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米新型コロナ対策の「顔」ファウチ博士が“とんでも”マスク着用法=顎マスクを指南 感染拡大は当然だ!

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
ファウチ博士はマスクをどう装着しているのか? 写真:cbslocal.com

 新型コロナウイルスによる感染拡大が収束を見せないアメリカ。感染者数は550万人を超え、死者数は17万人を超えた。

 ロサンゼルスのように感染者数が増加している地域ではナイトクラブやバーなどいわゆる“夜の街”系の店は営業を一時停止され、レストランでの店内飲食も禁じられているのに、なぜ今も感染が拡大し続けているのか? 

ロスは電気水道停止措置も

 その一因として指摘されているのが、大人数によるハウス・パーティーが感染拡大の温床になっているという問題だ。外で集まることができなくなった人々が、大邸宅で行われるパーティーに集まっているのである。

 先日も、ロサンゼルス郊外のハリウッド・ヒルズにある大邸宅で、マスクなしのビッグパーティーが開かれていたことが明らかになった。この大邸宅に住む、Sway Houseという人気TikTok集団に所属する6人のTikTokスターたちが、8月14日、メンバーの一人であるブライス・ホールの21歳の誕生日を祝うために開いたのだ。パーティーには100人以上の人々が招かれたが、多くがマスクを着用していなかったという。パーティー開催を知ったロス市警はその邸宅に駆けつけ、パーティー会場は閉鎖された。

 インフルエンサーがマスクなしの大規模なハウス・パーティーを開いて招かれた客の中から新型コロナの感染者が出たことや、感染してもなおハウス・パーティーに出ることが止められない人々がいるという実態は問題視されてきた。

 事態を懸念したロサンゼルス市長のエリック・ガルセッティ氏は、ロス市警が大規模パーティーが同じ場所で繰り返し開かれていることを確認できた場合、ロス市警は市の水道電気局に、48時間以内にその場所に対する電気や水道の供給停止要請ができるという強硬な措置も取り決めた。

感染症の大家が“顎マスク”

 しかし、感染拡大の原因は感染症対策を指揮する側にもあるのではないか。

 そう思ったのは、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長であり、ホワイトハウス新型コロナウイルス対策タスクフォースのメンバーとして米新型コロナ対策の「顔」となっているアンソニー・ファウチ博士が、自身のマスク着用法を、ロードアイランドの知事に披露している以下の動画を見た時だ。米感染症の大家はどのようにマスクをつけているのか? 関心を持って見たその着用法に唖然とした。

 ファウチ博士はマスク着用法について、

「周囲に誰もいないビーチでランニングしている人々を見たら、良かったねと言いたい。(マスクをつけずに)ランニングして下さいと。屋外でロックダウンする必要はないのです。誰かに近づいていると思ったら、マスクをつければいい。犬や妻や夫など同居する人々とも(周囲に誰もいなければマスクをつけずに)一緒にウォーキングしていい。私の場合、夕方、妻と4マイルのジョギングやパワーウォークをしていますがこうして(顎にマスクをかけてみせる)妻とおしゃべりし、50ヤード(約46メートル)先から誰かが来るのが見えたらこうして(顎に下げていたマスクを上げて口と鼻を覆ってみせる)、通り過ぎる時に“ハロー、お元気ですか?”といいます」

 と説明すると、再びマスクを顎にかけて「屋外にいますからね」と言い、“顎マスク”をして見せた。

 周囲に誰もおらず、ソーシャルディスタンスも十分に保たれている屋外でマスクをする必要はないということは納得できる。しかし、ファウチ博士はそのマスクを外すわけではなく、着脱しやすいよう、顎にかけたままにしているのだ。実際、議会やスポーツ観戦の場で、博士が“顎マスク”や“鼻マスク”をしている画像や動画もある。

顎マスクをして、談笑するファウチ博士。写真:dailydot.com
顎マスクをして、談笑するファウチ博士。写真:dailydot.com

 しかし、“顎マスク”や“鼻マスク”については多くの医療専門家が間違った着用法であると指摘しているし、CDC(米疾病予防管理センター)もNGとする以下の動画を公開している。“アメリカ新型コロナ対策の顔”であるファウチ博士が、こんな悪しき手本を示していいはずがない。

 “顎マスク”がNGとされるのは、万一、顎や首回りにウイルスが付着していた場合、“顎マスク”をした時にウイルスがマスクの内側の面に付着し、再び、口と鼻を覆うようにマスクをした時に、口や鼻からウイルスが侵入してしまう可能性があるからだと指摘されている。

 新型コロナウイルスを軽視して、人命よりも経済を優先させるトランプ氏と闘ってきたファウチ博士は米国民からリスペクトされ、信頼されている存在だ。筆者もファウチ博士の感染症対策への多大なる貢献をリスペクトしてきただけに、この動画を見てとても残念に思った。

 しかも、アメリカのメディアは、感染症の大家のマスク着用法を堂々と紹介している。ファウチ博士の”顎マスク”が間違った着用法であることはどのメディアも指摘していない。

 警官も出動するほどのマスクなしハウス・パーティーに、感染症の大家が“顎マスク”という間違ったマスクの着用法を指南し、メディアがその間違った着用法を疑うこともなく米国民に紹介しているアメリカ。感染拡大が止まらないのは当然なのかもしれない。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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