、本来の射程は数千kmはあると推定されています。

米ミサイル防衛局資料より上から機動式弾道ミサイル(MaRV)、極超音速滑空ミサイル(HGV)、極超音速巡航ミサイル(HCM)の軌道。
米ミサイル防衛局資料より上から機動式弾道ミサイル(MaRV)、極超音速滑空ミサイル(HGV)、極超音速巡航ミサイル(HCM)の軌道。

北朝鮮KCNA2021年9月29日発表の極超音速兵器「火星8」(文字説明は筆者)
北朝鮮KCNA2021年9月29日発表の極超音速兵器「火星8」(文字説明は筆者)

追記北朝鮮が新型の極超音速滑空ミサイルを試射し、側面機動を実施したと発表(2022年1月6日)※火星8とは別の極超音速ミサイルと判明。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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