民進党が主導しなければ選挙協力はうまくいく?
フーテン老人世直し録(255)
神無月某日
新潟県知事選挙は安倍政権の思惑を大きく狂わせる結果になった。安倍政権が力を入れる原発再稼働とTPPに反対する野党候補が、負けるはずのない自公推薦候補に6万票以上の差をつけて勝利したのである。
新潟県に立地する柏崎刈羽原子力発電所は世界最大級の発電量を持ち、それが再稼働できるかどうかは福島原発事故で危機に陥った東京電力の経営の命運を握っている。再稼働できなければ原発事故の収束や廃炉作業の計画にも影響し、ひいては事故後の状況を「アンダーコントロール」と言って東京オリンピックを招致した安倍総理を「国際的嘘つき」にする可能性もある。
またメディアは先の参議院選挙を「改憲勢力が3分の2を超えた」と大騒ぎし「与党圧勝」と報じたが、東北や北海道ではTPPに反対の民意が1人区で野党統一候補を勝利に導き、新潟選挙区でも統一候補となった生活の党(現自由党)の森ゆうこ氏が与党公明党の一部からも支持を得て当選した。その森ゆうこ氏が選対本部長を務めたのが今回の新潟県知事選挙である。
「蟻の一穴」という言葉があるが、強気一辺倒で攻めてきた安倍政権の政権運営にこの選挙は小さくとも侮れない穴を開けた。原発再稼働とTPPで開いた穴が全国に広がれば安倍政権が築き上げた堤防から水が漏れだし、経済産業省を後ろ盾とする安倍総理の政権戦略は見直しを迫られる。安倍政権は全力でこの穴を塞ぎにかからなければならず、従って穴は安倍総理の解散戦略にも影響する。
また注目すべきはこれが野党第一党の民進党が主導する選挙でなかったことである。初当選した米山隆一氏はかつて自民党と日本維新の会から国政選挙に立候補し、旧民主党の田中真紀子氏や自民党の長島忠美氏に負け続けた。それが民進党の次期衆院選候補者となっていたが、県知事選への立候補を巡って民進党に反対され、共産党、自由党、社民党に担がれて選挙戦を戦った。
一方の自公推薦候補は長岡市長を5期務め、全国市長会会長でもあった森民夫氏である。東京電力と対峙し原発再稼働に抵抗してきた泉田新潟県知事の対立候補として原発再稼働賛成派から推され立候補を決断した。ところが泉田知事は地元紙の報道を理由に選挙戦直前に知事選不出馬を表明、そのため森氏の当選は確実とみられていた。
しかし泉田路線の継承を求める民の声が米山氏を動かし、公示ぎりぎりの出馬表明からわずか半月で情勢を覆し6万票以上の差をつけて勝利した。フーテンは政治の風が変わり始めたことを感じている。
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